16:何が起こったのでしょうか?
遅くなりました!
楽しんで頂けると嬉しいです( *´꒳`* )
今回はちょっと短めです(*´д`)
ゴッ、·····ドゴッ、·····ドゴッ
すぅーっと意識が浮上する中、一定リズムに鳴る音が聞こえてきた。
·····なんの音かしら?
なんか重量感のある音だわ。
目が覚めて1番に視線に飛び込んできたのはキリアさんの顔だった。
無意識にビクッとなり、こちらを向いたキリアさんと目があった。
キリアさんは、さり気なく目を逸らしながら、横抱きになっていた私を膝上に座らせる体勢に治してくれた。
カーナさんに抱き上げられて眠ってしまったのは覚えているけど、いつの間にキリアさんに変わったの?
驚きで一気に目が覚めた。
「ありがとうござ·····。ありがとう。目が覚めたから、お膝から降りたいな」
後ろを振り返りながら、この体勢の脱却を試みるが、返答の代わりにお腹の前で組まれている腕に力が入った。お腹の前にあるキリアさんの腕をペシ、ペシ叩きながら無言の抗議もしたが、脱却は失敗に終わった。
そして、目覚めてから気づいていたけど、気づいちゃいけない気がして放置していた現実に目を向ける。
どうして、こんなことになってるの?
私の前には、黒服の男達とギラギラの衣装を着ていたカエルことカール、カールと一緒に地下に来ていた兵士が、パンツ1枚にされて壁1列に直立不動で磔にされており、何故か、その人達の顔周りの壁がボコボコになっていた。
ヒュッと音がしてドゴッと重低音と軽い衝撃波が辺りに散る。
音の主に視線を向けると、ニッコリ笑って、両手に漆黒の手袋(よく見ると拳鍔だわ)をつけた手をギュッと握り拳を作り、磔られている男達の顔ギリギリに拳を放つ。
軽く見えた拳がとても硬いはずの壁を抉った·····
ん?·····抉りましたか?·····えっ?·····あのボコボコの壁全てカーナさんが拳で抉ったのですか?
嘘ですわよね?貴族の屋敷の壁は、防衛のためにとても硬い素材が使われているはずですのに·····
あら?まだ夢でも見てるのかしら?目覚めたはずなのだけど·····
「シエル!!おはよう!もう少し待っててな。コイツら1発ずつ殴ったら一緒に帰って、一緒に寝ような」
夢じゃなかったようです。
カーナさんが、私の目の前まで嬉しそうに走ってきて、私の頭を優しく撫でながら、そんな事を言った。
カーナさんの手の温かさも、撫でられる感触も、全てこれが現実だと実感させられる。
夢だと思いたかったわ·····
カーナさんは、満足気に頷きながら肩や腕を解して、磔にされている男達のもとへ歩いていった。
男達は顔を青ざめながら引き攣らせて、くぐもった叫び声をあげた。
叫び声が最も大きかったカールに素早く近づくと、カーナさんは軽く壁を殴り、壁の素材が飛び散った。
その破片がカールの無防備な顔や腕などに細かい傷を作る。
既に戦意喪失してるのか、カール達の顔は涙や鼻水でグシャグシャで、瞳にはありありと恐怖一色に彩られている。
「おい。声出すなって言ったよな?お前らの声なんか聞きたくないし、私の可愛い子達にも聞かせたくないんだよ。だから·····黙れ」
ドスの効いた声が小さく呟かれた。
何かカーナさんが呟いている気がするけど、私のところまで声は届かず、何を言ったのか分からなかった。
首を傾げながら、キリアさんを見上げるも頭を撫でられて終わった。
あの呟きの内容はもとより、ここまでの経緯についても説明してはくれないようだと判断して、大人しくキリアさんの膝の上で周りを見回した。
私達が座っているソファの後ろには、カーナさんと一緒に助けに来てくれた兵士のおじ様と仲間の人達がいた。
磔にされている男達の近くにも初めて見る顔の兵士達がいて、皆一様に疲れたような呆れたような顔をしていた。
そう言えば、助けに来てくれた、おじ様たちにお礼も言ってないわ。
なんてこと、私の我儘でこんなにご迷惑おかけしてるのにお礼も言わず寝てしまうなんて、なんて失礼なことを!!
「あっ、あの·····助けに来てくれて、ありがとうございます。ご迷惑おかけしました」
身動ぎをし、兵士のおじ様たちに体を無理やり向けて、ペコリと頭を下げながらお礼を口にした。
本当は、膝から降りてお礼を言いたかったが、キリアさんの手が外れそうになかった。ただ、体を向ける時には少し拘束を緩めてくれたので、降りなければある程度の行動は許してくれるようだ。
というか·····何故、私まで拘束されてるのかしら?
少し首を傾げながらキリアさんを見上げていると、兵士のおじ様に軽く頭を撫でられた。
「シエルちゃんが謝る必要は無いぞ。悪いのはあそこで君のお母さんに叱られている奴らだからな。それにお礼も不要だ。これは俺達の仕事だし、それに殆ど君のお母さんとお兄ちゃんが捕まえたからね。ふっ·····俺たちのいる意味·····」
優しく笑いながら、声をかけてくれていたが、途中から遠い目をしながら哀愁を漂わせていた。
「えっと·····。わ、私は、おじ様たちが来てくれてとても安心しました。ありがとうございます。·····あの·····あちらは、どうしてあの様なことになっているのですか?」
あれを叱られているって表現は、合っていないように思うけど·····気にしちゃダメなようだわ。
大丈夫です!私、疑問に思いませんわ!ですから、そんな辛そうな顔しないでください。
私が首を傾げると途端に辛そうな顔をする兵士方々に顔が引き攣りそうになったため、直ぐに話題を変えた。
たぶん、カーナさんに振り回されたのね。
会った時も大変そうだったもの·····
これは私のせいだわ。私の我儘が原因だもの。
なら、おじ様たちが早くお仕事に戻れるよう、少しでも心労とならないよう場の収拾をしなければ!
キリアさんは教えてくれなそうだし·····これまでの経緯を教えて下さると助かるのだけど·····
「あぁ、シエルちゃんは寝てたから知らないよな。君のお母さんが、君達を誘拐したアイツらにとても怒っていてね。屋敷にいた奴ら全てあそこに立たせて説教してるところなんだ。もう少しで終わると思うから、お兄ちゃんと一緒に待ってられるかい? 怖い思いしたのにごめんな」
「大丈夫です。ありがとうございます。·····あの、ここは?」
「君達が誘拐された屋敷の一室だ。でも、大丈夫だよ。今、屋敷の中も外もおじさん達の仲間が見張っているからね。安心してくれ」
「そうなんですか。本当にご迷惑おかけしました」
申し訳なさそうにおじ様が話してくれるので、本当に心が傷んだ。
本当にごめんなさい。
おじ様たちの心労の原因を作ったの·····私です。
私の方が申し訳なくて、少し視線を下げてしまう。
すると直ぐに優しく頭を撫でられて、顔を上げるとおじ様に苦笑しながら「君のせいじゃないよ」と言われ、心が傷んだ。
本当にごめんなさい。
直ぐに終わらせますから!
隠蔽した察知魔法を展開して、屋敷内外に30名程の人達が歩き回っているのが分かった。
確かに安全のようだが、私には安心出来る状態ではなかった。
彼らは国に所属している兵士達だ。いつ私の秘密に気づき、動き出すか分かったものじゃない。
それに、カールへの脅しの際にも色々不味いこと言ってしまったし·····早くここから去りたい気持ちでいっぱいだった。
だから、精一杯笑顔を作りカーナさんに呼びかける。
「か、、、お母さん、早くお宿に帰ろう?」
カーナさんが振り向いたタイミングで、ジッと見つめて「ね?」と少し首を傾げる。
色々葛藤しているのか、表情がクルクル変わり、体がその場で忙しなく動くが、最後にはグッと我慢して磔にされている男達の方へ向いてしまった。
カーナさんの中で彼らへの怒りが治まらないようで、いつもならすっ飛んで来るのに、グッと我慢して色々な気持ちを発散するかのように目の前の男の真横の壁を殴りつける。
一際凹んだ壁に磔にされている男達の顔は青から白へと変わり、何人かは白目を向いていた。
どうしたら、カーナさんが撤収してくれるか考えていると、キリアさんが溜息を吐きながら耳元である言葉を授けてくれた。
恥ずかしい。それにそれを言ったことで私へかかる負荷は大変なものになることは分かっている。
でも·····これがカーナさんを動かす最大の攻撃になると理解してしまった。
「お、お母さん·····抱っこ」
恥ずかしくて顔が赤くなりながら、両手を広げて、カーナさんを上目遣いで見つめる。
恥ずかしさがジワジワと心を蝕み、涙目になりながらジッとカーナさんを待つと、カーナさんが飛んできた。
文字通り、1回のジャンプで一瞬のうちに私の目の前に来て私を抱き上げると、力を加減しながらもギュッと抱きしめて、声にならない奇声を上げながらクルクル回り始めた。
少しして落ち着くと、キリアさんを見て「帰るぞ! キリア!」と満面の笑顔で言い放ちサッサと屋敷をあとにした。
残されたのは兵士の魔術で磔にされた男達と呆然と嵐が去った扉に目を向け続ける兵士達だった。
宿に帰る道すがら、カーナさんは「私の娘が世界一可愛い」と宣い続けた。
そして、約束通り私はカーナさんに抱きしめられながら、同じベッドで一緒に朝まで眠ることとなった。
シエルのターン
シエルのお強請り!
会心の一撃!!
カーナさんは倒れた!
→カーナ 《シエル溺愛》の称号を手に入れた!
カーナさんのターン
カーナの重すぎる愛(♥ω♥*)
シエルは疲労で倒れた!
シエルは眠りについた!
皆さん!
お久しぶりです(´∀`*)
更新遅くなって、すみません(´+ω+`)
これからも頑張りますので、よろしくお願いします✨
そして!いつもコメント、ブクマありがとうございます(*´˘`*)♡
嬉しすぎて読み返したりしちゃってます!
本当にありがとうございます✨
これからもどうぞよろしくお願いしますヾ(*´∀`*)ノ