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cutting edge
国連再考 第1部 (3) ‐ 歴史的な失態
2003年07月30日
 「ヤスシ・アカシという人物は災禍だった。 国連の歴史にも特筆される大災禍だった。 アカシのためにボスニアでの平和維持活動(PKO)は歴史上でも最も効率の悪い軍事行動となってしまったのだ」

 ジーン・カークパトリック氏は「アカシ」という名を口にするとき、特に力を込め、表情を険しくした。 同氏は、一九八〇年代にレーガン政権の女性国連大使として活躍し、いまもブッシュ政権から国連人権委員会の米国主席代表に任じられた高名な国際政治学者である。

 同氏はワシントンの大手シンクタンクのAEIが六月中旬に催した集いで国連の平和維持活動について講演し、過去の失敗の最大例としてボスニア紛争への一九九四年からの国連の介入をあげ、その介入の責任者の明石康氏を糾弾するのだった。

 明石氏といえば、日本ではまさにミスター国連として名声が高かった。 九二年のカンボジア和平での国連代表としての実績は国際的にも広く認められた。 九四年には旧ユーゴスラビア国連特別代表としてボスニア・ヘルツェゴビナに送られたのだった。 ボスニアでは文官ながら国連防護軍の最高権限を与えられた。

 ボスニア地域では軍事的に優位なセルビア人勢力がイスラム系のボスニア人住民に攻撃を続けた。 九五年七月には国連が安全だとみなしたスレブレニツァ地区に集まったイスラム系住民のうち成人、少年あわせて男性八千人もがセルビア側に虐殺された。 悪名高い「民族浄化」だった。

 カークパトリック氏はこのときの国連の責任を八年が過ぎたいまも、ピンで刺すようにはっきりと明石氏に帰するのである。

 「国連の指揮下に入った北大西洋条約機構(NATO)軍がイスラム系住民の虐殺を図るセルビア勢力軍を空爆しようとしても、アカシの許可を得なければならなかった。 だが彼は許可を出さないか、出しても五、六時間の空白を設けた末だったため、虐殺を阻めないことがほとんどだった。 アカシは軍事作戦に関しては全く未経験かつ無能だった。 スレブレニツァの大虐殺も近くに居たオランダ軍がその阻止のために必死でNATOの空爆を要請したのに、認められなかったのだ」

 明石氏としては国連平和維持活動の中立性や対話を重視しての判断であろう。 しかも個人ではなく国連としての組織の対応だったはずだ。 だが米国だけでなく欧州諸国のほとんどの関係者も、ボスニア紛争では明石氏を頂点とした国連組織の不適切な対応が「民族浄化」を広げ、平和維持には完全に失敗した、と総括するようなのである。

 とくにセルビア側の虐殺責任者が戦争犯罪裁判にかけられて当時の実情がわかればわかるほど、国連の「未必の故意」に近い無力ぶりが浮かんでくるのだ。 明石氏に対してもカークパトリック氏とは政治的立場を異にする民主党リベラル派の国際政治学者ルース・ウェッジウッド氏までが 「明石氏はカンボジアでは難民救済や民主的選挙実施にすばらしい成果をあげたが、セルビア軍のどのタンクを空爆して進撃を止めるべきか、というような軍事的判断には全く不向きであった」 とミスキャストを強調する。

 明石氏個人の言動を含めてのボスニアでの国連組織の軌跡、とくにスレブレニツァの大虐殺との因果関係は米人記者デービッド・ローデ氏が九七年に出した「エンドゲーム」という書に詳しい。 同書はこの大虐殺はもし明石氏や国連防護軍のフランス人のベルナール・ジャンビエール軍事指令官がNATOによる空爆をすぐに認めていれば、防げた、と断じている。

 いずれにしてもボスニア紛争での国連の平和維持活動はスレブレニツァの大虐殺により完全な失敗とみなされるにいたった。 欧米諸国全体でもこの種の戦争や紛争はやはり国連を主役にしては和平を実現できない、という悲しい総括を生むことともなった。

 とくに米国はこの大虐殺を冷戦後の国連平和維持活動での歴史的な失態とみて、ときのクリントン政権も国連への新たな姿勢を打ち出すようになった。 ボスニア紛争には米国は主権国家として調停に乗り出し、和平協定を成立させ、米軍部隊二万人を独自に現地へ投入することとなったのだ。

 こうした国連の歴史的な曲がり角で実は日本の代表が主役になっていたという事実は極めて多様な示唆に富むといえよう。


古森義久氏 産経新聞2003年7月30日付朝刊記事
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