48: 次の街へはいつ着くのでしょうか?
何回か(強制的な)休憩を挟みながら1日かけて、サザリンへ向かう大街道に出た。
大街道は馬車が余裕で2〜3台通れる広さと道の整備がさせれていて、歩くのが楽そうだ。
主要都市を結ぶ大街道だけあり、冒険者風の男女4人が遠くを歩いているのが見える。村を出てから初めて人を見た。
あちらもこちらに気づいたようで、軽く手を振られた。こちらも手を振り返すと嬉しそうにブンブン手を振っている人がいる。歳若い女性のようで、パーティメンバーのもう1人の女子に軽く頭を引っぱたかれて、引き摺られるように先を進み始めた。他のメンバーが私達に軽く頭を下げながら着いていっている。慣れた感じが好ましい、あの女子達に近親感を感じてカーナさんとキリアさんを見上げる。
ふふふ、ちょっと似てるかも。
手で口元を隠してクスッと笑っていると軽く頭を撫でられた。視線を向けると優しい目を私に向けたキリアさんに先へ進もうと促され、前を見るとカーナさんとコハクが既に数歩先にいた。
「早く行くぞぉ」「わんっ!」とカーナさん達に呼ばれて、私だけが止まっていたことを知り、少し恥ずかしくて顔が赤くなるのを手で扇ぎ冷ましながらカーナさん達を追いかけた。
キリアさん、気づいてますからね!後ろで静かに笑わないでくださいっ!私どんな顔してたんですか!?
確かに·····皆が進んでも動かず、何を想像したのかクスッと思い出し笑いする私は不気味だっただろう。私だってそんな姿を見たら、ちょっとおかしな子と思うもの。
でも、だからって·····顔を逸らしながら笑いをこらえなくてもいいじゃないっ!
私の後ろを歩くキリアさんに抗議の視線を向けていると目が合った。瞬間にスっと姿勢を戻し、何事も無かったように歩き出すキリアさんに唖然としてしまう。
キリアさん、見えてましたからっ!今更、取り繕っても遅いですっ!
ジトッと視線を向け続けると耐えきれなくなかったのか、キリアさんが口に手を当てて笑い出した。
「ふはっ、ご、ごめん。あんまりにも、反応が可愛かったから·····ふっ」
「もうっ!笑わないでくださいっ!」
「ふふ、ごめん。もう笑わないから許してくれ」
ちょっと抗議すると、子どもの精神に引っ張られて不貞腐れた感じになってしまう。
プクゥっと膨らんだ私の頬を突っつきながら、いつもの優しげな微笑を向け謝られたら、誰でも許してしまうだろう。
私もつい許しそうになって、それがなんだか面白くなくてプイっとそっぽ向いてしまう。
いつも基本的に無表情のキリアさんは私達には感情を表情に出してくれる。
今回のようなやり取りも自然にできるようになっていて、心の近さを感じられた。それが、なんだか嬉しくてプイっとそっぽ向いて抗議しながら口角が自然と上がるのがわかった。
不意にコハクが体を私に擦りつけながら、くるんと私の周りを回るから視線で追いかけたら、キリアさんの方を向けさせられて、優しい目と視線が合う。
「·····もう、わかったわ。許します。私も考え事してて上の空だったのがいけなかったのだもの。·····ちょっと恥ずかしくて当たっちゃったの、ごめんなさい」
「うん。僕こそ笑っちゃってごめんね。·····可愛かったからつい」
ん?なんか最後おかしな言葉が聞こえたような·····
「わんっ!」
まるで『仲直りっ!』と言うかのようにコハクが鳴いて私達の周りを走り回るのを見て、先程の疑問も忘れキリアさんと顔を見合せ笑ってしまう。
「仲直りしたか?じゃっ、進むぞ!今日中には着かないから、日が暮れる前に何処かで野営の準備するぞ!」
今まで静かに私達を見守っていたカーナさんがニコニコと嬉しそうに笑いながら先を促す。
いつも構って!なカーナさんだけど、仲直りとかの時は静かに見守ってくれる。カーナさんのこういう所はお母さんぽい気がする。
カーナさんのニコニコ笑顔はサンフラワーと呼ばれる太陽のような花に似て、見ると心が暖かくなるのだ。
ホワッと温かくなった心に自然と笑顔がこぼれて、それを隠すようにコハクとキリアさんの間に入ってカーナさんを追いかける。
なんかいい日になりそうです。
身体強化を付与してカーナさんたちと一緒にサザリンヘ向けて走る。
整備された道は走りやすくて、楽しい。
途中、他の冒険者や商人などとすれ違う時だけ、私はカーナさんかキリアさんに抱き上げられる。
確かに、この速さに着いていく子供を見ると注目されちゃうものね。
カーナさん達も目立つかと思いきや、期限ありのクエストやクエスト消費、ランク上げに躍起になっている冒険者などは危険の少ない街道をよく爆走するそうなので変に目立つことは無いと教えてくれた。
それより、私が走って目立ち、顔を見られて覚えられる方が問題だと言われ確かにと納得してしまった。何処で誰が見ているか分からないし、その誰かが何処かの貴族と繋がっている可能性も捨てきれない。細心の注意が必要だろう。
なので、大人しく抱き上げられて、フードを軽く掴んで顔を見られないようにしてカーナさんたちの胸に顔を寄せるようにしている。
ただ、そうするとカーナさんが嬉しそうに抱きしめてきて、手加減してくれているのは分かるがそれでも少し苦しい。あと離してくれるまで時間がかかる。
人がいないところでは、迷惑かけたくないので自身で走ると言っているのに、カーナさんは「大丈夫!」の一言でそのまま笑顔で爆走するのだ。
確かに、カーナさん達の方が速いのは分かるが、私は怪我も何もしていないし、身体強化を付与して走ることにも慣れてきた。最初に比べたら格段に速くなっているのに·····
それに、私を抱えて走るのはカーナさん達に負担をかけることになる。ただえさえ、騙すような形で私の事情に巻き込んで申し訳ないのに·····カーナさん達のお荷物になってしまうなんて·····
それとも、抱えられたままの方がカーナさん達の迷惑にならないのかな?私が走ると私のペースに合わせないといけないものね·····あれ?それって、どちらにしてもお荷物でしかないってことだわ·····
「カーナ、いい加減にしろ」
「ガゥッ!」
キリアさんが眉間に皺を軽く寄せカーナさんを睨みつけ、少し低くなった声でカーナさんを叱り、コハクはカーナさんの前に出て前足で地面を引っ掻き、威嚇するように吠えた。
「えっ?」
何が起きたのか分からず、どうしてキリアさん達がカーナさんに叱っているんだろう?とびっくりして目を丸くしてしまう。
カーナさんはキリアさんとコハクの声にビクッとして、歩みを止めるとゆっくり私を降ろしてくれた。
先程までの無理やり爆走が嘘のように、すんなり降ろされたことに戸惑いながらカーナさんを見上げると、ソワソワしながら私の肩を掴みながら軽くかがみ込み、チラチラと私を見てくる。
どうしたのだろう?と首を傾げると、ブワッと目に涙を貯めてフルフル震え出した。
えっ?なに?なんで泣きそうなの?なんで震えてるの?
ど、どうしたの?キリアさんとコハクが怖かったの?
ちょっとしたパニックだ。
「はぁ、カーナ。ちゃんと言葉にしないと伝わらないよ」
キリアさんの声はいつも通りに戻っており、呆れたような顔でカーナさんに声をかける。
カーナさんは、またもビクッと震えておずおずと私を見てきた。いつものカーナさんらしくない姿に首を傾げてしまう。
どうしたのかしら?
「・・・シエル。ごめんっ! 私の勝手な振る舞いで不安にさせたよな。シエルが可愛くて少しでも長く抱っこしてたかったんだっ! シエルが走ることが迷惑なわけじゃないっ。ただ、可愛い娘を抱っこしたいんだっ! そう、そうなんだよっ! だから、今日はこれから野営地に着くまで私が抱っこしてていいだろ?」
「・・・カーナ?」
「・・・グルルゥ」
カーナさんの言葉で皆の行動の理由が分かり、私の心が見えているかと思うほど、タイミングが良すぎてびっくりしてしまう。それと共に、心が温かくなるのを感じた。
カーナさんは謝ってきたが、直ぐにいつもの調子で私におねだりしてきた。
首を軽く傾げて、ウルウルお目目、愛らしく胸元で両手を合わせ見上げてくる。どこの愛玩犬なの? って思うくらい完璧なおねだりだ。
男じゃない私でも、揺らぎそうになった。
何処でそんな技を覚えてきたの?
あまりに可愛すぎて頷きそうになってしまったわ。
キリアさんとコハクには通じなかったようで、ジトっとした目がカーナさんに向けられており、諌めるような声でカーナさんを呼んだ。
カーナさんは、キリアさんたちの方へ顔を向けながら、プクッと頬を膨らませ幼子のような駄々を捏ね始めた。
「うぅ、だって! 整備された道に出てからあんまり抱っこさせてくれないんだもん! さっきだって、キリアの方に行っちゃうし・・・私がお母さんなのにっ! ずるいぞっ! 私だってギュッとしたいのを我慢してたんだっ! なんで私じゃなくてキリアなんだっ! 」
「・・・カーナ」
「・・・わふぅ」
キリアさんとコハクの目と声が呆れ返っている。
気配察知で目視できない先に人が歩いていることが分かるたびに、約束通りカーナさん達に抱き上げてもらおうと歩みを止める。カーナさん達を見ると、必ずニッコニコの笑顔と期待に満ちた溢れた視線を向け、待ち構えるように両手を広げるカーナさんがいるのだ。
ハッキリ言って怖い。
なんか捕まったらダメな気がする。
本能的にキリアさんの前まで行くと抱き上げやすいよう両手を広げる。
何故か毎回キリアさんの耳が赤くなっており、どうかしたのかとキリアさんを見るのにそっぽを向かれてしまう。
そして、こちらも何故か同じように騒ぐのだ。
「ずるいっ! ずるいぞっ、キリア!! シエルぅ、私にもそれやってくれ。お願い! な? いいだろぉ」
それって何かしら?
そんなカーナさんを無視してキリアさんが走り始めるので、カーナさんも騒ぐのをほんの少しだけ抑えて着いてくる。
私も顔を隠すのに体制を整えるのに集中して、カーナさんが言っていたそれが何か聞くのを忘れてしまった。
「ずるいっ! 私の方がシエルへの愛が強いのにぃ」
「くぅ? 」
「そうなのっ! シエルへの愛は私が1番重いんだっ! 」
「ワフッ! わふん」
「なんだとぉ! コハクより私の方が早くシエルと一緒にいるし、愛されてるんだ」
「わふぅ」
「今、バカにしただろうっ! バカにする方が馬鹿なんだぞっ!」
と、こんな感じで騒ぎながらの移動となる。
自然とコハクとお話してるけど・・・おかしいよね?
あんまりにもスムーズな会話に違和感を覚えないのがより恐ろしい。
それに、キリアさん無反応すぎて、私の感覚がおかしいのかと思ってしまうわ。
なんて行動を繰り返していたら、何度目かの抱き上げ作業の時にカーナさんに爆弾を落とされた。
「両手広げて抱っこせがんでるみたいで可愛いぃ!」
瞬間、私とキリアさんの動きが止まった。
私は広げていた両手を胸元に素早くしまい、顔が熱くて、真っ赤に染っていることが分かり、恥ずかしくて俯いてしまった。
「ん? どうした? はっ!!もしや、次は私の番かっ! よし、来いっ!! 」
カーナさんの発言で恥ずかしさも少し落ち着き、チラッとキリアさんを見上げると、そっぽ向いたキリアさんの耳が赤く色づいていて、より恥ずかしくなった。
お互いに顔が赤くなり恥ずかしくて、キリアさんに抱き上げてもらうことに抵抗が出てしまった。
このまま止まっているのも時間のロスになることは分かっていたので、カーナさんに抱き上げもらったのだ。
ただ、頑として両手広げることはしなかった。
「あれ? なんか怒ってるか?」
「・・・ワフゥ」
「行くぞ。・・・カーナには後で話がある」
「えっ? それって後で説教されるってことか? なんかしたか私? えっ、何で?」
抱き上げてくれたカーナさんの顔を見ないように、プイっとそっぽ向いて顔を隠すと、カーナさんが首を傾げていた。
カーナさんの発言に『やれやれ』と言うかのようにコハクが息を吐き出し、少し低めのキリアさんの声が聞こえた。
走りながらもカーナさんは首を傾げていた。
未だに理解してなさそうなカーナさんに、カーナさんの胸元に額を押し当てながら、ちょっと拗ねた声を出した。
「もう、恥ずかしかったんですっ!」
「なんでだ? 可愛かったぞ。是非とも次は私にやってくれっ!!」
「うぅ。私は大人なんですっ! もうしません!!」
「えぇー、そんなぁ」
カーナさんは私の恥ずかしかった気持ちを理解してくれなかった。多分、カーナさんに恥ずかしいという気持ちが人より気薄なのだろう。
カーナさんに理解してもらうことは諦めた。
そんなことがありつつ、無事に野営をする予定の場所に着いたのだった。
皆さん!こんばんは!
お久しぶりです⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝
お元気ですか?
いつもいつも更新遅くてすみません( ´・ω・`)
もう少し早く更新出来ればいいんですが・・・
もう少しで私の現実世界(闇)も落ち着いてくるみたいなので、頑張って更新していきますね!
今後ともよろしくお願いいたします!
皆さんの応援が私の力となっています!
いつもありがとうございます♡\(*ˊᗜˋ*)/♡