米リリー抗体薬2種、併用で重症化リスク低減

【ニューヨーク=西邨紘子】米イーライ・リリーは10日、高リスク患者に同社の新型コロナウイルス抗体医薬2種類を投与し、重症化や死亡を防ぐ高い効果が確認されたと発表した。治療効果を調べる後期段階の臨床試験(治験)の結果だ。米国で流行する変異ウイルスの治療にも効果があるとみている。
治験には症状が軽度~中程度で、重症化リスクの高い新型コロナ患者750人以上が参加した。イーライ・リリーの抗体薬バムラニビマブとエテセビマブを併用したグループと、偽薬を投与したグループで重症化などの例を比べたところ、抗体薬を投与したグループでは重症化リスクが87%少なく、死亡者も出なかった。これまでに進めた治験と比べ、より少ない量で高い治療効果が得られることも確認した。
イーライ・リリーは、治験期間中に米国で変異ウイルスが広がり始めてからも治療の効果に大きな差が見られなかったことから、この併用療法が「米国で流行する様々な型の変異ウイルスにも治療効果がある」(同社)と分析している。米国ではこれまでに、英国型の変異ウイルスが幅広い地域で確認されている。
米食品医薬品局(FDA)は昨年11月、コロナ治療向けにバムラニビマブの単独使用を緊急承認した。その後、この薬だけでは変異ウイルスに効かない可能性が指摘され、2月にはエテセビマブとの併用療法も緊急使用を承認した。米政府はイーライ・リリーと、併用療法向けに抗体薬10万回分を購入する契約を交わしている。