骨と卵   作:すごろく

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どうも、作者です。

今回は「幼女」「お兄ちゃん」「妹」の三大要素が盛り込まれます。
特に「妹」への作者の執着が強く、ちょっとクドいかも知れませんが許して下さい。

でわ、ごゆっくりお楽しみください。


その18 兄妹喧嘩は骨も食わない。

「お兄ちゃん!?」

 

「クーレ、なのかい!?」

 

「「!!クーレ?!!!」」

 

華やかな場は一転、静寂が支配する。

 

「己れ!アンデット!妹に何をしたっ!」

身構えるクアイエッセ!

「え?!俺?別に何も?」

「待って!お兄ちゃん!違うの!」

「糞っ!魅了されたかっ!」

「いや、いや、いや、違うって!勘違いだって!」

「五月蝿いっ!何が勘違いだ!お前が魔法で妹を!でなければ妹がアンデットと一緒に居る訳がない!」

「お兄ちゃん!落ち着いて!話を聞いて!お願い!」

パーティー会場は修羅場と化した。

他の招待客は我先に逃げ出した。

「く、クアイエッセ殿!兎に角、落ち着いて下さい!」

宰相も青くなって止めに入る。

いつの間にかパンドラズ・アクターも臨戦体制だ。

(何がどーなってんだよぉーーー)

 

ーーーーー

 

クレマンティーヌの必死の説得で漸く落ち着きを取り戻したクアイエッセは女王の勧めもあって席についた。

だがまだ鈴木を睨みつけている。

「では、クーレは危ない所をこのアンデットに助けてもらった。そして今は一緒に暮らしていると?」

「そのアンデットはやめて貰えます?まあ確かにアンデットなんですけど一応名前がある訳ですし。」

「そうよ、お兄ちゃん。失礼よ。それに人前で私の事をクーレって呼ばないでって言ってるじゃない!」

「何を言う。クーレはクーレじゃないか。私の可愛い妹のクーレだ。」

(うわぁ。コイツ、シスコンだわ。)

「そうじゃぞ?クアイエッセ殿。この方々は妾の国を救って下さった恩人じゃ。決して邪悪なアンデットでは無い。妾が保証するぞ。」

「ふん!納得はいかんが、陛下のお顔を立ててこの場は収める。しかし全面的に信用した訳ではないぞ。」

「ご自由に。」

(めっちゃ面倒くさそうな男だな〜)

「それでお兄ちゃん。まさか本国の密命で来たんじゃないでしょうね!?」

「うっ!」

「やっぱり。言っときますけどね、サトル様をハメる様な事をしたら兄妹の縁は切るからね!」

「そんな!クーレ!たった2人きりの兄妹じゃないか!お前が居なくなってからどれ程心配したか。」

「そりゃ、私だってお兄ちゃんに会いたかったわよ。でも皆んな出来損ないだ、出涸らしだって虐めるし。任務だっていっつも命懸けだし。その割に給料も安いし。」

(おいおい、なんだかややこしくなって来てないか?)

とその時徐ろにセラブレイトが手を挙げた。

「あの〜。なんか話がややこしくなって来てますし、私全然わかりませんし、帰らせて貰ってイイですか?」

「おお!セラブレイト殿!汝の働きも妾は決して忘れてはおらぬぞ。すまぬの。今夜はもう帰って貰って良い。これからも宜しく頼む。お願いじゃぞ?」

ドラウディロンは突然幼児口調になって潤んだ瞳の上目使いでセラブレイトを見る、その時。

「スパーン!」乾いた音が響いた。

パンドラズ・アクターが部屋のスリッパでドラウディロンの後頭部を痛打していた。

「うぎゃ!」変な声を上げドラウディロンの変身が解け

成人女性の姿になる。

「「「ゲッ!」」」

「この私の前でいつまで下手な芝居を続けるつもりです?

もう我慢の限界ですよ?」

冷たい視線を投げるパンドラズ・アクター。

「アンタ!幼女じゃなかったのか!?糞っ!騙してたな!オトナの女に興味は無い!帰らせていただく!」

セラブレイトは激怒して帰ってしまった。

「なんと言う事をしてくれたのじゃ!あんな変態でも役に立っていたのじゃ!」

ドラウディロンは半泣きだ。

(またパンドラズ・アクターが話をややこしく)

鈴木は頭を抱える。しかし息子の不始末は親の責任。

「陛下、心配は要りません。私たちが必ずビーストマンどもを蹴散らしてご覧に入れましょう。この国の平和は私たちが守ります。」

「なんと!誠か?もう妾にはお主たちしか頼る者が居らんのじゃ。ビーストマンをやっつけてくれるのじゃな?信じて良いのじゃな?」

「ご安心を。しかし今夜は色々あって少々疲れました。明日、改めてご相談いたしましょう。クレマンティーヌ、兄上と積もる話もあるだろうが、取り敢えず話を聞かせてくれ。

良いかな?クアイエッセ殿。」

クアイエッセは渋々首を縦に振る。

「では、今夜はこれにて失礼。」

3人は部屋に戻って行った。

「クアイエッセ殿も今夜はゆっくりお休みください。良いですね?騒ぎは駄目ですよ?」

宰相が釘を刺す。

 

こうして波乱のパーティーはお開きになった。

 

ーーーーー

 

「説明して貰おうか?」

パンドラズ・アクターは手持ちの珈琲を用意する。

 

「兄は昔からああなんです。アタシの事になると見境無くなって。でもそれ以外だと凄く冷静だし頼りになるんです!失礼はお詫びします、だから、だから、兄をお許しください!」

「待て待て。俺は何も腹を立てては居ないんだぞ?勿論、お前の兄をどうこうしようとも考えていない。しかし、兄が法国の手先として我々をハメ様とするなら話は別だ。それは分かるな?」

「はい。それは分かっております。アタシもそんな事になったら例え兄と言えど許さない覚悟はあります。

「そうか。なら話は簡単だ。明日、お前は兄の誤解を解くのだ。別に法国を裏切らせろとは言わん、邪魔をしてくれなければそれで良いのだ。」

「畏まりました。必ず兄を説得してみせます。」

「うむ。頼んだぞ、クーレ。」

「だからぁその呼び名はダメだって!」

真っ赤になるクレマンティーヌ。

鈴木は嬉しそうにクレマンティーヌを見つめた。

 

ーーーーー

 

翌朝、鈴木とパンドラズ・アクターはドラウディロンと宰相を交え展開している見方陣営や予想できる襲撃パターンを確認していた。

一方、クレマンティーヌはクアイエッセの部屋で2人きりで話をしていた。

「俺を説得に来たのかクーレ。」

「そうよ、お兄ちゃんは頑固だから。」

「お前が信仰心に薄いだけだ。」

「お兄ちゃんが信心深いの!」

「ふふ。頑固はどっちだ?」

「えへへ」「ははは」

「あのね、お兄ちゃん。頼みがあって来たの。」

「邪魔をするな、か?」

「アイツの考えそうな事だ。俺の妹への想いを利用してお前を説得に寄越す。見え見えだよ。」

「確かにサトル様に言われて来たよ。でもそれは私自身の考えでもあるの。」

「お前自身の考え?」

「そうよ。私が考えそして出した答え。だからお願い、私たちの邪魔はしないで。」

「何故それ程まで・・・」

「小さい時から魔法も使えて何でも出来るお兄ちゃんは私の自慢だった。でもそのお陰で私は両親にも友達にも馬鹿にされて来たの。だけど頑張って追いつけば認めて貰える、お兄ちゃんの妹だって認めて貰える。そして聖典に入れたわ。」

「そうだ。頑張ったお前は自慢の妹だったよ。」

「けど現実は違った。次から次へと過酷な任務。命を賭けてやり遂げても誰も褒めてもくれない。」

「それは神への奉仕だから。」

「私はお兄ちゃんとは違うの!会った事も見た事もない神様に命懸けで奉仕なんて出来ない!知ってる?私はもう綺麗は身体じゃないのよ?」

「な!?」

「知らなかったでしょ?一度ドジっちゃってね。その時犯られちゃった、、、」

「何処の何奴だっ!教えろ!今すぐに八つ裂きにしてやる!」

「うんん。もう良いの。もう終わった事よ。でもね、法国を逃げ出したのはその事だけじゃないのよ。」

「まだ何かあるのかっ!?」

「何かね。疑問に思ったの。このままで私の一生は終わっちゃうのかなぁって。使われて捨てられて、終わっちゃうのかなぁって。そしたら急に今までの生活が馬鹿馬鹿しくなってね。逃げちゃった。」

「クーレ。今は幸せなのかい?」

「とっても!皆んな大事にしてくれるし。頼ってもくれる。お兄ちゃんも知ってるでしょ?王国に居た八本指、アイツらに捕まってた娘たちをサトル様が助けてね。その娘たちと薬草取ったりお茶したり、お菓子とかも作るんだよ!」

「そう、か。そんな顔のクーレは随分と久しぶりだ。分かった。協力しよう。」

「でもそれじゃあお兄ちゃんの立場が危ないってサトル様が。」

「ふん、妙に気が回るヤツだな!心配するな、俺に考えがある。無論、お前たちにもこの竜王国にも迷惑はかけん。」

「さっすが!クーレのお兄ちゃんだ!だーい好きっ♡」

「ハハ!煽ても何も出ないぞ?」

クアイエッセは始めて笑顔を見せた。

 

ーーーーー

 

「陛下!スズキ様!火急の要件にて失礼しますっ!」

荒々しくドアが開かれ兵士が1人飛び込んで来た。

 

「なんじゃ?どうしたと言うのじゃ?」

 

「ハッ!只今偵察隊より連絡がありビーストマンの大軍が

こちらへ進行中との事ですっ!」

 

「して、数は?」

 

「ハッ!その数ザッと見積もって20万っ!」

 

「なんじゃと!20万!?何故それ程のビーストマンに気付けなんだのじゃ!?」

 

「陛下。今はそんな責任の追及より今後の対策です。」

 

「う〜ん、そ、そうじゃな。スズキ殿何か考えはお有りか?」

 

「そうですね。先ず城下の人々を城の中へ避難させて下さい。そして外に居る兵士にも全て撤退命令。その後、城門は全て閉じその警備へ回して下さい。その時には城壁にも一定間隔で兵を配置し侵入するビーストマンは確実に排除する事。良いですね?」

 

「籠城戦か?それには食料が、、、。」

 

「違います。進行中の本隊は私と息子で叩きます。しかし数が数ですので撃ち漏らす場合も考えての作戦です。」

 

「待ってくれ。たった2人で?相手は20万ぞ?」

 

「それが何か?」

 

「いや、何かって。」

 

「2人では無いっ!」

 

「む!クアイエッセ!どうやら話はついた様だな。」

 

「ふん!余計な世話よ!そんな事よりさっさと作戦を教えろ。」

 

「ちっ。お前とは後でじっくり話し合わねばならなそうだな。本隊は俺たち父子で叩く、お前は本隊から散らばるのを掃除してくれ。くれぐれも絶対に城に近付けるな。」

 

「承知。猫の子1匹近づけんよ。」

 

「お兄ちゃん!私も行く!」

 

「駄目だ!」「そうだ。駄目だ!」

 

「なによ、2人揃って!心配要らないって!新しい武器にも慣れたし。お兄ちゃんの掃除を手伝う!」

 

「むむむ〜。お前が決めろクアイエッセ!俺はもう知らん!」

 

「チッ!投げやがったか!昔から言い出したら聞かないからな、良いだろうついて来い。だが俺が命令したら必ず従って撤退するんだぞ?いいな?」

 

「了解っ!」

 

(役者は揃ったな。さぁ!ショータイムだっ!)

 




お疲れ様でした。

書いてて益々クレマンティーヌさんが好きになりました。
あと"ちょっと違うんじゃね?"ついでにお兄さんの方も
キャラを弄ってみました。

ビーストマン、完全な斬られ役ですよね。
読む側の時はそんな事は思わなかったのですが
貴重で便利な存在だなぁと、今回思いました。

じゃあまた。よろしくお願いします。
ありがとうございました。

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