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騙され裏切られ処刑された私が⋯⋯誰を信じられるというのでしょう? 【連載版】 作者:榊 万桜
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番外編 : 初めてのお料理

番外編です!

よろしくお願いします!


「キリアさん。何のスープを作っているんですか?」


「キノコを使ったスープだよ」


石と薪で作った簡易の焚き火台でキリアが夕食を簡単に作っている。それを後ろから覗き込みながら、興味深々で尋ねるシエルを見てほっこり笑ってしまう。


あぁ、なんて可愛いんだ!

私の息子、娘は本っ当に可愛い!!

あいつらにも自慢したい!


狼と子猫が戯れているようで、本当に和む。

そんな2人を見つめているとシエルがこっちに向かって小走りしてきた。

走りなれていないのかトテトテ走る姿が拙くて可愛い。


「カーナさん、お肉捌けましたか?キリアさんから捌き終えているお肉を持ってくるように頼まれました」


表情の変化は分かりにくいが、ずっとキリアと過ごしてきた私にはその変化は手に取るようにわかる。

新しいことを学べる楽しさと、今後の生活で必要な知恵を身につけられたことが嬉しいんだろう。口角が微かに上がっているが、よく見なければ気づかない程度だ。ただ、瞳が嬉しそうに輝いていて、表情よりも感情豊かに変化する。

最初はその変化さえなかったのだ。


シエルと初めて会った冒険者ギルドの応接室。

あの時、シエルの表情はピクリとも動かなかった。まるで息をしている生きた人形のようだった。


私は、鼻がよく利き意識を向ければ相手の感情を匂いで感知できる。キリアは、父親に似て人の機微に敏感だ。そして、エルサは冒険者ギルドの受付嬢として長年勤めてきたからなのか、声や仕草だけで相手の感情を感じられるらしい。


あの場にいた3人共他人の感情を大体読み解けることが出来る奴らだったから、なんの問題もなくクエストの受注が完了したのだ。

あれが私達でなかったら、シエルは嫌な目に合っていただろう。


「カーナさん?」


可愛い声に意識を向けると、首を傾げる天使がいた。

私を心配してか眉が下がっている。


本当に感情豊かになったなぁ。


「すまん、ぼーっとしてた。肉だな?ほい、これを持って行ってやってくれ!」


少し前に捕まえたフライラビットの肉を小さくぶつ切りにして、毒消しの葉に包んで渡した。

「ありがとうございます」と丁寧に両手で受け取り、またトテトテ走ってキリアの所まで運んでいった。


キリアが作っているスープを隣で覗き込みながら、料理の仕方を真剣に教わっている。

時々チラチラとこちらを見ているようで、何回か目が合った。しかし、目が合うと直ぐに逸らされてしまい、気にされていることに嬉しくなり、目を逸らされることで悲しくなりと私の心は忙しなく揺れる。


その後、シエルは寝るまでチラチラと私を見ていた。

なんかしただろうか?

まぁ、可愛いからもう少しそのままにしておこう。


私達が王都を出発して、2日が経った。最初は私のやらかしのせいで酷く警戒されていたが、その警戒も少しずつ軽減してきた。


旅に魔物は付き物。

そう言われるほど、村や街などへの道すがら何かしらの魔物に出会う。だから、商人などは護衛を必ず連れている。

時には山賊なども出るため安全のためには多少の出費など安いものだと考えられているのだ。


今日の夕食のスープに入っていたフライラビットもそんな魔物の1匹だ。

見た目は可愛らしく見えるフワフワの毛皮に大きな垂れ耳。後ろ姿は、可愛いが正面に回れば考えが覆される。

瞳孔が開ききった赤い目は白目がなく濁った赤一色だ。口は裂けており二本の牙が涎を垂らしながら伸びている。

目が合えば直ぐに襲ってくる凶暴性に『ギィギャッ』など鳴き声も可愛くない。

フライがつく由来となる飛翔は、その大きな足と耳によるものだ。襲いかかる際は、必ず飛び上がりトップスピードでの落下からの蹴りと攻撃方法は決まっており、相手の強さや相性など考えないなど、フライラビットの性質を理解していればなんの危険性もない魔物だ。ランクはEランクだ。繁殖力が強いので村人などからはゴブリンラビットなどと呼ばれている。


今日の魔物は、シエルが風魔法で首を刎ねて殺したため、血抜きなどが楽だった。


シエルからの依頼内容に旅のいろはを教授する内容も織り込まれており、魔物の対処方法や食べられる野草などを教えている。


最初は火魔法を使って魔物のみを燃やして丸焦げにしてたからなぁ。

後のことを考えた魔物の処理方法を教えたら、直ぐに順応していた。

食べられる野草も1度教えたら、間違えることなくその野草を探して採取してくるようになった。


本当に頭のいい子だなぁ。

それにとっても良い子なのだ!

まだ、自分が出来ることが少ないことを理解して、教わったことを一生懸命お手伝いしてくるのだ。

あの小さい体で、腕いっぱいの野草を摘んできたり、近くの川から水筒いっぱいのお水を汲んで来たり、焚き火のための枝木を拾い集めたりと、トテトテ走りながらお手伝いしてくるのだ!

あぁ、本当に可愛い。

全てやってあげたくなるが、手を出そうとするとキリアに叱られるし、シエルも悲しそうにするので、褒めることにした!

「ありがとう」と言って頭を撫でると、少し恥ずかしそうに俯いて微かに耳を赤く染めるのだ。

可愛いだろ?可愛すぎるだろ!


見張り番をキリアと交替して、シエルの寝顔を見てから眠りについた。


明日も可愛がろう!と強く胸に誓いながら。







「キリアさん。おはようございます」


「おはよう。早いね」


夜も明けきらない頃にシエルが起きてきた。

いつも規則正しく目覚めるが、いつもより早い時間だ。


「あの、今日の朝ごはん·····」


「ん?お腹空いた?」


少し俯きながら呟く声にお腹が空いたのかと思ったが違ったようだ。慌てて顔を上げて、首を振る姿が可愛らしい。


「違います。あ、あの、お願いがあります。今日の朝ごはんを私に作らせていただけませんか?」


「いいよ。ただ、ナイフと火を使う時は一緒にやろうね」


「分かりました。こちらこそ、よろしくお願いします」


ペコリと頭を下げて、嬉しそうに朝ごはんの準備をし始めた。


シエルのエプロンバックの中から昨日採ったキノコを取り出し、背負ってきたバックの中から街で買ったと思われるベーコンとトマト、白パンを取り出した。


コッヘルの蓋を外し、蓋の上に油紙に包まれたベーコンを置いた。エプロンバックの背中側のベルトに収まっているナイフを取り出し、ベーコンを切ろうとして、手が止まる。

シエルは僕の方を見て「今からナイフ使います。見ててくれますか?」と伺いを立ててきた。


初めて1人で作るごはんに、どういう手順で料理をするのか以前教わったことを一生懸命思い出しながら用意していたので、約束事を忘れてしまったと思ったがちゃんと覚えていたようだ。


「いいよ、僕が見てるから。手を切らないように猫の手してゆっくり気をつけて切るんだよ」


シエルは頷きながら、コッヘルの蓋の上に置いたベーコンを一口サイズに切り分けて、コッヘルの中に入れていく。

次に油紙の上にヘタを取ったトマトを置いて、これも一口サイズに切り分けた。


ベーコンのみを入れたコッヘルを持って焚き火近くに持って行き、焚き火にかける。その間も僕が後ろにいるのを確認してから、火に気をつけてコッヘルを火にかけている。


ジュージューとベーコンが香ばしい匂いをさせたところで水筒の水を入れ、煮立ってきたところで一口サイズに切り分けたトマトと手で裂いたキノコを入れていく。

焦げ付かないように携帯用のレードルを使ってゆっくり混ぜて、軽く味見をしながら胡椒で味を整えると少量レードルに取り「味見してくれませんか?」とレードルを渡される。


ベーコンの塩味とトマトの甘みに胡椒のアクセントがよく効いており、美味しかった。


素直に「美味しいよ」と伝えると、嬉しそうに微笑んだ。

明らかに嬉しそうにしながら、今度は白パンとチーズを持って焚き火近くに戻ってきた。


そろそろカーナも起きてくる頃だ。

シエルも陽が昇ってきたのを見ながら、皿を3つ簡易椅子にしている丸太の上に並べて、白パンを2つずつ置いた。串にチーズを刺して焚き火に近づけ、焦げ目がついてトロッとしてきたところで焚き火から離して、皿の上に置いた白パンの上にトロッとかけて串を抜いていく。


うん。美味しそう。絶対美味しい。

お腹が空いてきた。


タイミング良くカーナが起きてきたようだ。

まだ、眠そうに目を擦りながら欠伸を噛み締めてテントから出てきた。


「おはよぉー。シエルはいつも早いな。キリア、夜番ありがとう。問題なかったか?」


「おはよう。問題なかったよ」


「おはようございます。カーナさん朝ごはんにしましょう!」


とても嬉しそうにソワソワしながら、朝ごはんに誘うシエルは可愛い。


「おぉ!美味しそうだ!スープもあるのか?どうしたんだ?すっごい豪勢だな!なんかあったか?」


「カーナ。それ全部シエルが1人で作ったんだよ」


「えぇ!すっごいなぁ!とっても美味しそうだ!シエル、ありがとう」


サッとシエルを抱き上げてギュッ抱きしめるカーナの早業は徐々により早くなってきているように感じる。

シエルは目を白黒させていたが、喜ぶカーナを見て嬉しそうに微笑んだ。


「カーナさん。キリアさん。色々教えてくれてありがとうございます。大変だと思いますが、私も色々できることを増やして、カーナさん達の負担を減らせるように頑張りますので、これからもよろしくお願いします」


どうやら、昨日のボーッとしていたカーナを見て疲れていると思ったようだ。あれは、多分俺達を見てなんか妄想していたとかそんな所だろう。

それをシエルは自分のせいで疲れていると思ったようだ。だから、できることを考えて朝食作りを思いついたんだろう。


「カーナさん?」


シエルを抱きしめながらプルプル震え始めたカーナにシエルが声をかけると奇声を発しながらギューッとシエルを抱きしめた。

力加減が出来ないカーナを叩き、苦しいだろうシエルをカーナの腕から取り上げた。が、カーナの高ぶった感情は変わらずニコニコとだらしない笑顔を晒した。


「シエルゥー!本当に可愛いんだから!!なんていい子なんだ!シエルは私達の負担になんかなってないよ!逆に私の力になっているくらいだ!」


うん。そうだな。

シエルと旅を始めてからカーナの身体能力が徐々に上がってきているように感じるし、カーナの心の安定剤にもなっている。本当に負担になんかなっていない。


「ほら、せっかくシエルが作ってくれた朝ごはんなんだ。冷める前にいただこう」


そう声をかけると、いまだ騒いでいたカーナがシエルを抱き抱えながら丸太に腰をかけた。

さすがに食べにくいだろうとサッとカーナの膝上にいたシエルを丸太に下してあげる。

ブーッとカーナがブスくれていたが、スルーして朝ごはんを食べ始めた。


ずっと「美味しい!」と騒ぎ、美味しそうに食べるカーナとそれを見て嬉しそうに微笑むシエルを見て、無意識にシエルの頭を撫でて「良かったな」と声をかけていた。

大きく頷き嬉しそうに微笑むシエルは「2人ともいつもありがとう」と初めて敬語をなくして、心のままに微笑んだ。


初めての料理は成功に終わった。


こんにちは!

お久しぶりです( ´艸`)


番外編でした!

王都からカノリアへの旅路での出来事でした!

初めてのお料理、大成功!!

しっかりキリアに教わった事で問題なく料理が出来ました° ✧ (*´ `*) ✧ °


いつもありがとうございます!

ブックマークやコメントとても嬉しいです!

今後もよろしくお願いします(∩´∀`∩)

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