――印象に残っているのはどんなシーンですか?

三浦:バー「シリウス」のオーナー江島役の生瀬(勝久)さんとのやりとりです。痺れるシーンが多かった。尊敬していた江島に対して徐々に不信感を抱くようになって、後半は、雨村の中に虚無感のようなものが生まれてくるんです。丁寧に演じたつもりなので、そのコントラストがうまく伝わるといいんですが。

――今回のドラマもそうですが、春馬さんは、常に自分に課題を与えた上で、作品を選んでいる印象があります。

三浦:「違う景色が見たい」「新しいことに挑戦したい」という気持ちは常にあります。マネージャーとも、「面白いことがしたいよね」といつも話していますし。例えば舞台にしても、1月はストレートプレイの『罪と罰』、4月からは、再演になりますがミュージカルで『キンキーブーツ』と、人間存在そのものをテーマにしたようなシリアスな作品から、煌びやかで華やかな作品まであるので。振り幅は広いと思われているかもしれないですね。

――『ダイイング・アイ』での挑戦ポイントは?

三浦:記憶喪失の役は初めてでした。あとは、ミステリーをどっぷりやらせていただいたこと。得体の知れない恐怖に怯える役どころで、回を重ねるごとに、それが正体を現していく。心情の変化を、週ごとの展開の中で見せていけるのは、ドラマのいいところだと思います。

あ、あとはバーテンダーという役もですね。バーテンダー監修の水澤さんのお店のバーカウンターでカクテルを作らせてもらいました。マッドスライドとか、アレキサンダーっていうカクテルにハマりました(笑)。同じ材料を使っていても、作り手によって、味の柔らかさが全然違うから、カクテルって奥が深いんです。

――この4月で29歳。20代最後の年ということで、感慨はありますか?

三浦:28歳になって、年齢を重ねた分、演じられる役柄が増えてきていることを実感しています。でも、そこに甘えないようにしたいです。若い頃は、「結婚は30歳までに」「30歳までには、日常会話に困らない程度の英会話はマスターしたい」とか、30という年齢を、一つの区切りとして考えていたんですが、30歳を目前にして、30歳以降、どう戦っていけるかの方が大切だと思うようになりました。

英会話の勉強も続けていますけど、他にも、信頼できる師匠の元で殺陣を習ったり、積極的にアートギャラリーに足を運んだり。今はとにかく、体がいろんなことに触れたがって、いろんなものを吸収したがっているみたいで(笑)。あまり年齢は意識せず、体の声を聞くというか。本能的な欲求に素直に従うようにしています。

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PROFILE

三浦春馬 Haruma Miura
1990年4月5日生まれ。茨城県出身。97年NHKの連続テレビ小説『あぐり』で俳優デビュー。2007年映画『恋空』で日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。NHKの紀行番組『世界はほしいモノにあふれている』ではMCを担当。出演映画『コンフィデンスマンJP』は5月17日公開予定。4月には、16年に初演され、第24回読売演劇大賞・杉村春子賞を受賞したミュージカル『キンキーブーツ』が再演される。

INFOMATION

WOWOW「連続ドラマW 東野圭吾『ダイイング・アイ』」

年間数千人もの人々がなくなる交通事故。日本では約二時間に1人の命が失われている。交通事故は、決して他人事ではない。今日、このあとすぐに自分も加害者か被害者か、どちらかの立場になるかもしれない、ごく身近な出来事なのだ。かつて交通事故を起こしたが、ある事件によって詳細な記憶を失っている雨村慎介(三浦春馬)は、謎の女瑠璃子(高橋メアリージュン)の登場によって、狂気と苦悩の世界に迷い込む。女は実在するのか。それとも、人々の後悔が作り上げた幻想なのか。

原作:東野圭吾『ダイイング・アイ』(光文社文庫刊)
脚本:吉田紀子
演出:国本雅広
出演:三浦春馬 高橋メアリージュン 松本まりか 柿澤勇人 小野塚勇人 淵上泰史 / 木村祐一 堀内敬子 生瀬勝久
     
3月16日(土)夜10時スタート(全6話 第一話無料放送)

Photo:Noriko Yamamoto Styling:Naoki Ikeda Hair&Make-up:Akemi Kurata Interview&Text:Yoko Kikuchi

ニット¥32000、パンツ¥38000(08サーカス/08ブック ☎03-5329-0801)、その他スタイリスト私物