今回は、サントリーのウイスキーにおいて庶民のボトルとしてロングセラーとなっている、サントリーホワイトとレッドを改めて飲んでみます。

元祖はサントリー初のウイスキー

_DSC3561_01_DSC3555_01サントリーの前身の壽屋では、樽に入ったアルコールが数年後に熟成されたものを模造ウイスキーとして販売したところ、結構売れたことを受けて、本格的なウイスキーづくりに着手することになりました。
その際に製造責任者として抜擢されたのが、スコットランドでウイスキーづくりを学んだ竹鶴政孝でした。

竹鶴は、創業者で社長の鳥井信治郎から、本社の大阪にほど近くウイスキーづくりに適した場所を探してほしいとの命により、大阪と京都の県境で淀川として合流して湿気や寒暖差の大きい山崎の地を見つけ、1924年に蒸溜所を建設しました。

そして1929年に、最初のウイスキーとして「白札」を出しました。
本来なら3年以上の熟成をかけて仕上げたかったものの、壽屋の株主からの圧力に屈して半端な熟成のまま発売せざるを得ず、あまり売れ行きは良くなかったようです。
同年にはよりマイルドな「赤札」を出しますが、これもうまくいかず、壽屋は大きな負債を抱え込んでしまいました。

その後角瓶のヒットと、戦中での海軍からの特需によって壽屋の業績は回復しました。
一方で白札は引き続きブレンドを幾度か改められつつもラインナップとして加わり続けました。戦後になると「シロ」の愛称で親しまれるほどでした。
そして1962年に、白札は1級ウイスキーとして「サントリーホワイト」と改称され、現在に至っています。

一方で赤札は、発売から間もなくして販売終了に追い込まれました。
時は過ぎて1964年に2級ウイスキーとして「サントリーレッド」が発売されました。
当時のホワイトが1000円に対して500円の値段で、倍のサイズでは900円と、お得感を出す戦略を打ち出しました。
その後トリスの人気が下火になるにつれてエントリーモデルのウイスキーとして1990年代まで一定の人気を持っていました。
しかし2010年代に入ってから再びトリスがフィーチャーされると、レッドは徐々に影の薄い存在となりました。

明暗分かれる、歴史的ボトル

グラスからの香り、液色

ホワイトの場合、アルコールの刺激が強いものの、奥からブドウとリンゴの香りがします。
液色は少し薄い琥珀色です。

一方でレッドは、アルコールのにおいしかなく、やっとカラメルの香りがチョットするほどかな、という程度です。本当に薄いです。
液色はホワイトとほぼ一緒です。

ストレート

ホワイトは、アルコールの刺激の後、カラメルの甘い香りが先立ち、ブドウとリンゴの香りが続きます。奥からは軽くカカオも感じられます。
味わいは、アルコールからの辛みがそこそこあるものの、その後は軽い酸味を経て甘さが広がります。

一方でレッドの場合、案外アルコールの刺激は少ないものの、樽香が多少するあとは、ほんのりリンゴの香りがチョットする程度です。
味わいは、アルコールからの辛みがしっかり来た後、薄く甘みが感じられる程度です。

ホワイトはストレートでも最低限楽しめるほどの香りと味わいですが、レッドはいろいろな意味で「無害」です。

ロック

ホワイトでは、レーズンの香りがしっかり感じられるようになり、ライムのさわやかな香りも続きます。その奥からはリンゴの香りも得られます。
味わいは、まだアルコールの辛みが残っているものの、その後は苦み、丸みのある酸味へと続き、甘い後味を感じられます。

一方レッドでは、カラメルというよりも人工甘味料のような不自然な香りが全体を包みます。奥からはリンゴの香りが感じられるものの、ホワイトほど目立って感じられません。
味わいは、こちらもアルコールの辛みが残りつつ、ほろ苦さとともに甘味料を思わせる甘さを感じます。
ロックのほうが香りが出る反面、有害なイメージも出てしまいます。

ハイボール

ホワイトの場合、軽くスモーキーあるいはウッディな香りが立ち、その後はレーズン、リンゴ、焼きたての食パン、バニラの香りが続きます。
味わいは、軽い苦みがあるものの、酸味が前に来てさっぱりした印象になります。

一方でレッドでは、埃っぽい香りが先に現れ、奥からカラメルというか人工甘味料の香りが続きます。リンゴっぽさもなくなってます。
味わいは、苦みが目立ち、おいしく飲める感じにはなりません。
コーラやジンジャエールで割るか、レモンを加えないと厳しいです。

まとめ

サントリーのみならず、ジャパニーズウイスキーの元祖の位置にある白札と赤札、その末裔ともいえるホワイトとレッドですが、その評価は明暗分かれます。

ホワイトは今においてもストレート、ロックでもそこそこ香りも味わいもあり、ともすれば角瓶よりも飲みやすい印象があります。
酒屋さんに行かないとなかなか出会えないボトルですが、晩酌用として用意しても悪くはないでしょう。

レッドは水で割っても違和感のある味わいがあり、香りに至ってはウイスキーとしての最低ラインにも達してないように思えます。
その点で言うと、格下であるはずのトリスクラシックにも負けます。
いい加減、レッドもリニューアルの必要があるでしょう。そうでなければ終売しても誰も悲しまないでしょう。