ブラジル、新型コロナの新規死者数で世界最多に

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マスクをつけずに記者団の前でせきをするブラジルのボルソナロ大統領(10日、ブラジリア)=ロイター

【サンパウロ=外山尚之】ブラジルが新型コロナウイルスの新規死者数で米国を抜き、世界最多となっている。感染力が高い変異ウイルスの流行に加えてワクチンの接種遅れも響く。主要都市は経済活動の追加制限の準備に入るが、ボルソナロ大統領はこうした政策に反発しており、政治混乱も状況悪化の一因となっている。

10日のブラジルの死者数は2286人と、過去最多を更新した。7日移動平均でも2日連続で米国を上回った。ブラジルは新規感染者数で既に米国を抜いており、再び世界の感染の中心地となっている。ブラジル保健省は月内に1日あたりの死者数が3000人に達すると予想している。

従来型と比べて1.4倍から2.2倍広まりやすいとされる「ブラジル型」の変異ウイルスの感染拡大に加え、気の緩みから2月のカーニバル休暇で集まる家族が多く、家庭内感染も広がった。また、新型コロナを「ただの風邪」と呼ぶボルソナロ氏は公の場でマスクをつけないまま経済活動の継続を主張しており、経済的に困窮する人々がこれに同調しやすいという事情もある。

ワクチン接種の遅れも深刻だ。10日時点で、ブラジルの100人あたりのワクチン接種回数は5.4回と、28.2回の米国に比べ大きく出遅れている。欧米製のワクチンを推進するボルソナロ政権と、中国製ワクチン利用を主張するサンパウロ州のドリア知事との政治的な対立を受け、ワクチンの承認が遅れたことも響いている。

ボルソナロ氏は10日、企業や地方自治体にワクチンの購入を認める大統領令に署名してワクチンの確保を急ぐが、世界的な争奪戦となっている中で実効性は不透明だ。

主要都市は経済活動のさらなる制限に踏み込む。サンパウロ州は11日、宗教的な行事やサッカーの試合開催を認めないほか、公園や海岸の利用を禁止すると発表。既に飲食店や商店の営業を制限していたが、これもさらに強化する。連邦直轄区のブラジリアも夜間の外出禁止を発表している。これらの地域では患者の急増に病床が追いつかず、集中治療室(ICU)の占有率はコロナ禍が始まって以来、最大となっている。

過去の有罪判決が無効となったルラ元大統領は10日、「文明化された国の大統領としてふさわしくない」とボルソナロ氏を批判した。ルラ氏は出馬を明言していないが、2022年の大統領選に向けた各種世論調査で首位を走っており、ボルソナロ政権のコロナ対策を巡る失政を争点として戦う構えを見せている。

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