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騙され裏切られ処刑された私が⋯⋯誰を信じられるというのでしょう? 【連載版】 作者:榊 万桜
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14:俺の災難は続く(別視点

よろしくお願いします(*´˘`*)♡


最悪だ。なんてことしてくれるんだ!!!!


俺の目の前では、鬼と化した母親が軍服男の顔を締め上げている。




時は少し遡る·····


屋敷に踏み入ってから3人の軍服を着た男達を地に沈めた鬼·····いや、母親は娘を大声で呼びながら迷いなく入り組んだ屋敷奥へと進んでいき、さらに2人の軍服男を地に沈めた。


娘を人質にされる恐れがあるため、静かに(今更遅いが……)行動するよう言っても無視された。俺達のことも紹介したりして気を紛らわせようとしたがそれも無視された。

辛い·····

仕方ないので、誰も殺さないよう声をかけ続け、必死に母親の行動を抑えた。


そんなやり取りをしながら、更に進むと待ち構えていた2人の軍服男に下卑た笑いを向けられた。


「おっ!いい女じゃん!後ろのヤツらサッサと片付けて、ちょいと味見しよーぜ」

「旦那様に怒られるぞ。まぁ、喋るヤツがいなければ大丈夫か」

「今日捕まえたっつうガキもめっちゃ可愛いらしいじゃん!後で楽しもーぜ」

「俺はガキに興味ねぇから、お前1人で楽しめば?」

「酷くね?せっかく一緒に楽しもーってお誘いしてやってんのにさぁー。バンザがすっっっげーはしゃいでたから、よっぽどいい素材なんだぜ!あいつと一緒に遊んだら楽しーぜ?」

「うぇー。アイツとかよ。俺はパス。俺はあそこの女と楽しむわ」

「なんだよー。つまんねーな。じゃぁ、俺はあのガ·····ベギャッ!!」

「·····ぇ?·····ゲボッ」


馬鹿どもの胸糞悪い会話を静かに聞いているなと思ったら、一瞬のうちに母親の姿を見失った。

次の瞬間には、娘への不埒な考えをそのまま口にしていた男が腹を蹴られ壁に吹き飛んでいた。

そして、蹴り飛ばした勢いのまま体を回転させ、何が起きたか分からずに唖然としているもう1人の男の頭を蹴り飛ばした。狙ったのか?偶然なのか?先に壁に吹き飛んだ男の上に飛んで行った。


怖ぇ。 たぶん、あいつらは今までの奴らより強かったんだろう·····調子にのれる程度には·····

だが、上には上がいる!!

絶対に怒らせちゃならねぇ奴がいることを奴らは失念してやがった。だから、そんな奴の逆鱗に触れる言葉を躊躇せずに言えるんだ·····


バカヤロウ!!!!

お前らのせいで!お前らのような奴らのせいで!俺らが貧乏くじ引かされるんだ!!!!

死にたいなら、誰にも迷惑かからない方法で死ねよ!

なんで火に油を注ぐんだ!!

誰が消火すると思ってるんだ!!

あぁ、部下達の目が死んでいく·····

だが、あの親子を犯罪者にさせる訳にはいかないんだ!すまん!



母親は、吹っ飛ばされた男達の元へ靴音をわざと響かせながら近づき、右足で後に吹っ飛ばされた男の顔を踏みつけ、左手でもう1人の頭を掴んでギリギリと音がしそうな程力を入れて持ち上げているのが分かった。


やべぇ!

死ぬ!(奴らが)


「お前ら!ボーッとすんな!! 気張って止めろ!一般人に人殺しさせるな!!!!」


「「えっ?一般人??」」


声揃えるんじゃねぇ!

俺も言ってて首傾げそうになっちまったじゃねぇか!!

兎に角!この母親に落ち着いて貰わなけりゃ、本当に死んじまう!


「落ち着け!ここでコイツらを殺しても面倒になるだけだ!娘を探しに来たんだろ?コイツらに構わずに娘を探しに行こう!なっ?だから!その手と足を離せ!!マジで死ぬから!」


「煩い!邪魔するな!絶対にコイツらを私の可愛い娘に近づけさせない!!死ねっ!」


「いやいやいやっ!だから!死なせたらダメなんだって!コイツらが言ったことは冗談だから!な?だから、その手と足を離せ!!」


必死に母親の左手を抑えながら、説得にあたっているとパッシーン!!とキレの良い音が聞こえ、母親の暴走が収まった。


何が起きたのか周りを確認すると、母親によく似た美しい顔の青年が呆れた眼差しで母親に声をかけていた。

青年の後方に娘を見つけると、今までの鬼はどこかへ霧散し、喜びをめいっぱい体で表現する犬のような美女がいた。


あの母親と短くて長い時間を過ごした俺達は、邪魔したらどうなるか分かっていたため、誰一人として声を発せず事の成り行きを傍観していた。


だいたい収まってきたところで声をかけたのだが「なんだ、まだ居たのか?さっさとこの屋敷にいる馬鹿共を捕まえにいけよ。そのためにわざわざお前らを連れてきたんだ」などと冷めた目を向けて言ってきた。


ひでぇ。

娘への態度と俺達への態度が違い過ぎないか?

ここまで来るのにどれだけ大変だったか·····

(主に·····お前を抑えるのに)


「そりゃないだろ。ここまで誰も死なせずに来られたのは俺たちのおかげだぞ。こんな馬鹿共でも貴族の保護下にいる者達だ。コイツらを殺してたら、正当防衛でも罪に問われる恐れがあるんだからな!」


苦言を呈してもどこ吹く風で、娘と戯れようと忙しそうだ。

もういいや·····疲れた。


「おい、聞けよ。はぁ、シエルちゃんにキリア君だったか?無事で良かった。うちの馬鹿が申し訳ない!しっかり捕まえて罪に問い、必ず罰すると誓おう。今回は怖い思いをさせて、すまなかったな」


「大丈夫です。兵士のおじ様もお母さんの相手大変だったでしょ?」


兄の後ろからキャスケットの猫耳を軽く揺らしながら顔を覗かせたシエルちゃんが、背丈の差で自然と上目遣いとなった状態で労りの言葉をくれた。


癒し!!!!

本当にあの母親の娘なのか?

天使だよ!天使がここにいる!!

はぁー癒される。

部下達も自然と目に生気が戻ってきやがった。


「分かるか?本当に大変だった。しかし、まさか嬢ちゃんの母親が、《漆黒の狼》だとはな」


瞬間に息子が腹を抱え顔を背けながら必死に声を出さずに笑い、母親の顔から表情が一瞬だけ抜け落ちた。

娘は知らなかったのか、首を傾げていた。


ん?これは言っちゃいけない事だったのか?

だが、母親の色素と動き方、冒険者Aランク、冒険者タグに記載されていた登録場所が隣国リンザール国のギルド、これだけ情報が合致してたら《漆黒の狼》がこの母親だと分かるだろうに·····

それに、《漆黒の狼》がこの国に入国していたのは情報として入ってきていたし、間違いないな。

まぁ、《漆黒の狼》はリンザール国では有名だが、この国ではあまり名が知られていない。主な活躍場所がリンザール国だったからな·····


実家の英才教育のせいで、色々な情報を集め精査するのが癖になっている。こんな所も隊長に目をつけられた原因だな·····はぁ。


やはり言っちゃダメなことだったようだ。

俺の事を無視し、娘を抱き上げた母親は慈愛に満ちた顔で優しく声をかけながら揺すって寝かしつけていた。


·····誰だお前?


心底疑問に思うのは、俺だけじゃない。

サッと周りを見ると部下達も驚いた顔をしていた。


娘を寝かし付けた母親が俺達を見た瞬間、また表情が抜け落ちた。

「そのふざけた字名を知っている奴が、この国にいたのかよ····。こっちでは、目立ったクエスト受けてなかったはずだけど」


「俺はこの街の兵士で、面倒だが副隊長をしている身だからな。街の者達の安全の為にも、問題を起こすことが多い冒険者達の情報はいち早く得られるようにしている。隣国のギルドで有名な《漆黒の狼》の話は耳に入っていた。ただ·····女だとは思わなかった·····」


そうなのだ。《漆黒の狼》の名やその功績は伝わってくるのだが、名前や性別などはどんなに探っても情報として得られなかった。

瞳と髪の色や動きの特徴などの情報もやっと得られた情報だったのだ。

まるで意図的に情報規制がされているようで、《漆黒の狼》の背景に王侯貴族が絡んでいる。または、《漆黒の狼》自身が身分ある者なのかと思ったが·····


うん。この母親が貴族なのは想像できん。

無理だろ!確かに綺麗な顔立ちだが、ドレス着ている姿や礼儀正しいレディな姿が思い浮かばん!

断言出来る!!漆黒の狼は貴族ではない!

所作が雑すぎる!

俺が今まであってきた貴族達はどんな奴でもある程度所作が綺麗なのだ。幼い頃から躾られた物は簡単には抜けない。

ただ·····娘の方は所作が綺麗すぎるな。


なんて思いながら親子の楽しそうなやり取りを見ていたが、ここは敵の巣穴だ。今は誰も襲ってくる気配がないが、いつ囲まれるか分からない。

子供達も見つけられたことだし、早く安全な場所まで移動して親子の安全を確保することが先決だな。

悪事の証拠は、親子が倒してきた奴らがいるしな。

覚悟しろよ·····お前らのせいで俺達が大変な目にあったんだ!

ちょっとくらい恨みを晴らしても許されるだろ。

ちょっと痛くて怖い目に遭わせてお話聞くだけだし!!素直に話してくれるなら·····少しだけ優しくして·····やらない!!

俺達が苦しんだんだ!お前達も少しは苦しめ!


·····はぁ、冗談はさておき。

今まで苦しめた人達の分まで、きっちり苦しめて苦しめて刑に処してやる。

ただ、今はこの親子を安全な場所まで連れていくことが先だ。


「さて、今は安全な場所まで移動するぞ。さっきまでは騒いでしまったが、子供達も見つけられた事だし早くこんなとこ出るぞ。キリアくんは大丈夫か?体が辛いなら·····」


「大丈夫です。これは返り血です」


「そうか。なら大丈夫だな」


うん。怖ぇ。

なんで真顔で言うんだよ。

表情筋死滅してるのか?

それに、その靴についてるのって返り血なの?

そういう色や柄じゃなくて?


キリアくんは、始終真顔で話していたように見えたが、見間違いじゃなかったようだ。

返り血だと言って軽く靴を上げているのを見て、革靴の赤黒さや不思議な柄が返り血だと理解した。


「すみません。安全な場所へ行くのはここにまだいる人達を捕まえてからにしましょう」


「ん?だがなぁ。キリアくんは冒険者だからいいとしても。シエルちゃんはまだ子供なんだ。それに今は寝ているしね。寝た子を連れたままはさすがにな。分かるだろ?」


「そうですね。でも、シエルがいた隠し扉の場所とか開け方知りませんよね?そこに主犯の2人がいますけど。·····いいんですか?」


「うっ、そうなのか。でもな·····」


「では、そこまで案内してヤツらを捕まえたら、直ぐに安全な場所まで避難するってことにしましょう」


できれば安全な場所で待っていて欲しいのだが·····

うん。キリアくん。君はあの母親の子供だ。

なんで表情に変化ないのに、有無を言わさない雰囲気があるんだ?

一応、俺もこのカノリアの守護隊として、兵士として、数多くの修羅場はくぐり抜けてきたんだけど·····

末恐ろしい子供だな。

しょうがない。俺達で君らを必ず護ろう。


「·····分かったよ。案内よろしくな」


「はい」


俺は部下達に親子の安全第一で行動することを指示し、部下達は頷きながら親子を護れるよう配置に着いた。

キリアくんに続き進もうとして、漆黒の狼が付いてこないことに気づき、母親のもとへ戻り声をかけるも反応がなく。何やら怒ったり嬉しそうな顔をしたりと表情筋が忙しそうだ。


キリアくんが母親のもとへ行き、肩を揺さぶりながら声をかけると「ん?どうした?」と首を傾げながら返事があった。


やっぱり聞いてなかったか·····


「どうした?じゃねーよ。漆黒の狼。呼びかけても返事しねーし、付いてこないから、戻ってきたんだよ。まだ、残党はいるだろうし、一緒に行動した方が危険は少ないからな」


「おい、その名で呼ぶな!ええっと·····お前名前なんだっけ?」


「おい、今更かよ。まぁ、会った瞬間『着いて来い!』の一言でいきなり走り出すわ。必要な事言わねぇわ。俺の話も聞かねぇわ。捕まえた男達の挑発に直ぐにキレるわ。·····はぁ」


疲れる。なんで·····なんで俺はいつも周りに振り回されるんだ!!

今回は漆黒の狼達が悪いんじゃない。分かってる。分かっているんだが·····はぁ。


あまりのことに思わず溜息が出てしまった。

その時、肩を軽く叩かれ、振り返った先にいたキリアくんがしきりに頷いており、その顔に表情は表れていないが同情するような目と同じ疲れを感じる雰囲気に、俺は同士を見つけた!


キリアくんは、表情こそ変化がないが、俺と同じ苦労性の匂いがする。

キリアくんもそれに勘づいたのか、しきりに頷きながら俺達は意気投合した。

キリアくんは漆黒の狼に俺は隊長に、相手は違うが同じ様な境遇なのだ!

いやぁ、キリアくんとはいい酒が飲めそうだ!


なんて意気投合していると漆黒の狼から怒気が出ていることに気づいた。


話を変えるように自分達の自己紹介をしていて、落ち着いた雰囲気になったせいか、そう言えばどうしてここの場所がわかったのかなど気になることが出てきた。そんな気持ちが顔に出てしまったようでキリアくんが自分達の自己紹介と母親の代わりに謝罪してきた。


なんて出来た息子なんだ!


そんな息子に漆黒の狼が怒っていた。

言い分もわかる。確かに俺たちの管理体制が悪かったのだ。そのせいでキリアくんとシエルちゃんを怖い目に遭わせてしまったのだ。


「申し訳なかった!確かに俺の監督不行届だ。どんな罰も甘んじて受け入れる。ただ、今はあの馬鹿どもを捕らえるのが先だ。·····捕らえた後でいい、事の経緯を教えてくれると助かるんだがな」


都合のいいことを言っているのは分かっているが、奴らの悪事を裁くために必要な貴重な証言なのだ。


キリアくんも視線で応戦してくれたのだが、漆黒の狼は甘くなかった。

まさか、あんな要求してくるなんてな·····


遅くなりました!

もう1話、ガイルの視点の話が続きます(*`・ω・´)

終わらなかった訳じゃないよ·····

ホントだよ…I˙꒳˙)


頑張ります!

いつもコメント、ブックマークありがとうございます(*´˘`*)♡

今後もよろしくお願いしますヾ(*´∀`*)ノ

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