今回は250年前を作ってみました。
どんな250年前になっているかはお楽しみにして下さいね。
あと、冒険って割には行動範囲が狭い気がしてきてます。
次は何処へ行こうか、また誰かが呼んでくれそうな気がします。
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
「そんな理由で200年も沈黙を守ったと言うのか!?」
ジルクニフは怒りとも呆れとも取れる表情で目の前の老人に言った。
「いくら陛下でも"そんな理由"とは聞き捨てなりませんぞ?」
ムッとしたフールーダは言い返す。
曰く、修行中だった若きフールーダは1人のネクロマンサーと出会った。共に魔法使いと言う事で直ぐに意気投合した2人は理由を見つけてはデートを重ね、やがて恋が芽生えた。
しかし彼女はある日突然姿を消してしまう。
フールーダは必死に行方を探し遂に彼女を見つけた。
既に13英雄の1人となっていたその女はフールーダの説得にも耳を貸さずまた旅に出てしまい、落胆したフールーダは帝国へ就職し魔法一筋の人生を歩む事になった。やがて地位も上がり言い寄る女性も居たが頑として断り続けて独身を通しているそうだ。
「フールーダさん可哀想。」
ラキュースは涙ぐむ。
「爺さん、一途なんだな。」
ガガーランも理解を示す。
「分かりますわ。人を愛すると言うのは一途なものですから。」
ラナーはチラリとクライムを見やり頷く。
(なに?この高評価?)
男たちは揃って心の中で呟いた。
「なんか、すまん。言い過ぎた様だ、許してくれ。」
周りの空気にジルクニフは思わず謝罪した。
「いやいや。若い日のほろ苦い思い出ですじゃ。」
「そ、そうか。辛い話をさせてしまったな。その本はお前にやろう。だが眼鏡は駄目だ。しかし文字は、そうだな。村に来れば誰か教えてくれるさ。なあ?アクター。」
「はい。簡単なテキスト作りましたのでネムを始め皆が勉強しております。」
「と言う訳だ。ジル、暫く留学と言う事にしてくれぬか?」
「魔法学校の方さえ引き継ぎをしてくれれば構わない。」
「おお!ありがたきお言葉!必ず弟子に引き継ぎまする。」
「しかしそのツアーの言う世界の理が面倒だな?それって決めるのはツアー本人なんだろ?だったらやっぱり本人を納得させるしか止める方法はないんじゃないか?」
「そうですね。周りに意見する者も居ないでしょうし。」
「父上。行きますか?評議国に。」
「ちょっと待て。今行くと盛り上がってるツアーを刺激する事にしかならん。もう一度、私がリグリットに話をしてみる。行くのはそれからでも遅くない。」
「大丈夫なの?イビルアイ。」
「その子はリグリットが大層目をかけていたので、何とかなるかも知れん。」
「爺、それは本当か?」
「リグリットからも聞いておりました。見所のある少女がいるので鍛えると。今はイビルアイと名乗っておるのか?確か本名はキーノと言わなかったか?」
「あー、爺さんバラしちゃったわ」
ガガーランが天を仰ぐ。
「あの国堕しの伝説を持つキーノ・ファスリス・インベルン?」
「知っているのか?ガゼフ。」
「伝説としてな。まさか現実に生きていたとはな。250年も前の話だ。伝説では吸血鬼の筈だ。しかしどうやら薔薇のメンバーは知っていた様だな。ラナー様も?」
「以前、ラキュースがそれとなく話してくれた事がありますわ。でも当時は私はまだ王女でしたので王宮に吸血鬼が出入りするのは問題がありましたので何も言いませんでした。こう言う秘事は一度口に出してしまうともう広がるのを止められませんからね。」
するとそれまで黙って聞いていたイビルアイが仮面をとった。
「これが私の素顔だ。そして名前はキーノ・ファスリス・インベルン。お前と同じアンデットだよ。」
「カワイイです。」
「え!?」驚いて息子を見る。
「現地産の吸血鬼だと言うだけでレアですし、顔もカワイイではないですか?」
「お、お前!何を言っている!」
真っ赤になるイビルアイ。
「イビルアイ真っ赤」「顔と目が同色でキモい」
「う、うるさいっ!」
(確かに現地産の吸血鬼なんてレアだけど。それにしても息子のこの反応、、、まさかな。)
「サトルと居るとビックリしてばかりだ。ではイビルアイにリグリットの説得をしてもらうで良いな?」
「良い。そしてもう呼び名はキーノでイイ。もう自分を偽るのは止めた。カルネ村のサトルへの反応を聞いて分かった。それではこれから私は心当たりを探してみる。」
「では、一先ずこの件はキーノに預けよう。それで良いな?」
ジルクニフが皆に問うと、全員が頷いた。
ーーーーー
「火球につき失礼します!」
警備の兵士が飛び込んできた。
(いやいやいや、このタイミングはないわー。そりゃ出来過ぎでしょう?え?マジ?)
「どうした?」
「はい!只今、諜報部から連絡が入りまして。王都に幽閉されておりましたバルブロ元王子が脱獄。それを支援する貴族と兵5000を連れてカルネ村へ向かったと。」
「「「なに!?」」」
「ラナー!どう言う事だ!バルブロは死んだんじゃなかったのか!?」
「・・・・・」
「答えんか!ラナー!」
「父上!落ち着いて。ラナー、質問に答えなさい。」
「はい。計画では牢内で暗殺する予定でしたが、その計画を知った父が殺すのだけは許して欲しいと。自分の命のある間だけは兄弟で殺し合う事はしないでくれ、亡き王妃に申し訳が立たないと。」
「勝手な言い分だな。」
ジルクニフは吐き捨てる様に言った。
「ジル。俺たちはこれで帰る。後は宜しく頼む。」
「お待ち下さい!」
レイナースが駆け込んで来た。
「聞きました!私も連れて行って下さい!陛下、どうか許可を!あの村で私は大切なものを教わりました。あの村は私の第二の故郷です。どうか許可を!」
「やれやれ。お前は私の命より自分を優先させると言った女だぞ?それがこの変わり様だ。サトルに魔法でもかけられたか?」
「違います!」
「冗談だ。サトル、何かの役に立つかも知れんコイツを連れて行ってやってくれ。」
「陛下!」
「ジル、お前カッコいいな」
「ジル、カコイイ」「ジル、男前」
「ジルてゆーな。一応皇帝だぞ?」
「父上、参りましょう。」
「うむ。」
4人が転移門を潜ってからジルクニフはラナーを見た。
「どうした?さっきから黙って。顔色が悪いぞ?
フフ、変わったと言えば最近のお前も随分と変わったな。俺の知るラナーはバケモノ級の策略を巡らし一切の情を挟まず目的を達成する、その為には全てを犠牲に出来る。そんな女だったぞ?」
「ちょっと!皇帝だかなんだか知らないけどさ。言い過ぎなんじゃない?!」
「ラキュース、いいの、ありがとう。貴方の知ってるラナーはさっき陛下が言った通りの女なのよ。」
「ラナー?」
「私はね、小さい時から気味悪いと言われて育ったの。その内に知らず知らずに歪んでしまったのね。全てを駒としか見えなくなってしまった。だけど、あの方に会って色々と経験して行くうちに何かが変わった。いえ、変わった様な気がするのよ。助けたい、なんとかしたい。そんな気持ち。」
「不思議な男だな。サトル・スズキ。」
「そうですね。不思議な方です。」
フールーダと蒼の薔薇は揃って不思議がる2人を不思議そうに見ていた。
ーーーーー
「ツアレさんは皆んなを地下シェルターに!クレマンティーヌさんは畑に行ってる娘を呼びに行って下さい!ンフィーはピニスンたちを森に!皆んな、急いで!」
村に兵士たちが向かっているとの情報を受けてエンリは対応に追われていた。
(村を2度と勝手にはさせない!)
エンリは奥歯を噛み締め堅く決意した。
(ああ、ガゼフ!早く帰って来て!私1人じゃ守りきれない!)
クレマンティーヌは森を駆けながら祈った。
「皆んな!慌てないで!きっとサトル様たちがお帰りになられます。それまでこのシェルターに居れば安全です!」
(このシェルターはサトル様が作ってくれたんだ。あんな兵隊なんかに潰されるもんか!)
ツアレは不安を振り払う様に強く鈴木を信じた。
ーーーーー
「ガッハハ!ヤツが何処かへ行っている間に村を焼き払ってやる!俺から全て奪ったヤツの悔しがる顔が目に浮かぶわ!」
バルブロは馬上で高笑いをした。
(あの村長のエンリとか言う娘がヤツの弱点だ。人質に取って言う事をきかせてやるさ。そして帝国も滅ぼし俺が世界を征服してやるんだ!)
「バルブロ様。そろそろカルネ村です。」
「よし!部隊を展開させよ!裏からも逃げられん様にするんだ!火矢隊は前へ!こちらの説得に応じなければ直ぐに撃て!」
「「はっ!」」
「カルネ村の住民に告ぐ!我はバルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ。即刻、村長を差し出せ!そうすれば他の者に危害は加えぬ。村長!聞こえるか!村人の命が惜しくば直ぐに出て来い!安心しろ命を取ろうと等とは言わん。」
「ツアレさん、私行きます。」
「エンリ、それは駄目だ!あんなの嘘に決まってる!」
「そうですよ、ンフィーさんの言う通りです。村長さんが捕らえられたらその後私たちは必ず殺されます。」
「でも、それしか方法が、、、」
「エンリちゃん、焦っては駄目。サトル様たちを信じてココで待つのよ。」
「お姉様、怖い」
「心配無い。アンタたちはアタシが守る。指一本触れさせない。信じてくれる?」
「「ハイ!お姉様を信じます!」」
「よし!皆んないい子だ!」
「さーて。そろそろ時間切れだ。今から10数える、それまでに出て来なければ村に火を放つ!ひとーつ、ふたーつ、、、」
「そこまでだ!」
ーーーーー
「やっと現れたか!待ち草臥れたぞ。まあ、良い。そこで指を咥えて村が焼け落ちるのを見ていろ。」
「どこまでも腐った奴だな。ガゼフ!レイナース!裏の者どもを始末しろ!アクター!エンリたちを守れ!」
「させるか!撃て!」
一斉に火矢が放たれる!
「広域魔法!ウォーターシールド!」
村を覆う様な水の壁が展開される。
火矢は壁に当たり地面に落ちた。
「な!?」
「そんな炎では枯れ木も燃やせんぞ?ファイヤーアロー!」
数え切れない炎の矢が兵士に降り注ぐ。
「ぎゃああああ!」「助けてくれー!」
逃げ惑う兵士はなす術もなく矢に撃ち抜かれ燃やされる。
「怯むな!村人を斬り殺せ!」
「私が相手になりましょう。武技 ローリングアタック!」
パンドラズ・アクターは激しく回転を始め襲い来る兵士たちを吹き飛ばす。
「うわー!」
吹き飛ばされた兵士は地面に叩きつけられ立ち上がれない。
「行け!行けーーー!!!」
「マキシマシズマジック・チェインドラゴンライトニング!」
荒れ狂う雷の龍が放たれる!
兵士たちは悲鳴を上げる間もなく倒される。
「まだだ!お前らかかれ!」
しかし足がすくんだ兵士たちは一歩も動けない。
「何をしている!行かんか!」
バルブロは隣に居た兵士を殴り倒した。
「人に命令する前にお前が戦ったらどうだ?」
気が付けば目の前に鈴木が立ちはだかっていた。
「お前には死すら生ぬるい。殺してくれと頼んでも殺さん、生きて地獄を味わえ。」
「父上!いけません!」
パンドラズ・アクターが割って入った。
「父上!これ以上はいけません!何卒、お気をお鎮め下さい!どうか!」
「パンドラズ・アクター、、、?」
「そうです。息子のパンドラズ・アクターです。どうかお気を確かに。」
「ああ。俺は一体?」
「もう大丈夫です。後は私が引き受けますから父上はエンリたちの所へ。」
「分かった。」
「さて、私は父上の笑顔を絶やす者を決して許しません。貴方は父上を怒らせ過ぎた、ここで死んで貰います。」
虫ケラを見る様にパンドラズ・アクターはバルブロを見つめた。
ーーーーー
「間に合ったか!」
裏ではクレマンティーヌが孤軍奮闘していた。
「遅いわよ!」
「スマン!お前ら"俺の"クーレに随分な事をしてくれたな。礼はたっぷりしてやるから覚悟しろ!」
「貴様はガゼフ!それにその女の鎧は帝国の物、何故ココに!?」
「貴方達は触れてはいけない物に触れたのよ。感謝しなさい!帝国四騎士が1人重爆のレイナースが相手をしてあげるわ!」
「「「さあ!大掃除を始めようか!」」」
ーーーーー
「サトル様!」
皆泣いている。
「おお!私の可愛い娘たち。怖かったろう?スマンな遅くなってしまった。」
「信じてました。きっと助けに帰って来てくれるって。」
「そうか、そうか。もう大丈夫。悪い奴らはやっつけた。安心しろ。」
「父上。終わりました。」
「ご苦労。またお前には助けられた様だな。」
「父上はそのお優しい性格の裏返しで大切な者を守る気持ちが強いのです。その気持ちが頂点に達すると暗黒面に堕ちてしまい、そうなるともう父上が父上ではなくなるのです。私はそんな父上を見る事がなにより辛い。」
「これはアンデットの特性だと思うか?」
「いいえ。それは"人間"鈴木悟から来ていると思います。ですから恐らくは抑える事は難しいでしょう。しかし私がお側に居る限り、あの娼館の地獄は起こさせません。」
「ありがとう。我が最愛の息子。」
「サトル!裏も片付いたぞ!」
ーーーーー
「村人に被害は無かったが、折角作った村がめちゃくちゃになってしまった。」
「大丈夫ですよ!サトル様。また、皆んなで作って行きましょう!」エンリが笑う。
「そうだぞ、皆んなでヤレばなんて事ないさ。」
ガゼフが笑う。
「そうだわ!カッツェ平野の街道工事から少し人手を借りましょう!」
「お!レイナース、グッドアイディア!」
「では早速、私行って来ますね!」
「みなさーん、あったかいココアが入りましたよー」
ツアレがカカオの良い香りと共にカップを持って来た。
「ツアレは良いお母さんになるよな。」
その場の全員が頷いた。
お疲れ様でした。
エンリちゃんに角笛吹いて貰おうかなと考えましたが
カルネ村の人口が密集しそうなので止めました。(笑)
だって"あの人たち"が呼び出されるとそれで完結しちゃう、ナザリック抜きじゃあそんな戦力ですからね。
ゲームの攻略本、昔はよく買ってました。
今はネットがあるので助かります。
もっともあんまりヤラないんですけどね。
じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。