「涼宮ハルヒ」とは一体何だったのか? 17年の歴史を振り返る

9年ぶりの新刊発売!
飯田 一史 プロフィール

しかし、その熱狂に背を向けるように、2006年には『ハルヒ』の新刊は1冊しか出ず、2007年に1冊出て以降、2011年まで『ハルヒ』の新刊は出なくなった。

2007年発売の『涼宮ハルヒの分裂』ではアニメで描くことが不可能な叙述トリック(文章を用いた性別誤認トリック)が用いられており、映像化による大ブームに対する谷川のアンビバレンツな気持ちを筆者は(勝手に)感じたが、この間、新刊が出なかった理由は定かではない。

2009年には初回放送時とは順番を入れ替えて再放送し、ループものエピソードである「エンドレスエイト」を8週放送して話題を呼び、2010年には劇場用アニメ『涼宮ハルヒの消失』が公開されてヒット。しかし、その間、原作は沈黙を続けた。

2011年に『涼宮ハルヒの驚愕』(前)(後)が刊行されたが、このときの売り文句は「2冊合わせて初版発行部数1026,000部でラノベ史上最多初版部数を樹立」「全世界同時発売」というものだった。ラノベ文庫史上、単巻での初版部数51万3000部という記録は今も破られていない。

TVアニメから『驚愕』まで、『ハルヒ』は「お祭」として消費された。

 

「角川」のクラシックとして回収(2019)

『ハルヒ』は2009年に創刊された小学生向けの児童文庫「角川つばさ文庫」でも第1作『涼宮ハルヒの憂鬱』が刊行されたが「児童文庫でラノベを出す」試みは『ハルヒ』に限らず長続きせず、シリーズ全巻が刊行されることはなかった。おそらく商業的に成功しなかったからだろう。

ところが2019年に角川文庫から“シリーズ全巻”がイラストなしの装丁となって再刊された。角川スニーカー文庫というライトノベルレーベルから刊行されたものが、角川文庫という一般向けの文庫から刊行され直したのである。

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