ハーレムは作りませんが、恋愛は自由です。
今回は彼と彼女が良い感じになります。
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
「久しぶりじゃの。」
「ゲッ!リグリット・ベルスー・カウラウ!」
王都の子供服屋で物色していたイビルアイは驚いて振り返った。
「そこの耳に大きなリボンを付いとる猫とか口がバツ印になっとるウサギのが可愛いぞえ?」
「わ、私の服では無い!し、知り合いに子が産まれてそのお祝いだ!」
「赤子には少し大きかろう?そのコーナーは小学生女児と書いてあるぞ?カカカ」
「ま、間違えたのだ!」
「無理するな。第一お前さんに友達など居らんじゃないか。」
「クソババア!片足突っ込んでる棺桶に両足入れてくれる!」
「背も短いが、気も短いの〜。まあ落ち着けや。」
「貴っ様ぁーっ!ワンパンであの世に送ってやんよっ!表に出ろ!」
「ツアーの事じゃ。」
「何っ!?」
「ここじゃナンだ、座って話せる場所へ行こうじゃないか。」
ーーーーー
カフェに移動した2人はヒソヒソと話し始めた。
「それで"揺り戻し"っぽいから調べてくれ、と?」
「うむ。事の発端は王国からじゃてお主の力が借りたい。」
「お前は人に物を頼むのに喧嘩腰なのか?」
「さっきのは謝ったろーが、ネチっこいの〜」
「フン!ほっとけ!しかしあの男もまだそんな事に拘っているのか?確か前の時は"ただの"噴火だったじゃないか。」
「そうなんじゃ。だから今度もわしゃ嫌じゃと言うたのじゃが聞かんのじゃ。」
「面倒くさい奴だな。」
「もう200年以上面倒くさいから今更治らん。で?何か心当たりは無いかの?」
「う〜ん。無くも無い。」
「はっきり言わんかい。」
「実は"らしい"人物を知っている。ただ、ラナーを知っているだろう?アイツがその人物を絶対に探ってはならんとウチの連中にも釘を刺しているのだ。」
「お姫さんが?」
「今はもう姫では無い。しかしあの時の真剣な顔は忘れもせん。」
「困ったの〜。どうするか、、、。」
「ならヒントをやろう。お前が勝手に動く段には仕方ない事だ。その件に私は全く関知していない。どうだ?」
「成る程。お前とワシは今日会っても居らん、と言う事だな。」
「そうだ。」
「了解した。ではそのヒントとやらを呟いてくれ。」
ーーーーー
「お嬢さん、カルネ村と言うのはココかね?」
「アラ!魔法使いのお婆さん、林檎は要りませんよ?」
「誰が白雪姫の悪役じゃ!ここはカルネ村じゃな。」
「そうですよ。カルネ村です。何か御用ですか?」
「実は人探しをしておってな。黒い鎧と赤い鎧の騎士を探しておる。折り入って話があるのじゃ。知らんかな?」
「ああ、多分サトル様とアクター様の事ですね。でも、お婆さんは悪い魔法使いでしょ?」
「違う言うとろーが!可愛い顔をしてお主も中々人の神経を逆撫でする技を持っとるの。」
「ま!可愛いなんて!お婆さん正直者ですね♪わかりました。今、村長さんを呼んで来ます。ここで、待ってて下さいね。」
(この娘、頭は大丈夫かの?)
娘はタタタと駆けて行った。
そして直ぐに戻って来た。
「お待たせしました。お二人は今釣りに行って留守なので村長さんがお話を聞きますって。ご案内します、ついて来て下さいね。」
(釣り?世界の理を変える人物が?まーたツアーの勘違いじゃな。しかし折角来たんじゃ、話だけでもしておくか。)
「お世話様ですじゃ。」
ーーーーー
「ようこそ、おいで下さいました。カルネ村の村長をしています、エンリ・バレアレです。」
(この娘が村長?見た目、村長の娘でも通る歳じゃないか?
しかもこの村、村民が若い娘ばかり。妙じゃな。)
「これはこれはご丁寧に。ワシはリグリット・ベルスー・カウラウと言う者でな。実はある者から頼まれてな。サトル様とアクター様、でしたかな?お二人と少しお話しがしたいのじゃ。会わせて貰えんかな?」
「サトル様とアクター様、ですか?お二人は今釣りに行っています。午後には戻りますが、その前に差し支えなければ私にそのお話しの内容をお聞かせ願えませんか?いえ、カウラウさんを疑っているのでは無いのです。でもお二人の事を良く思ってない人たちも居るんです。それで念の為です。」
(しっかりしておるの〜。この若さで村長も頷けるわい。)
「そうしたいのは山々なのじゃが、込み入った話でな。出来れば直接したいのじゃ。押し掛けておいてスマンの。」
エンリは暫く考えていたが、決心した様に言った。
「分かりました。では、この部屋でお待ち下さい。それと失礼ながら見張りを付けさせて貰います。見ての通り女ばかりの村ですので用心深いのです。それで良いですか?」
「結構じゃ。では、待たせて貰いますよ。」
エンリは部屋を出ると近くに居た娘にガゼフとクレマンティーヌを呼びにやった。
「なんだ?村長、どうした?」
2人は直ぐにやって来た。
エリンはことの次第を告げ意見を聞いた。
「婆さん1人だろ?俺は特に問題ないと思うが?」
「いや、婆さんでも手強いのは居る。村長の言う通り、ここは念の為に。いいよ、私たちが見張っててあげる。」
「ありがとうございます。じゃあ後はよろしくお願いしますね。」
「「りょーかい」」
ーーーーー
「父上、釣れませんね。」
「お前なぁ、毎度毎度同じ事言うなよ。しかもそれがいっつもフラグになってるからな。」
「でも何故、レイナースが帰る時見送らなかったので?」
「ああ、あれか。アイツ妙に村に懐いちゃって帰らないとかゴネてたろ?俺の顔を見るとまたぶり返す。別に村に住んでも構わないが、それは一度帰ってジルにキチンと申告してからだ。」
「私、幸せです。」
「急に話を変えるなよ!レイナースの話だったろ?」
「この世界へ来てから父上は昔のようによくお笑いになる様になった。私にはそれが何より幸せなのです。」
「そんなに前は笑ってなかったか?」
「はい。ここ何年かは殆ど。」
「そうか。そうだよな。確かにナザリック維持費確保にだけログインしてた様なものだからなぁ。こうしてお前とも話せなかったし。さぞや暗い顔してたんだろうな。」
「ずっとこのままが良うございます。」
「そうだな。人間、笑って暮らすのが1番だ。骨と埴輪だけど。」
「ふふふ」
「ははは。さて魚も釣れないしそろそろ昼だ。帰るか。」
ーーーーー
「ただいまー」
「あ!サトル様!お待ちしてました!」
「ん?エンリ、どした?」
「それがですね。お2人に妙なお客さまが。」
「妙な客?」
「はい。詳しい事は本人に話すと譲らないのでガゼフさんたちに見張って貰って、今は応接室です。」
「そうか分かった。じゃあツアレに珈琲を持って来て貰ってくれ。アクター、応接室だ。」
「父上。何者でしょう?」
「さあな。でも何かのフラグは確実だろうな。」
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「お待たせしてすみませんでしたね。私がサトル・スズキ。そして息子の。」
「パンドラズ・アクターと申します。」
「リグリット・ベルスー・カウラウじゃ。単刀直入に言う。お主ら"ぷれいやー"か?」
「ほう。何者か知らぬが随分と直球勝負じゃないか。良かろう、私も言葉を飾るのは好きではない。その通り。プレイヤーだ。だが息子は違う。」
「従属神か?」
「従属神が何かは知らぬが、その様な者でもない。私の息子だと言っている。そしてこれ以上息子に無礼を言うなら、その命をもって償って貰う。」
「待て。ワシが悪かった。先を急ぎすぎたようじゃ。息子さんに非礼を詫びよう。」
「うむ。分かってくれたなら良いのだ。それでは今度はこちらの番だな。貴様は何者だ、そして何の用で来た?」
「ワシは13英雄と呼ばれた事のある元冒険者。今はアーグランド評議国のある議員に頼まれてお主たちの調査に来たのじゃ。」
「アーグランド評議国?議員?もしかして白金の竜王とか呼ばれているツァインドルクス=ヴァイシオンか?」
「お主、何故その名を?」
「竜王国のドラウディロンに聞いた。」
「ドラウディロンに?知り合いなのか?」
「正確には少し前に知り合って今は仲間だ。帝国と王国とで共同事業も始めようとしている。さあ、もう話は終わりだ。帰ってもらおう。そして帰ったらその議員とやらに言え。俺たちの事を知りたいなら他人など使わず直接会いに来いとな。俺たちは逃げも隠れもしない。分かったなら帰れ。」
「どうやらワシのファーストコンタクトは失敗だったようじゃな。こりゃ帰ったらツアーに怒られるわい。では、今日のところは一旦退散するとしよう。邪魔したな。珈琲、美味かったぞ。」
そう言うとリグリットはさっさと部屋を出て行った。
「何者なのでしょう、父上。」
「さっぱり分からん。只、そのツアーとか言うのが我々にいたく興味を持っているらしいと言うのは良くわかった。それが何故だかは知らんがな。」
「立っちゃいましたね?フラグ。」
「な?言った通りだろ?」
ーーーーー
「何!?怒らせただと!?」
思わず大声を出すイビルアイ。
「息子とか言うのを従属神かと聞いたとたん、凄い剣幕じゃ。」
「ふ〜む。初見は温厚そうでどちらかと言うと腰の低い人物が、息子の事になると急変か。ある、と言えばよくある話だ。」
「そのギャップが凄いんじゃ。怒った時は魔王そのものだった、かつて戦ったぷれいやー以上のオーラを感じたわい。」
「それ程か?」
「生まれながらの支配者みたいな、、、」
「、、、やはりその人物で間違いなかったな。王宮で王族や貴族を一喝した時もその気迫だったと聞いている。」
「ワシはもう帰るよ。後はツアーがどう判断するかじゃが、一応慎重に、とは言うておくつもりじゃ。」
「そうか。私も今度ラナーにそれとなく聞いておく。じゃあ、またな。」
「あと一つ。あの村は妙じゃ。住民は若い娘ばかりなのに、ワシをドアの外で見張っていた2人は英雄級じゃった。」
「・・・」
すっかり冷めてしまったカップを見つめイビルアイは無言で考え込んだ。
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リグリットが部屋を出ると同時に隣の部屋とのドアが開きガゼフとクレマンティーヌが入って来た。
「鉢合わせはマズいと思ってな、隣の部屋に居た。」
「あの婆さん、かなりの使い手ですよ。サトル様」
2人とも緊張している。
「クーレ、何か知っているか?」
「クーレ!?」ガゼフが即応する。
「ああ、言ってなかったっけ?竜王国でコイツの兄貴に会った話はしたよな?その兄貴がそう呼んでたんだ。」
「もう!いちいち説明しなくてイイですよぉ。」
「お、俺もクーレって呼んでいいか?」
「「「エッ?」」」
「べ、別にイイわよ。もう知らない仲じゃないし、、変な意味じゃなくて、、その、、仲間だし、、。」
パンドラズ・アクターは、ははぁんそう言う事ですか、と言う顔をしている。
(え?どゆこと?え?俺だけイミフ?)
鈴木は焦ったが今はそれどころではないので頭を切り替える。
「チラッと見ただけなんだがあの婆さん、どっかで会った事あるんだ。何処だったか、、、」とガゼフが記憶を辿る。
「婆さんは今から200年程前の13英雄の1人です。その後は蒼の薔薇に所属していたこともあります。」
「そうだ!あの婆さんだ!何か指輪くれてな。お前は見込みがあるとか言って。」
「指輪?」
「ああ、これだ。」ガゼフは指輪を外し鈴木に渡す。
早速アイテム鑑定をした鈴木は驚愕した。
「お前、これは超レアアイテムだぞ!こんなのは見た事ない!」
「父上、私にも!」パンドラズ・アクターが食いつく。
「龍の秘宝と言う名前らしい。戦士が付けると己の限界を突破出来る。」
「アクター、私やお前には何の恩恵も無いんだ。早くガゼフに返しなさい。」
兎に角レアアイテムが好きな息子は名残惜しそうに指輪を返した。
(仕方のない奴だ。全く誰に似たんだか。)
「それで、サトル様。どうされます?放置ですか?」
「いや、もう少し情報を集めよう。ココまで調べに来たんだし、いきなり襲っては来ないと思うがな。ラナーに言って蒼の薔薇を紹介して貰うつもりだ。」
「それなら俺も行こう。彼女らとは面識もあるしな。」
「ガゼフ、気をつけてね。今度の相手はビーストマンとは違うわ。」
「分かった。無理はしないよ、クーレ。」
(え?)
「お願いね。サトル様も無理はしないで下さいね。」
(も?)
「お、おう。」
息子に目で問う。
(そゆこと?)
息子は黙って頷く。
(そゆこと。)
ーーーーー
「それで怒らせてしまったんだね。」
「そうなんじゃ。このリグリット一生の不覚。」
「仕方ないさ。僕だってその"息子"は従属神だって思うよ。だけど彼はそれを認めていない。何か特別な関係を築いているのだろうと推測出来るけど、最初からそんな事はわからないよ。」
「そう言って貰えると少しは気が楽になったわい。」
「それで、村はどんな様子なの?」
「それなんじゃが、魔法で支配された様子もないし恐怖で従っているのでもない。皆が笑顔で楽しそうじゃった。」
「今までのプレイヤーとは何かが違うね。ドラウディロンやラナー姫とも関係があるみたいだから僕や君の素性が割れるのは時間の問題だろう。彼の言うように直接会った方が早そうだね。」
「しかしどう見ても世界の理を乱すとは思えなんだぞ?」
「みんな最初はそうだった。だけどその力に魅了されて変わって行った。大いなる力はそれ自体が魔力なんだよ。」
「そうなのかも知れんのぉ。」
「まあ頃合いを見て会いに行くさ。向こうさんも今頃はこちらを探っているだろうしね。」
そう言って龍はニヤリと笑った。
お疲れ様でした。
2人とも本編では途中退場していましたので
こちらでは末永くお幸せになって貰う予定です。
なんかお似合いっぽかったので、引っ付けちゃいました。
じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。