法医鑑識の分野において、法医解剖はもとより実地法医学領域における個人識別・個人同定に関して、「年齢推定のための組織学的研究」という課題に対してライフワークとして検討を重ねている。その結果、「肋骨の超軟X線像による年齢推定」「ヒト皮膚表皮層の加齢的変化と年齢推定」「ヒト恥骨結合部の超軟X線像の画像処理による年齢推定」「日本人甲状軟骨の超軟X線像の画像処理による年齢推定」という課題にて、当教室研究生ならびに助手が学位記を授与されている。
身元不詳死体、白骨体あるいは高度腐敗死体における性別判定および年齢推定は、法医学実務上重要な課題の一つである。年々、犯罪が凶悪化するにつれて殺人死体遺棄やバラバラ殺人が増加している今日この頃であるが、人屍の一臓器・組織片より、また、交通災害特にひき逃げ事故などにおける加害車両に付着している臓器・組織片・毛髪などより、また、飛行機墜落事故や震災などの集団災害事故時に、各遺体ならびに遺体の一部についての性別判定」ならびに年齢推定が、今までよりもより多く求められるようになってきている。一臓器・組織片よりの年齢推定に関しては、法医学や人類学の立場からの研究報告が数多く発表されているが、なお検討の余地があり、さらに、ヒト臓器・組織片よりの性別判定・年齢推定という課題に取り組み続けていくものである。今後、SIDSや青壮年の突然死など内因性急死の原因ないし素因とうの臨床法医学領域の研究をも進展させたい。
また、周知の通り、医療事故が増加する昨今、当教室における司法解剖事案の中にも増加傾向を見る。社会医学系法医学としての立場からして医事法学を通じての法令を有縁化し、医療従事者や医学部学生に対し医事法の理解不足を解消し、厚生行政に貢献したい。