骨と卵   作:すごろく

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どうも、作者です。

今回は鈴木さんに語ってもらいます。
鈴木さんは真面目なイメージだし勉強熱心だし
ひょっとして語っちゃうかなぁ?と。

でわ、ごゆっくりお楽しみください。


その19 名も無き戦士。

(畜生!騙しやがって!こんな国に長居は無用だ!)

ここの中で毒づきながらセラブレイトは先を急いでいた。

また他の国で天使を見つければ良い。

そう考えていたその時。

「糞が!囲まれたか!」

既にビーストマンに仲間は殺られていた。

「ここまでかっ!」

もし、オトナのオンナを愛せられていれば

もし、オサナいオンナに妄想してなければ

いや!いやいやいや、違う!

「幼女こそ至高!我が生涯に一片の悔い無し!」

セラブレイトは叫び

拳を天に突き上げた

その顔は実に晴れやかだった。

 

そして食われた。

 

ーーーーー

 

「クーレ、本当に大丈夫か?今からでも城に戻ってイイんだぞ?」

「そうだぞ、クーレ。元々戦場に連れてくる予定じゃなかったんだしな。」

「2人とも!戦場でクーレって呼ばないっ!」

「「あ、はい」」

 

(さて、どう料理してやるかな)

「おい!お前はナニが出来るんだ?」

「俺は魔獣使いだ。ギガント・バジリスクなら10体呼べる。」

「どうやら口だけではない様だな。ヨシ!では、後方へ回り込んで奴等を焚き付けろ。俺は天使を召喚してサイドから逃げられん様に壁をつくる。そして正面から叩く。」

「しかしこれだけの数。そう上手いこと動いてくれるか?暴走したら手がつけられんぞ?」

「心配要らん。あの程度が何十万居ようと敵では無い。きっと上手く行くさ。」

「父上。そろそろ宜しいかと。」

 

「作戦を開始せよ!」

 

「お兄ちゃん!私たちのデートを始めましょう!」

 

ーーーーー

 

「よし。行ったな。アクター、ソウルイーターを呼び出して奴等の間を走らせろ。それで大半は死ぬ。」

「父上。ドカンと派手にヤラないんで?」

「少し考えがあってな。今回は使わん。それでな、お前にはアイツらのリーダーを見つけて捕らえて欲しいのだ。」

「リーダー、で御座いますか?」

「そうだ。俺の考えが正しければヤツらはリーダーを頂点に統制されている集団だ。だからリーダーさえ抑えてしまえば勝負はついたも同然だ。」

「何故その様な事がお分かりになったのです?」

「簡単な事だよ。見た目、外見さ。ライオンとかトラだったろ?それらは1匹の雄をリーダーにしてハーレムを形成してる。多分、同じだ。」

「なるほど。では早速行動を開始します。」

「頼んだぞ。」

 

ーーーーー

 

「やる様になったな!クーレ!」

「お兄ちゃんこそ、動きが速くなってる。」

「それにそのお前のスティレット、凄いじゃないか!国宝級だぞ。」

「へへ、サトル様が魔化して下さったんだよ。今回は危険かも知れないからって。」

「ふん!ならこんな危ない場所に最初から連れて来なきゃいいんだ!」

「もう!ホント素直じゃないんだから!あ!ホラ!そっち行ったよ!」

「おっと!逃がすとこだった!ところでそのサトルが王国と帝国の戦争を防いだってのは本当なのか?」

「ていっ!本当だよ。戦争は良く無いって俺が止めさせるって言って帝国へ乗り込んでったの。」

「せいっ!あのジルクニフが。魔法でもかけられたか。」

「たーっ!此処にも法国が来るから用心しろって言ってくれたのジル陛下だよ。留守番まで貸してくれたし。」

「くらえっ!わからん。2人の間に何があったと言うのだ。王国のラナー姫もそうだ、王宮を出て孤児院に専念していると言う。わからん。」

「逃すかっ!平和が1番だっていつも言ってるよ。無闇な殺し合いは良く無いって。だから王族の存続も帝国へ願ったんだって。」

「どりゃ!ザナックがすんなり跡目を継げたのもそうだったのか。」

「お兄ちゃん。喋ってる間に片付いちゃったね。」

「お前のお陰だよクーレ♡」

「照れちゃうよぉ♡」

 

ーーーーー

 

「何やら甘ったるい匂いがします、父上。」

「ここは戦場、そんなわけ、、、クンクン、、、あ、ホントだ。なんだこれ?しかも禁断っぽい。」

「それでリーダーらしい者を捕らえましたが後は?」

「オスメス合わせて2000ぐらい残して後は始末する。」

「先程の"計画"の為ですか?」

「そうだ。種族の存続だ。絶滅させてはいかん。」

「しかしそれではまた増えて人間を襲うのでは?」

「その為にお前にリーダー確保を命じたのだ。私からではなく、リーダーからの言葉としてもう人間を襲わないと宣言させる。言われた事と言った事の違いだな。前者には我慢出来んもんだが後者には我慢出来る。」

「なるほど、さすが父上。そんな事まで考えて。」

「俺たちは人間では無いが、神様でもない。この世は全ての生き物で回っている。都合でその連鎖を壊す事は絶対にしてはいかんのだ。それをすると俺の居たリアルな世界の様に取り返しのつかない事に成る。」

(まあココが地球って証拠は無いんだけどねー、魔法なんてのも理屈は全く通んないし。)

「あ!彼処で指示出してる体のデカいの、アレじゃないか?」

「了解です。行ってきます。」

直ぐに1匹?のビーストマンを連れて帰って来る。

「アンデット!さぁ!殺せ!」

「元気いいねー。お前、リーダー?」

「そうだ!我が名は・・・」

「あ、もう会わないし名前とかイイから。それよか、良く聞けよ?面倒だから一回しか言わないからね。私は見た通りの死の支配者だ。この前の火柱見たよな?あれも私の仕業だ。最早お前の軍は壊滅的だ。これ以上やると種族は滅びるぞ?

そこでだ。種族存続の条件をやる。なーに簡単な事だ、無条件降伏するだけだ。それだけでオスメス合わせて2000助けてやろう。どうだ?簡単だろ?」

「バカな!無条件降伏なんかして生かす訳がないじゃないか!良くて奴隷にするつもりなんだろう!」

「と、思うよな。ところが違う。何故なら私は慈悲深いアンデットだからな。ひとつ、もう人間を襲うな。ふたつ、畜産をしてそれを食え。みっつ、計画出産をしろ。」

「そんな事が!」

「出来るんだよ。いや、正確にはやらないとビーストマンの未来は無い。今はいいさ。でもこのまま人間食って無計画に増えて、その後どうするんだ?餌不足になって共喰いだぞ?ちゃんと自給自足をしないと次の世代には行かないのだ。わかるか?」

「・・・なんとなく、わかる」

「なら上等だ。手順は後で教えてやる。それとこうなったのはリーダーのお前の責任でもある、辛い仕事だが間引く者を選べ。心配要らん、楽に送ってやる。」

「本当か?苦しまないか?」

「恐らくは死んだ事も気づかないだろうよ。」

「そう、か。わかった、少し時間をくれ。」

そしてリーダーのビーストマンは群れに帰りまた戻って来た。

「2000選んだ。それらは俺が別命を出して国へ帰らせた。だから、、、」

「分かった、言うな。ご苦労だった。では、始めるぞ。お前は目を閉じて居ろ、直ぐ終わるからな。」

そう言ってリーダーに保護魔法をかけ広範囲に絶望のオーラⅤを発動する。

「終わったぞ。」

「今は辛いだろうが将来、お前はお前がやった選択は間違いでは無かったと気付くだろう。さあ、もう国へ帰れ。後で私の息子が手順を教えに行く。」

「1つ、いいか?死の支配者よ。」

「言ってみろ。」

「俺たちはもう人間には近付かんと種族の誇りにかけて約束する。だが、人間もまた我らの領土に近づかないで欲しいのだ。森の木々の無茶な伐採も止めて欲しい。」

「なるほど。言いたい事は分かった。不可侵条約を締結させよう。これは我が名サトル・スズキに誓う。」

「サトル・スズキ・・・」

「そうだ。そして息子の」

「パンドラズ・アクターです。後程伺いますのでよろしく。」

 

「では、サラバだ。達者で暮らせ!」

 

「サトル様〜!」

「おおクレマンティーヌ。怪我は無いか?」

「おい!何故ビーストマンを逃した!」

「そうカリカリするな。帰ったらちゃんと説明する。さあ凱旋だ!」

 

ーーーーー

 

「スズキ殿!クアイエッセ殿から聞いたぞ、何故なのじゃ?妾も合点が行かぬ。」

「よいですか陛下。陛下はこれから先長きに渡りこの国を統べるのです。物事を一方からのみ見てはいけません。ビーストマンもまた食わねば死ぬのです。だから口を減らし食える様導いてやれば良い。なにも絶滅させる事はないのですよ。」

「そんな事を言うてもじゃな。相手はビーストマンじゃ、いつまた約束を破って襲ってくるやも知れぬ。」

「リーダーの雄は言ってました。人もまた我々に近づかないで欲しいと。木々の伐採も無茶は止める事です。そしてそれでもまた襲って来たら、その時は私が引導を渡しましょう。」

「お主がそう言うてくれるなら心強い。」

「甘いのではないか?スズキ。」

「何が言いたい?クアイエッセ。」

「ビーストマンの様な野蛮な者が約束など守ろう筈がないと言う事だ。今はお前の力に屈して兵を引いただけ、体制を整えたらまた襲って来る。所詮は野獣だ。」

「なるほど。"法国の犬"らしい理屈だな。」

「ナニっ!?」

「盲信的な信心で人を人とも思わぬ凶行に出る法国らしいと言ったのだよ。」

「貴様!」

「ガゼフ1人の為に村を襲い、今度は私を罠に嵌める為にこの国を餌にする。違うか?」

「う!」

「何?それは誠か!?クアイエッセ殿!?」

「陛下、残念ながら本当の事です。しかし、法国が絡んでいなければ私がこの国の惨状を知る事もなかったのも事実。ここはもう済んだ事と目を瞑っては頂けないでしょうか?この通りです。」

鈴木は深く頭を下げた。

「救国の英雄に頭を下げられては。分かった。忘れよう。」

「感謝します。」

「陛下、ありがとうございます。」

クレマンティーヌも頭を深く下げた。

「クアイエッセよ。息子にも言ったのだが、私たちは神ではないのだ。生きる者たちの殺生を勝手に決めてはいかん。それはこの世を創りたもうた神への冒涜だとは思わんか?」

「それは理屈だ。」

「そうだ。理屈だ。だが理想でもある。理想へ向けて努力するのは知恵ある人間の義務だ。」

「クアイエッセ殿。妾もまた努力をしよう。」

「陛下まで、、、。」

「お兄ちゃん。お兄ちゃんも気付いてるんでしょう?殺すだけでは何も生まれないって。」

「ふっ。どうやら多勢に無勢だな。わかった、今回は引き下がる。」

「助かる。」

 

「では、私は退散するとしよう。妹を頼んだぞ。」

「連れて帰らんのか?」

「ハハ、困った事に法国よりお前の所の方が居心地が良いそうだ。クーレ、元気でな。頭を下げるのはこれが最後だ、どうか宜しく頼む。」

「うむ。この名にかけて約束しよう。」

「お兄ちゃん、、、。でもそれでお兄ちゃんはどうなるの!?サトル様の力量を計るのとビーストマン殲滅が任務だった筈、どちらも果たせてないわ。それじゃ上層部は納得しない。きっとなにか罰を。」

「策があると言っただろう?今回、スズキは来なかった。だからお前とも会ってはいない。」

「え?それじゃあ?」

「そうだ。それでは辻褄が合わない。今回やって来たのは"白金の竜王ツァインドルクス=ヴァイシオン"。女王陛下の頼みで来た。それでビーストマンを撃退したが私との連携が上手く取れず少数を取り逃してしまった。」

「ゲ!あの薄情者のツァインドルクス=ヴァイシオンか!」

ドラウディロンの顔が歪む。

「なるほど。良い手ですな。」宰相は頷く。

「その白金の竜王とは?」

「アーグランド評議国の永久評議員をやっておる奴でな。妾と同族じゃ。じゃから助けてくれと頼んだのじゃが、それはこの世界の理だ、とか言いおっての。薄情者じゃ。そうじゃ、そうじゃ、今回の事はみーんなあの薄情者のせいにしてやったらええのじゃ。」

「と言う訳だ。クーレ。」

「何かよくわからんがそれで良いなら異論はない。」

 

「では。女王陛下、これにて失礼いたします。クーレ、元気で。」

クアイエッセは一度も振り返らず颯爽と去って行った。

(俺には挨拶なしかよ!)

 

「良かったのか?クレマンティーヌ。」

「はい。サトル様。私は法国を捨てた女。兄とは戻れません。それにカルネ村が今の私の故郷ですから。」

そう言ってニッコリ笑った。

 

「一件落着じゃな!今宵は呑もうぞ!祝宴じゃ!」

 

(あー!乾杯してーなー!)

魂の叫びが聞き届く事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした。

本編でのペ・リユロさん役を名無しさんに代わって貰いました。
苦渋の選択ってやつですね。
なんか全滅させちゃうのって可哀想になってしまいまして
こうなりました。

じゃあまた、よろしくお願いします。
ありがとうございました。

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