12:可愛い娘が眠っている間に(別視点
遅くなりました·····
本当にごめんなさい:( ;´꒳`;):
楽しんでくださると嬉しいです!
では、よろしくお願いしますヾ(*´∀`*)ノ
規則正しい小さな寝息が聞こえてきた。
自分の腕の中で愛おしい存在が安心して眠れていることが嬉しくて、顔が崩れてしまう。
少しシエルを見つめた後、兵士に視線を向けると可愛さの欠けらも無い厳つい男達が目に入り、途端に表情が無くなる。
「そのふざけた字名を知っている奴が、この国にいたのかよ····。こっちでは、目立ったクエスト受けてなかったはずだけど」
「俺はこの街の兵士で、面倒だが副隊長をしている身だからな。街の者達の安全の為にも、問題を起こすことが多い冒険者達の情報はいち早く得られるようにしている。隣国のギルドで有名な《漆黒の狼》の話は耳に入っていた。ただ·····女だとは思わなかった·····」
「私はその名を認めてない。周りが勝手に呼び始めたんだ!シエルにも言ってなかったのに!! クソッ!!」
「くっ、、ふっ、·····カーナ、落ち着け。シエルが起きてしまうよっ」
未だに笑いが治まらないのか、右手で口を覆いながら私を諌めてくる。
「分かってるよ。 ふんっ!キリアもそのうちふざけた字名を付けられるんだ。その時はシエルと一緒に笑ってやるからな!」
キリアはこの国で冒険者になったから知らないのかもしれないが、既にあの国の冒険者達に《狼の小さな飼い主》なんて呼ばれていた。あの国に帰ったら、すぐにそのふざけた字名で呼ばれるはずだ。
そしたら、シエルと一緒に腹抱えて笑ってやろう!!
最近のシエルは、キリアを母親役のように思っているようだし納得とともに笑ってくれるはずだ。
キリアはそのことを嫌がっているようだし、いい気味だ。
くっ、私はそのポジションが羨ましいがな!
それにしても·····私の飼い主だなんて失礼な奴らだ!
私は母親なのに!!
呼ぶとしたら《狼の可愛い息子》とかだろ!
なんで飼い主なんだ!!
まぁ、キリアの実力は親の贔屓目なしでBランク相当は既にある。
今のランクには、ギルド加入申請の試しの儀で、相手の役を勤めたBランク冒険者を一瞬で地に沈めてしまったことで決まったのだ。
キリアの年齢、相手のプライドや立ち位置などを鑑みて、試しの儀で起こったことは秘匿された。
まぁ、秘密なんてものは必ずどこかで漏れるものだ。
たぶんあのギルドには、その秘匿された話が漏れているはずだ。アイツらの情報収集能力は世界でもトップクラスだしなぁ。
それを肴に酒でも飲んでそうだ。
まぁ、そんな若手の有望株を、あの国の冒険者共が遊ばないはずがない。もしかしたら《狼の小さな飼い主》から別のふざけた字名を付けられる可能性もある。
ふっ、いい気味だ。
今後起こるだろう未来を思い浮かべて笑っていたら、スっと寒気がしてシエルを抱え直しながら後ろへ飛び退き、体制を低くして右手に黒一色のバトルアックスを構え、左腕でシエルを抱き直し、寒気の原因へ視線を向けた。
そこには·····笑顔の魔王がいた·····
「怖っ!いきなり殺気を飛ばすなよ!ビックリしただろ!それに笑顔が怖いとか、我が息子ながら不憫でならないよ!なんで怒ってるの? てか、怒ると笑うとこ、あの人とそっくりなんだけど!!どうしてそっちに似たの!なに?私何かした?」
すぐさま武装を解いてキリアに近づき、キリアの頬を軽く抓る。
より一層笑顔が深まったが、左腕の中にいるシエルが「ぅー」と軽く身動ぎをすると、一瞬のうちに笑顔の魔王は消え、いつもの無表情の息子に戻った。
そういえば、合流した時から少し違和感があった。
·····なんだ?なんかいつもと違うような·····あっ!
キリアがシエルを視界に入れない位置をとってる?
いつも保護者のように一緒にいる時は、さりげなく自分の視界に入るような位置どりをしているのに·····
今も直ぐに兵士たちの方へ視線を向けて動き始めているし·····何かあったな。
まぁ、大方この胸クソ悪い馬鹿共の悪事の詳細でも知って、キレたとこを見られたとか、助けられなかった被害者達に罪悪感を感じているのをシエルに覚られたとか·····そんな所か?
まぁ、後者の可能性が高いな。
あんな能力があっても·····いや、あんな強力な能力があったからこそキリアの精神はまだ弱い。
その点、シエルは8歳の子供と思えないほど精神的に強いところがある。
自分では、弱いと思っているようだがな·····
本当に·····可愛い困った子供達だな。
キリアとシエルのこの微妙な関係を、大人として、親として、修復してあげるべきなんだろう·····
だが!しかし!しばらく取り持ってはやらん!!
今回は本当にイライラしたし、色々我慢したんだ。
ご褒美だけじゃ足りない気がするんだよなぁ。
だから、しばらくシエルを独り占めしちゃおう!
ふっ、愚かだな。息子よ。この世は弱肉強食だ!
お前がウジウジしている間に、私とシエルとの愛を深めて、母親の座を頂くぞ!
ふっ、ふふふ、ふはははっ!あーっはははっ!
「·····い、おい!カーナ!」
いきなり肩を捕まれ揺すぶられたことで、目の前にキリアがいることに気づいた。
「ん?どうした?」
「どうした?じゃねーよ。漆黒の狼。呼びかけても返事しねーし、付いてこないから、戻ってきたんだよ。まだ、残党はいるだろうし、一緒に行動した方が危険は少ないからな」
キリアの近くに、これまたいつの間にか立っている副隊長が呆れた様子で声をかけてきた。
「おい、その名で呼ぶな!ええっと·····お前名前なんだっけ?」
「おい、今更かよ。まぁ、会った瞬間『着いて来い!』の一言でいきなり走り出すわ。必要な事言わねぇわ。俺の話も聞かねぇわ。捕まえた男達の挑発に直ぐにキレるわ。·····はぁ」
男が酷く疲れたような顔をして深い溜息を吐く。それに同調するように男の肩を軽く叩きながら、しきりに頷くキリアをみとめ、2人は意気投合し始めた。「お前もこの大変さを分かってくれるか!」や「お前も大変なんだな。今度一緒に呑みに行くか!話ぐらいならいくらでも聞くぞ!!」などと盛り上がっている。
2人の話している内容は意味がわからないが、馬鹿にされているのは分かる!
少しムカついて頬が膨れてしまう。
それに気づいた男が苦笑しながら自身の頭を掻く。
「まぁ、いい。もう一度紹介させてもらう。カーライル子爵領、中核都市カノリア守護隊、副隊長ガイル・サーバントだ。よろしくな。後ろの2人は俺の部下でランクとツヴァイだ。あと3人ここに来ているが別行動しているからな。会った時に紹介させてもらう」
ガイルに紹介されたランクは、狐顔に優しい雰囲気が溢れ出ている優男で、私達に手を振ってきた。ツヴァイは、少し強面のガタイのいい男だが、紹介されると眉尻を下げ視線をさ迷わせながらペコッと頭を下げた。何だか可愛い男だ。
などと男達を観察していると、ガイルが視線で私たちの紹介と状況を問いてくる。ガイルは入国審査時にあっているから私達のことを知っているだろうが、後ろの2人は知らないし、今に至る訳も知りたいようだ。
·····はっきり言おう。面倒だ!!
私は今、シエルの補充で忙しいんだ!お前らのような可愛くもない屈強な男どもの相手をする時間も惜しい!!
たぶん·····気持ちが顔に出ていたようだ。
キリアが溜息を吐きながら、呆れた様子で話し始めた。
「はぁ。今まであなた達と一緒にいたのが、僕らの母でAランク冒険者カーナだ。カーナが抱きしめているのが僕の妹のシエル。この子はまだ子供だから、依頼で移動している僕達に着いて旅しているだけだよ。1人にして置けないしね。そして、僕はCランク冒険者のキリアだ。母が迷惑をおかけしたようで、すみません」
「おいっ!私は迷惑なんかかけてないぞ!こいつらが部下の管理を疎かにして、仕事が甘かったせいだろ!そのせいで私の子供達が怖い思いをすることになったんだからな!感謝はされても文句言われる筋合いないぞ!これで私の子供達が怪我なんてしてたら··········ここに居る全ての奴ら皆殺しだ」
私達の紹介を済ますと私が迷惑をかけたと謝るキリアに反論しながら、キリアとシエルが怪我をしている姿を想像して殺気立ってしまった。
ガイルが気まずそうに頭を掻くと一気に頭を下げて謝ってきた。
「申し訳なかった!確かに俺の監督不行届だ。どんな罰も甘んじて受け入れる。ただ、今はあの馬鹿どもを捕らえるのが先だ。·····捕らえた後でいい、事の経緯を教えてくれると助かるんだがな」
頭を下げながらチラッとこちらに視線を向け、そんなお願いを謝罪に混ぜてきた。
キリアもさっさと説明した方が後々面倒ではないだろ?みたいな視線を私に寄越す。
·····断りづらい。
でも、素直にコイツらの願いを聞き入れるのも癪な気がする。
「分かった。ただ·····シエルを攫った馬鹿ども一人残らず捕まえて、私の前に連れてこい。1発ずつ殴ってやる!」
「「「はっ?」」」
「はぁ、カーナ·····」
「いやいやいや、冗談だろう!?相手には貴族がいる。もし殴ったりしたら、お前らが不利になる。それは容認できねぇ。じょ、冗談だよな?」
ポカンと口を開け驚いたと思えば、直ぐに復活して私を諭そうとするガイルにニッコリ笑いかけると、今まで黙っていたランクとツヴァイが口の端を引き攣らせながら「やべぇ、本気だ」と呟いた。
「別にいいぞ。約束してくれないなら、今から奴らを殺して回るから。一人残らず息の根を確実に止めてくるわ」
呆れた様子で黙って事の成り行きを見ていたキリアにシエルを預け、体全体をほぐしにかかる。
キリアは私の代わりにシエルを抱き上げると、チラッとシエルを見て顔を赤くしサッと顔を背けていた。
それでもシエルを離そうとする素振りは皆無だったので、そのままにしておく。
本当に何があったんだか?
そんなキリアの姿を見ながら準備を素早く終え、自分の相棒を手に納めると、ガイル達が慌てて私の前に立ち塞がった。
「待て、待ってくれ!分かった。奴らを連れてくる。だから、早まるな」
「おい、なんか私が自殺しに行くのを止めてるみたいな言い方だな。大丈夫だ。死ぬのは私じゃなくてこの世の害悪だからな。気にするな!」
「気にするわ!貴族を相手にしようとしてるんだ。自殺と同じ様なものだろう!殺すくらいなら殴る方がまだ逃げ道がある。あの馬鹿ども、連れてくるからシエルちゃんでも見て心鎮めておけ!!」
勢いよく言いきると、ツヴァイを私たちの護衛という名の監視役として配置し、ランクを連れて来た道を戻って行った。
くるっと回れ右して、キリアに抱えられているシエルの寝顔を見て顔が崩れる。
「可愛い。ゆっくりお眠り、私の可愛い子」
シエルの頭を優しく撫でると、シエルの顔がふにゃりとかすかに笑った。
それだけで、身悶えするほど温かい何かに包まれる。
それは、私だけじゃなかったようでキリアもツヴァイも無意識に笑っていた。
うん、やっぱり私の娘は可愛い!!
シエルの存在を確かめて満足気に頷いてそう思った。
「 シエルは私の自慢の娘だ!
誰にも嫁にはやらない!!
娘の隣は私のものだ!!!!(*`・ω・´) 」
「カーナさんは、シエルのお母さんじゃないよ。
ペットのワンちゃんだよ!( •̀ω•́ )✧
だから、嫁に出しても一緒に居られるよ! 」
「 なら·····いいのかな?? 」
「 はぁ、カーナ····· 」
カーナさんチョロすぎますwww
勘が働きすぎて、考える力が衰退しちゃったの?
えっ?元から?あっ、·····そうなの(可哀想に·····)
痛っ!なんで叩くのよ!馬鹿にした気がしたから?そんな勘でいきなり暴力振るうの反対よ!
(·····シエルと離しちゃおうかしら)
うっ、シエルちゃん?なんでそんな悲しそうな目で見上げてくるの?
大丈夫!離さない!離さないから!泣かないでー!!
疲れました。
待っていてくれた読者の皆さん、お待たせしてすみません:( ;´꒳`;):
もっと早くにアップするはずでしたのに·····予定より時間がかかってしまいました泣
皆さんのコメントいつも読んでます!
ありがとうございます(*´˘`*)♡
もうちょっと早くアップできるように頑張ります!
これからもよろしくお願いします(*`・ω・´)