慰安所を転々としたヒョン・ビョンスク氏
父親が自分で名前を書いて捺印した。恐らく契約書だったはずだ。このようにして彼女は再び売春婦として働くことになる。だが、最初に行った場所では客をあまり取れなかったという。彼女は自分の外見のせいだったと述べている。そのため、中国の奉天(瀋陽の旧名)に移ることを決心する。
──しかたないでしょ。そこではお客さんを一人も取れないんだから。私はブスだからね。お客さんはきれいな女性を選んでいくのよ。ブスなんて誰が選ぶと思う。そこには女性がたくさんいたね。20~30人くらいいたかな。全員朝鮮人女性だったよ。私を買って連れてきた人の息子に「私、ここにいたら借金を全部返せないから、ほかの所に行かせて」と言ったら、「お前のお父さんと、ほかの所には行かせないっていう契約を書いたから・・・」と言われた。「本人が承諾してるから大丈夫です」と言ったら「じゃあ奉天の紹介所に行って、誰かが買ってくれたら、こちらはそのお金をもらおう」と言うの。「利子はどうしますか」と聞いたら「利子はいい。頑張って働いて家に帰れ」と。
ほかの人には売り渡さないという「契約書を書いた」という。転売しないと契約書に書いたのだ。契約書があったのは間違いない。売春婦になってからの転売の過程もここから分かる。前借金に対する債権は、そのまま新しい買い手に移される。そのお金については、利子を受け取る場合もあれば、免除してくれる場合もあったようだ。彼女が移転した奉天の売春宿または慰安所は、民間人と日本軍が共同で利用する所だった。
ペ・ジュンチョル:おばあさん、ところでその店には主にどんな客が来るんですか
──軍人も来るし、個人も来るし、いろんな人が来るよ。
彼女は残念なことに、奉天でもお金を稼ぐことができなかった。そこで今度は軍隊に付いていくことを決め、安徽(あんき)省の蚌埠(ほうふ)に移る。そこの慰安所のオーナーも朝鮮人だった。
──ここにはいられないって私は言ったの。軍隊が行く村に行ってお金を稼がなくちゃいけないと。だから奉天からほかの所へ行くって志願して、蚌埠へ行ったのさ。
ペ・ジュンチョル:おばあさんの前借金3000ウォンは、蚌埠のオーナーにそのまま渡ったんですね。
──はい。
ペ・ジュンチョル:蚌埠のオーナーも朝鮮人ですか。
──はい。みんな朝鮮人です。