そんな中で起きたのが05年12月11日、宮澤家近くで開かれた警察と住民による追悼集会における“異例の出来事”であった。
特捜本部の女性刑事が約530人の参列者と大勢の報道陣を前に、犯人に対して、こう呼びかけたのだ。
「覚えていますか。死にたくないと必死に抵抗した四人の姿を。一家を殺してまで果たそうとした目的は何だったのですか……答えを待っています」
さらに、女性刑事は犯人の家族に対しても、こう訴えた。
「誰が犯人か、分かっているでしょう。罪を償い、裁きを受けてこそ、家族の新たな道が開けるのではないですか」
これは特捜本部がプロファイリングで打ち出した「裕福な家庭で甘やかされて育った日本の若者」という犯人像を念頭に置いたものであることは間違いないし、犯人の周辺に影がチラつく宗教団体関係者に向けて捜査協力を呼びかけたという警察幹部もいた。
いずれにせよ、誘拐や人質監禁など人命優先の事件を除けば、捜査のプロを誇る刑事が犯人に呼びかけた話など聞いたことがない。
このニュースが流れると、国内各地はもとより、世界中の警察・司法当局関係者たちから「何かのパフォーマンスか。ニッポンの警察はどうしちゃったんだい」と驚きと嘆きの声が殺到した。
韓国マフィア元ボスなどは「ニッポンじゃ、警察官が犯人に捕まるようにお願いする風習があるようだね」と嘲笑したほどだ。
一方、大半のマスコミも、捜査の不甲斐なさを批判する資格はない。なぜなら、警察当局の発表を中心とした捜査情報を垂れ流すばかりで、事件を独自に取材し報じる姿勢を見せていないからだ。
私はこれまで他社の報道を批評したことはないが、本稿では敢えて言わせて頂く。捜査当局におもねり、横並び報道しかしないマスコミの姿勢が、事件の真相解明の妨げになっているからである。