新型コロナによる嗅覚障害、最長5カ月続くことも
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により嗅覚障害や味覚障害が生じ得ることは、今や周知の事実といっても過言ではない。
しかし、そうした症状が最長5カ月間も続く可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。
CHU de Quebec - U Laval(カナダ)のNicolas Dupré氏らによるこの研究結果は、米国神経学会年次総会(AAN 2021、4月17〜21日、オンライン開催)で発表される予定である。
この研究は、新型コロナウイルスに感染した813人(女性84.1%)の医療従事者を対象にしたもの。
対象者は、COVID-19と診断された後、平均150.1日の時点で、64項目から成る嗅覚と味覚に関する質問票にオンラインで回答したほか、自宅で化学感覚機能障害の検査などを行った。
質問票の一部には、自身の嗅覚と味覚について0〜10点(0点:感覚なし、10点:非常に強く感じる)で評価する内容も含まれていた。
対象者の嗅覚および味覚評価のそれぞれの平均スコアは、感染前で8.98、9.20、感染後早期で2.85、3.59、質問票への回答時で7.41、8.05であった。
感染後早期に580人に嗅覚障害が生じた。これらの対象者の嗅覚スコアは、感染前で9.03であったのに対し、質問票への回答時では6.89であった。
580人のうち297人(51%)は、質問票への回答時にも嗅覚が元に戻っていないと回答した。化学感覚機能障害の検査結果からは、約17%(134人)で嗅覚障害が持続していることが明らかになった。
一方、527人の対象者に味覚障害が生じた。そのうちの38%(200人)は質問票への回答時でも味覚が元に戻っていないと回答した。
また、化学感覚機能障害の検査結果からは、9%(73人)で味覚障害が持続していることが明らかになった。
Dupré氏は、「パンデミックの発生当初から、かなりの割合の人に嗅覚障害が生じていることは明らかだった。嗅覚障害は感染症では珍しくない症状だが、COVID-19ではその程度が顕著だった」と話す。
他の感染症では、通常、副鼻腔からウイルスが除去されると嗅覚や味覚が戻る。しかし、新型コロナウイルスの場合、ウイルスが、嗅球と呼ばれる脳の領域に侵入する可能性があるという。
「新型コロナウイルスは、おそらく嗅球の細胞の一部を死滅させてしまうのだろう。それが長期化する嗅覚障害の原因だと思われる」と同氏は推測している。
同氏によると、嗅覚を取り戻しても完全には元の状態に戻らない可能性があるほか、一部の人では嗅覚障害が永続する可能性もあるという。
この研究報告を受けて、米スタテンアイランド大学病院COVID回復プログラムのディレクターであるThomas Gut氏は、「長期化する味覚や嗅覚の障害は、いわゆる“ロングCOVID”の一部だ」と話す。
ロングCOVIDとはCOVID-19回復後にも続く後遺症を表す概念で、通常、倦怠感、ブレインフォグ、記憶障害、嗅覚障害に分類される。
ロングCOVIDは日常生活に影響を及ぼす。しかし、Gut氏によると、そうした長引く症状に対する治療法は今のところみつかっていないという。
同氏は、「現状でできる最善の方法は、新型コロナウイルスワクチンを接種して、感染しないようにすることだ」と助言している。
なお、学会発表される研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 2021年2月23日)
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(参考情報)
Press Release
https://www.aan.com/PressRoom/Home/PressRelease/4859
構成/DIME編集部
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