2019/6/13
あと一歩、「おしい!」精神から抜け出よ
第三章 広島人はなぜ、グローバルな発想が得意なのか
広告・宣伝の力 初めての試みもためらわず、お金も糸目をつけない
岩中祥史「広島の力」(青志社)より
筆者が『広島学』を上梓してしばらく経ったころ、「広島県」のコマーシャルに大きな注目が集まったことがある。
昨今はどこの地方(県市町村)でも、〝慢性疾患〟のようなレベルにおちいってしまった感のある経済の落ち込みから脱し、少しでも活性化を図ろうと、必死で知恵を絞っている。香川県が「うどん県」とみずから名乗り注目を集めたのもその一例。また、熊本県のゆるキャラ「くまもん」があちこちのイベントで引っ張りだこになるなど、すっかり〝全国区〟的な存在になったのも、そうした流れの中にあるできごとだろう。
そんなときに広島県が打ち上げたのが「おしい!広島県」である。これは県が2012年3月から始めた観光プロモーションのキャッチコピーで、「おしいは、おいしいの一歩手前」ということだそうだ。毒舌で知られる熊野町出身のお笑い芸人・有吉弘行を観光大使に起用し、特設ウェブサイトでは、県内の観光スポットやグルメなどを「おしい!名鑑」と名づけてアピールしている。
「おしい!広島県」とは、こういうことのようだ。広島県は魅力ある観光資源が豊富にあるにもかかわらず、全国的にあまり知られていないのがなんとも「おしい!」と。
たとえば、レモンの生産量では広島県が日本一(シェア57%)なのに、それを知らない人がほとんどというのはおしい!
お好み焼き屋の店舗数が日本一多いのに、注文のとき「広島風お好み焼き」と言われてしまうのはおしい!
有吉の出身地・熊野町の熊野筆は、国民栄誉賞の副賞としてなでしこジャパンに贈られたことで話題になり、日本ばかりか世界でも高い評価を受けているのに、熊野町が広島県にあることは知られていない。これもおしい!
「日本三大銘醸地は?」と聞かれ、灘、伏見は思い出せても、西条までは思い出してもらえない……。おしい!
また、いささか些末なことだが、プロ野球のトランペット応援やラッキー7のジェット風船は広島が発祥なのに、多くの人は阪神がオリジナルと思っている。これはおしい!
そうした「おしい!」現実がほかにも多々あるようで、それではもったいなかろうと、県の観光当局がいろいろ知恵を絞って考え出した企画である。
それを打ち出すための仕掛けもいろいろと工夫したかいがあり、このことが全国のメディアでも大きく取り上げられた。プロモーションツールの一つ 『おしい!広島県THE MOVIE』は、観光映像大賞(観光庁長官賞)も受賞しているほどである。
翌15年、さらに16年と、工夫とアイデアにあふれたプロモーションを展開したおかげもあってか、広島県への観光入れ込み客数はここのところ増加の一途をたどっている。
だが、こうした「広告・宣伝」はもともと広島県人にとってはお手のもの。その伝統はまさしく広島人が築いたものなのである。ただ、当の広島県人がそれを忘れてしまっているのが、それこそ「おしい!」。
岩中祥史(いわなか よしふみ)
1950年11月26日生まれ。愛知県立明和高校から東京大学文学部に進み、卒業後は出版社に勤務。1984年より出版プロデユーサーとして活動するとともに執筆活動も。地域の風土と人々の気質との関係をテーマに、『名古屋学』『博多学』『札幌学』『鹿児島学』『新 不思議の国の信州人』『新 出身県でわかる人の性格』『名古屋の品格』『城下町の人間学』など著書多数。2011年の上梓した『広島学』はご当地広島の人たちをも驚かせる内容で、ベストセラーになった。
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