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騙され裏切られ処刑された私が⋯⋯誰を信じられるというのでしょう? 【連載版】 作者:榊 万桜
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15:俺の災難はまだ続く(別視点

よろしくお願いします(*´˘`*)♡


「分かった。ただ·····シエルを攫った馬鹿ども一人残らず捕まえて、私の前に連れてこい。1発ずつ殴ってやる!」


はっ?今、なんか恐ろしい事を聞いた気がするんだが·····冗談だよな?


「いやいやいや、冗談だろう!?相手には貴族がいる。もし殴ったりしたら、お前らが不利になる。それは容認できねぇ。じょ、冗談だよな?」


お願いだ!!冗談だと言ってくれ!

·····だが、俺の願いは虚しく散った


ニッコリ笑った漆黒の狼は、誰が見ても本気だと分かる。そして、もっと恐ろしいことを言い放った。


「別にいいぞ。約束してくれないなら、今から奴らを殺して回るから。一人残らず息の根を確実に止めてくるわ」


キリアくんにシエルちゃんを預けると、軽くストレッチを始めた。ササッと準備を終えた漆黒の狼は真っ黒のバトルアックスをどこからか取りだした。

柄が細く、綺麗な流線を描き、それに似合わない大きな刃がついていた。刃に光があたると美しい模様が浮かび上がり、一目で国宝級相当の業物だと分かる。

武器に目が取られ反応が遅れたが、漆黒の狼の前に立ちはだかり、必死に歩みを止めさせる。


「待て、待ってくれ!分かった。奴らを連れてくる。だから、早まるな」


「おい、なんか私が自殺しに行くのを止めてるみたいな言い方だな。大丈夫だ。死ぬのは私じゃなくてこの世の害悪だからな。気にするな!」


「気にするわ!貴族を相手にしようとしてるんだ。自殺と同じ様なものだろう!殺すくらいなら殴る方がまだ逃げ道がある。あの馬鹿ども、連れてくるからシエルちゃんでも見て心鎮めておけ!!」


勢いよく言いきり、部下達に指示を出す。キリアくんからは馬鹿共のいる隠し部屋への行き方を聞きランクを連れて来た道を戻るように歩き出した。


必要なさそうだが、ツヴァイを護衛という名目でキリアくん達の元に残した。できれば、漆黒の狼が勝手に動き出さないよう見張るようにとも命令しておいた。


ツヴァイはとても優しい奴だが、如何せん体格がよく寡黙に強面と三拍子揃った見掛けで女子供に怖がられる傾向にある。

俺達の部隊では最年少組のツヴァイは、先輩兵士達から可愛がられている。

まぁ、ツヴァイに負けず劣らず強面な奴らが多いからな。ツヴァイの気持ちも分かるのだろう。


ツヴァイは腕も立つし、漆黒の狼の見張り役としても上手く立ち回れるだろう。

決して、面倒事を押し付けたわけじゃない!

ツヴァイに期待してのことだ!!

そう、決してこの場を早く離れたいとかじゃない!

·····頑張ってくれ、ツヴァイ!

馬鹿共捕まえて早く戻ってくるからな!

だから、そんな辛そうな目で見るな!

今度ご飯奢ってやるから!!


俺達はサッサと馬鹿共を連れてくるため動き出した。

先に捕まえておいた馬鹿共は目覚める様子がなかったが、もしものために動けないよう縛り上げ、武器などの類は取り上げておいた。


·····それにしても、キリアくんが捕まえていた馬鹿共3人は、なんで顔や身体のあちこちに打撲痕があるんだ?

あんまり深く考えないようにしよう·····なんか、探ると良くない気がするしな。

これ以上の面倒事はゴメンだ!





キリアくんが言うには、この屋敷に黒服の馬鹿が14人、主犯の馬鹿兵士と馬鹿貴族が1人ずついるとの事だ。

妹を助け出し、守りながら、脱出を図り、その上敵の正確な情報までも把握しているとは·····恐れいる。

本当に有能な冒険者だな。先が楽しみだ。


だからこそ、不思議だ。

なんで娘1人で出歩かせたりしたんだ?

あの見た目だ。帽子で隠していたって、覗かれたり、不意に帽子が取れたりしたら、直ぐに目をつけられる。それぐらい、あの親子は分かっているだろうに·····


色々、不可思議な事が多々ある·····知りたいような知りたくないような·····。

いや、今は馬鹿共をいち早く捕まえることが先決だ!

地獄で1人頑張っているツヴァイのために!

待ってろよ!ツヴァイ!!


幸い、既に8人捕まえられている。あとは黒服が4人と地下にいるという主犯を2人捕まえられたら、この屋敷にいる馬鹿共は一掃できたことになる。

もうすぐ、援軍も着く頃合いだろう。そしたら、屋敷内をくまなく探し、草の根ひとつ残さずにさらい、奴らの証拠や関係者を一網打尽にしよう。

覚悟しとけよ!馬鹿共!!!!

今回は本当に大変だったんだ!

死ぬほど後悔させてやる!


少し私怨を交え、決意新たにランクを連れて地下牢に向かった。


途中、別行動していた3人と合流、黒服の馬鹿を2人捕らえていたため、あと2人いるはずだと他を見廻りするよう指示を出す。

俺とランクは書庫に着いた。

キリアくんに言われた通りに、部屋に設置してある暖炉の装飾の一部を捻ると地下へ続く階段が出現した。


よく分かったな·····。

こんなの俺たちだけじゃ見つけられなかったぞ。


驚愕しながらも気を引き締めて、地下へと降りた。

そこは窓がなく、換気口はあるが役目を果たしておらず、血の匂いと獣が腐った様な腐敗臭が混ざった臭いがした。牢屋は3つあり、どの部屋の鉄格子からも見える位置にこの場に不釣り合いな豪奢な机と椅子が配置されており、壁には拷問道具がいくつか飾ってあったが、何かあったのかいくつか下に落ちて散乱していた。


地下室の状態を把握しながら、慎重に牢屋の確認を行うと、黒服の馬鹿が2人と醜く肥えたカエル、それと俺が会いたかった馬鹿な部下がいた。

皆一様にイビキをかきながら眠っていた。


「寝てる?」


その光景を見て気が抜けたのか、ランクがポツリと呟いた。

地下室内に軽い反響をもたらすが、奴らが目覚める様子はなかった。


キリアくんがシエルちゃんのエプロンバックから取り出し渡してくれた鍵を使い牢を開けると、一人一人動けないよう縛り上げた。

キツめに縛り上げたが一向に目覚める気配がないため、睡眠薬が使われていると推測された。


毒性のない睡眠薬ならいいが·····


睡眠薬にも色々種類がある。

中には中毒性が酷く、使用量を少し間違えるだけで死に至るものもあるのだ。

それにここは換気口が役目を果たしていないようだし、今のところ体に変化はないが、あまり長居は良くないな。


サッサと牢屋にいた馬鹿共を引き摺り地下牢を出た。


ランクに別行動していた仲間を呼びに行かせ、馬鹿共を見張るついでに調べていく。


部下だった兵士と黒服の1人はどこかにぶつけたのか背中に打撲痕はあったが、他に傷はなく。コイツら全員、睡眠薬で眠らされていると分かった。

匂いや瞳孔の変化、身体状況から睡眠薬の種類の判別はつかなかった。


たぶん、冒険者がよく使う獣用の睡眠香か?それにしては匂いが着いていないが·····

まぁ、それも後で確認だな。


未だ眠り続ける馬鹿共を見張りながら、目に付く豪奢な赤と金に目を向ける。


この醜く肥えたカエルのような容姿、やっぱり此奴も関わってたか·····

まぁ、グリューを推薦した貴族と金貸しで繋がっていたし、その可能性は高かったが、まさか釣り上げられるとはな。


カルジェル伯爵家、次男カール。

歴史あるこの伯爵家は、優秀な人材を輩出することでも有名だったが、近年、一定数の馬鹿も排出していた。

権力を振りかざし、民を虐げる愚か者は、成人とともに爵位を与えず放り出すか、飼い殺し、病になり僻地での療養、事故死等、その時の当主が判断する。


今の当主は、妾の子だったな。

正妻の子供であるカールを無下に出来ず、軽い縛りで放置していたはずだ。

·····あっ、確か最近結婚し、そのすぐあとに奥方が妊娠したと聞いたな。

それで、カールへの監視が弱まったんだな·····

面倒みきれないなら、サッサと表舞台から退場させておけよ。

割を食うのは下々のものなんだぞ!


まぁ、これは隊長案件だな。

今回のことも含め、全ての情報を揃えて渡すか·····

あいつの事だ、あとは上手いようやるだろ。


今後の事を考えていると、別行動していた仲間を連れてランクが戻ってきた。

縛り上げられた馬鹿共を、面倒なので引き摺りながら漆黒の狼がいる所まで引き返した。


それにしても·····あの地下室は、キリアくん達のいた場所の反対側に位置する場所だ。

シエルちゃんを助け出したあと、どうやってあっちに移動したんだ?

それに、どうしてあっちに逃げる必要がある?

誰にも見つからずに移動できるんなら、サッサと屋敷を逃げ出した方が安全だろうに·····

まぁ、そこら辺も後程聞かせてもらおう。

今は、機嫌最悪の漆黒の狼に土産という名の供物(馬鹿共)をお供えしに行かねぇとな。

ツヴァイ!もう少しで戻るからな!!








漆黒の狼達と別れた場所まで戻ると、近くの扉が開き、ツヴァイが嬉しそうな目で俺達を迎え入れた。


ツヴァイに新たな傷はないな。表情も穏やかだし、辛いことがなかったのなら良かった!!


ツヴァイの様子に安堵し、引き摺ってきた馬鹿ども含め総勢16名を1ヶ所に集めて床に転がして置いた。

玄関先で捕まえた3人の内2人が目を覚ましたが、漆黒の狼の機嫌をこれ以上悪くさせたくない俺達は、サッサと猿轡をした。

それでも、「ぐぅう゛うぅぅ」などと唸る声も煩かった。


部屋の中央に設置されている皮のソファーには、漆黒の狼が長い足を組み、その上に肘をのせ、慈愛に満ちた顔で横に座るキリアくんの膝の上で眠っているシエルちゃんを見ていた。


本当に俺たちと一緒にここへ来たあの鬼と同一人物なのか?


漆黒の狼は先程までの慈愛に満ちた目を、スっと冷まし俺達を見て、1ヶ所に集められた馬鹿共を見る。

より冷たい視線が注がれた。

唸っていた2人もサッと顔を青ざめさせ、ガタガタ震えながら静かになった。


怖ぇ。さすがはAランクと言うべきか。

本当に、なんで手なんか出しやがったんだ!

どう見たって、『触るな危険!!!!』だろ?

本当、いい迷惑だ!


「お疲れ様。屋敷にいたヤツらはコレで全部か。あんまり数いなかったな」


そう言って、漆黒の狼がニヤリと笑った。


んん?

なんか·····カーナさんが悪役のような·····

·····気のせいね。気のせいよ!


ワンコのカーナさんはどこに行ったのかしら?




皆さん!

いつも誤字報告ありがとうございます!

とても助かっております(*´˘`*)♡

そして!コメントもいつもありがとうございます!

本当に嬉しいです( *´꒳`* )

日々の活力となっておりますヾ(*´∀`*)ノ

今後もよろしくお願いします٩(ˊᗜˋ*)و

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