光部品実装用基板及びその製造方法並びに光モジュール

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高速用途に適した光部品実装用基板とその製
造方法を提供し、さらに、これにより高機能化された光
モジュールをも提供すること。 【解決手段】 光半導体素子22及び光半導体素子22
に光結合させる光学素子21を配設するためのサブ基板
11と、サブ基板11の下に配設されサブ基板11より
も誘電率が小さく且つサブ基板11より広いベース基板
12とを備えるとともに、サブ基板11に光半導体素子
22に通電するための導体パターン16がサブ基板11
上及びベース基板12上に連続して形成されていること
を特徴とする光部品実装用基板とし、この光部品実装用
基板上に。光半導体素子22、光半導体素子22に光結
合させる光学素子21、及び電子部品23等を配設した
光モジュールとする。

Description

【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば光ファイバ
通信や光インターコネクションといった光伝送に用いら
れる光部品実装用基板及びその製造方法並びに光モジュ
ールに関する。

【0002】

【従来技術とその課題】近年、光通信システムの大容量
化及び多機能化が求められており、それに従って、光モ
ジュールの小型化、集積化及び低コスト化が要望されて
いる。

【0003】なかでも光モジュールの組立コストを削減
する目的で、同一基板上に光ファイバやレンズなどの光
学素子、及び光半導体素子などの光部品を実装する技
術、いわゆる光ハイブリッド実装技術が注目されてい
る。

【0004】KOH水溶液やTMAH(水酸化テトラメ
チルアンモニウム)水溶液などを用いた異方性エッチン
グにより、シリコン基板にV溝が高精度に作製される。
そして、例えばミラー指数表記で(111)面及びそれ
と等価な面、もしくは(111)面と(100)面等で
形成されたV溝に光学素子を配設することで、この同一
シリコン基板上の導体パターンに実装された光半導体素
子などとの光結合を容易にすることができる。

【0005】近年、こうした光モジュールの高速化の要
求にともない、光モジュールにも集積化が求められてき
ており、一つのパッケージの中に光半導体素子の駆動回
路や複数の電子部品を内蔵させることが要求されてい
る。

【0006】図4(a),(b)はこの一例を略図にて
説明するものである。ここで、Sはサブアセンブリであ
り、シリコン基板41上に、ボールレンズ42、発光素
子43、モニター用受光素子44を搭載したセラミック
キャリア45が、V溝46やメタライズパターン47、
段差面48などを利用し搭載されて構成されている。

【0007】このサブアセンブリSは電気回路基板C上
に実装される。電気回路基板Cは、シリコンよりも高周
波特性に優れたアルミナなどのセラミック基板や石英基
板などの基板49を用い、この上に電気配線50を形成
し、図示していない駆動用素子および各種電子部品5
1、52が搭載されている。

【0008】また、サブアセンブリ基板Sと電子回路基
板Cとは、ボンディングワイヤー53等を用いたボンデ
ィング手法を用い電気的な接続を取る構成としている。
そして、光学素子の実装基板として加工精度に優れたシ
リコン基板41の利点と、高周波特性面で有利なセラミ
ック基板や石英基板などの基板49の利点とを融合させ
る構成としている。

【0009】しかしながら、サブアセンブリ基板Sと電
気回路基板Cとの電気的接続を取るためのボンディング
ワイヤー53は、高速動作が要求される光モジュールで
は、電気的な損失を大きくする問題があり、取り除くこ
とが求められている。また、このように2種類の基板を
別々に作製することは、実装工程が煩雑になるなど問題
がある。

【0010】そこで本発明では、上述の諸問題を解消し
高速用途に適した光部品実装用基板とその製造方法を提
供し、さらに、これにより高機能化された光モジュール
をも提供することを目的とする。

【0011】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の光部品実装用基板は、光半導体素子及び該
光半導体素子に光結合させる光学素子を配設するための
サブ基板と、該サブ基板の下面に配設されサブ基板より
も誘電率が小さく且つサブ基板より広いベース基板とを
備えるとともに、前記光半導体素子へ通電するための導
体パターンが前記サブ基板から前記ベース基板へ連続し
て形成されていることを特徴とする。

【0012】また特に、前記サブ基板の上面に設ける光
学素子配設用の溝と、前記サブ基板の外周部に設ける導
体パターン配設用の斜面とが、それぞれ異方性エッチン
グにより形成されていることを特徴とする。

【0013】本発明の光モジュールは、上記いずれかの
光部品実装用基板において、前記サブ基板の上面に光半
導体素子及び該光半導体素子に光結合させる光学素子を
配設するとともに、前記ベース基板に前記光半導体素子
を駆動するための電子部品を前記導体パターンに接続さ
せた状態で配設したことを特徴とする。

【0014】本発明の光部品実装用基板の製造方法は、
誘電率の異なる2枚の基板を接合させた状態で、誘電率
の大きい基板の一部を異方性エッチングにより除去し
て、誘電率の小さいベース基板上に、外周部に導体パタ
ーン配設用の斜面が形成され且つ上面に光学素子配設用
の溝が形成されたサブ基板を配置する工程と、前記ベー
ス基板から前記サブ基板の斜面を経て前記サブ基板の所
定箇所に至る領域に、前記光半導体素子に通電するため
の導体パターンを形成する工程と、を含むことを特徴と
する。

【0015】

【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施形態につい
て模式的に図示した図面に基づき詳細に説明する。

【0016】図1(a)に本発明に係る光部品実装用基
板の平面図を、(b)に(a)のA−A線端面図を示
す。

【0017】本発明の光部品実装用基板は、半導体レー
ザーやフォトダイオード等の光半導体素子及びこれに光
結合させる光ファイバやレンズ等の光学素子を配設する
ためのサブ基板11と、この下面に配設されサブ基板1
1よりも誘電率(誘電損失)が小さく、しかもサブ基板
11より広いベース基板12とを備える。そして、サブ
基板11に光半導体素子に通電するための電気配線16
や薄膜抵抗体17などの導体パターンがサブ基板11か
らベース基板12へに連続して形成されている。

【0018】特に、サブ基板11の上面に設ける光学素
子配設用の溝13と、サブ基板11の外周部に設ける導
体パターン配設用の斜面15とが、共に異方性エッチン
グにより高精度に形成されている。

【0019】具体的には、ミラー指数表記で(100)
の面方位をもつ異方性エッチングが可能な例えば単結晶
シリコン等から成るサブ基板11が、これよりも高周波
特性に優れた(誘電率や誘電損失が小さい)材料(例え
ば、酸化シリコン(SiO2)、アルミナ(Al2O
3)、窒化アルミニウム(AlNx))を用いベース基
板12と接着されている。なお、この接着は接着材を用
いずに熱処理による直接的な接着(ダイレクトボンディ
ング)でもよいし、接着材を用いてもよい。

【0020】また、サブ基板11には光ファイバやレン
ズ等の光学素子を実装するために、アルカリ水溶液によ
る異方性エッチングで形成された(111)面に等価な
面({111}面)とベース基板12の表面とで囲まれ
た断面台形状のV溝13が形成されており、その先端に
は光路を妨げない目的で形成されたV溝の一部を削りと
った段差14が設けられている。

【0021】また、サブ基板11は、これに貼り合わさ
れているベース基板12の表面が露出されるように、同
じく異方性エッチングによりサブ基板11の一部が除去
されており、その境界においては、(111)面の結晶
方位をもつ斜面15が形成されている。この基板表面に
は電極配線が形成されており、特にサブ基板1からベー
ス基板12へ斜面15を介して連続的に形成されてい
る。

【0022】電極配線16には、光半導体素子である発
光素子を実装した際の高速動作時における特性を安定化
させる目的で終端抵抗としての薄膜抵抗体17が形成さ
れており、また光半導体素子を実装するためのはんだ層
18も形成されている。ここで、電極配線16には、下
層/上層で、Ti/Au,Ti/Pt/Au,Ti/P
d/Au,Cr/Au,及びCr/Ni/Auのいずれ
かが使用可能であり、薄膜抵抗体17はNi−Cr合金
やTa2N等が使用可能であり、さらに、はんだ層18
はAu−Snはんだ、Pd−Snはんだが使用可能であ
る。

【0023】かくして、サブ基板11とこれより高周波
特性に優れたベース基板12を貼り合わせ、かつワイヤ
ーボンディングを省略するために、サブ基板11とベー
ス基板12との境界に傾斜した斜面15を有する構造に
することにより、光部品の実装精度が良好でかつ高周波
特性に優れた光部品実装用基板を提供することが可能と
なる。

【0024】図2(a)に本発明に係る光モジュールの
平面図を、(b)に(a)のA−A線端面図を示す。

【0025】本発明の光モジュールは、前述した光部品
実装用基板において、サブ基板11上に光半導体素子及
びこれに光結合させる光学素子を配設し、ベース基板1
2に光半導体素子を駆動するための電子部品を導体パタ
ーンに接続させた状態で配設したことを特徴とする。具
体的には、図1に示したサブ基板11のV溝13には光
学素子であるボールレンズ21が、はんだ層18の上に
は光半導体素子である発光素子22がそれぞれ搭載され
ることで、光結合が高精度に実現されている。また、ベ
ース基板12にはコンデンサー23やコイル24などの
電子部品が搭載されており、光半導体素子22を駆動す
るための電気回路が形成されている。また、発光素子2
2のモニター用の受光素子25が実装された例えばアル
ミナから成るセラミックキャリア26が基板12上に搭
載されている。

【0026】かくして、このような光モジュールの構成
によれば、ワイヤーボンディングでの電気的な損失がな
く、高周波特性に優れた光モジュールの提供を可能とす
る。

【0027】次に、図3に基づいて本発明に係る光部品
実装用基板の作製方法の具体例について説明する。

【0028】本発明では、誘電率の異なる2枚の基板3
1,32を接合させた状態で誘電率の大きい基板31の
一部を異方性エッチングにより除去して、誘電率の小さ
いベース基板32上に、外周部に斜面34が形成され内
部に溝33が形成されたサブ基板31を配置する工程
と、ベース基板32からサブ基板31の斜面34を経て
サブ基板31の所定箇所に至る領域に、光半導体素子に
通電するための導体パターン37,35,36等を形成
する工程と、を含む。

【0029】具体的には、まず、図(a1),(a2)
に示すように、サブ基板であり放熱性に優れた単結晶の
シリコン基板31(厚み0.1〜1.0mm)とベース
基板でありシリコン基板との貼り合わせを好適に実現で
き(シリコン基板31とのダイレクトボンディングの際
の高温に耐え)、異方性エッチングの耐性に優れた石英
基板32(厚み0.3〜1.0mm)をウエハーレベル
で貼り合わせる。

【0030】そして、図(b1),(b2)に示すよう
に、シリコン基板31の表面をKOH水溶液などのアル
カリ水溶液を用いた異方性エッチングにより、シリコン
基板31をエッチング加工することにより、V溝33と
斜面34が形成される。

【0031】このとき貼り合わせたシリコン基板31の
厚みをあらかじめ設定しておくことにより、V溝33の
深さをシリコン基板31の厚みと等しくすることができ
る。石英のKOHのエッチングレートはシリコンに比べ
かなり小さいため、このような構成とすることで、シリ
コン基板31のエッチングは石英基板32の表面でエッ
チングを停止させることができ、V溝33の深さをこの
シリコン基板31の厚みと同じに設計できる。この場
合、V溝33の形成においては幅方向のみを管理するだ
けで良くなるため、幅方向/深さ方向ともに設計値通り
の高精度なV溝33の形成が可能となるという利点があ
る。

【0032】このように、幅/深さともに精度のよいV
溝33を提供することは、光学素子のアセンブリ時の工
程管理において極めて有利である。また、この高さは同
時に石英基板32に搭載されるセラミックキャリアに搭
載されたモニター用の受光素子の高さ精度をも規定す
る。従来のシリコンのエッチングで形成した段差のバラ
ツキや平坦性に比べ、基板厚みのバラツキおよび石英基
板の平坦性を利用できるため、キャリア搭載の精度をよ
り高めることも可能となる利点も持たせることが可能と
なる。

【0033】次に、図(c1),(c2)に示すよう
に、シリコン基板31と石英基板32の表面に薄膜抵抗
体35(抵抗値5〜50Ω)やはんだ膜36(厚み2.
0〜10μm)、電極配線37(厚み0.3〜2.0μ
m)を含む導体パターンを一括で形成し、図(d1),
(d2)に示すように、光路確保用の段差38をシリコ
ン基板31の一辺をダイシングソーなどで形成し、同じ
くダイシングソーでチップに分断することで本発明の光
部品実装用基板が完成する。

【0034】このような作製工程をとることによりシリ
コン基板31上の石英基板32に段差が存在するものの
同時プロセスで形成することが可能となり、かつウエハ
単位にて多数個同時に1度のプロセスで一括作製するこ
とができ、工程が削減できるという利点を有する。

【0035】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の光部品実
装用基板によれば、光半導体素子及び該光半導体素子に
光結合させる光学素子を配設するためのサブ基板と、該
サブ基板の下に配設されサブ基板よりも誘電率が小さく
且つサブ基板より広いベース基板とを備えるとともに、
前記サブ基板に前記光半導体素子へ通電するための導体
パターンが前記サブ基板上及び前記ベース基板上に連続
して形成されているので、サブ基板の利点と高周波特性
を満足しつつ、ワイヤーボンディングによる接続を極力
排除することにより、高周波特性に優れた光部品実装用
基板、及び電気的な損失の小さい優れた光モジュールを
提供することが可能となる。

【0036】さらに、本発明の光部品実装用基板の製造
方法は、誘電率の異なる2枚の基板を接合させた状態で
誘電率の大きい基板の一部を異方性エッチングにより除
去して、誘電率の小さいベース基板上に、外周部に斜面
が形成され内部に溝が形成されたサブ基板を配置する工
程と、前記ベース基板から前記サブ基板の斜面を経て前
記サブ基板の所定箇所に至る領域に、前記光半導体素子
に通電するための導体パターンを形成する工程と、を含
むので、ウエハレベルで光部品実装用基板を一括して作
製することが可能となり、かつ高精度なV溝や段差等を
有する複雑な光部品実装用基板を迅速かつ高精度に提供
することが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図1】(a)は本発明に係る光部品実装用基板の実施
形態を模式的に説明するための平面図であり、(b)は
(a)のA−A線端面図である。

【図2】(a)は本発明に係る光モジュールの実施形態
を模式的に説明するための平面図であり、(b)は
(a)のA−A線端面図である。

【図3】本発明に係る光部品実装用基板の作製方法の実
施形態を模式的に説明するための図であり、(a1)〜
(d1)は平面図、(a2)〜(d2)は(a1)〜
(d1)のA−A線端面図である。

【図4】(a)は従来の光モジュールの実施形態を模式
的に説明するための平面図であり、(b)は(a)のA
−A線端面図である。

【符号の説明】

11、31:サブ基板 12、32:ベース基板 13、33:V溝 14、38:光路確保用段差 15、34:斜面 16、37:電気配線 17、35:薄膜抵抗 18、36:はんだ膜 21:ボールレンズ 22:発光素子 23、24:電子部品 25:モニター用受光素子 26:セラミックキャリア

Claims (4)
Hide Dependent

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光半導体素子及び該光半導体素子に光結
    合させる光学素子を配設するためのサブ基板と、該サブ
    基板の下面に配設されサブ基板よりも誘電率が小さく且
    つサブ基板より広いベース基板とを備えるとともに、前
    記光半導体素子へ通電するための導体パターンが前記サ
    ブ基板から前記ベース基板へ連続して形成されているこ
    とを特徴とする光部品実装用基板。
  2. 【請求項2】 前記サブ基板の上面に設ける光学素子配
    設用の溝と、前記サブ基板の外周部に設ける導体パター
    ン配設用の斜面とが、それぞれ異方性エッチングにより
    形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光部
    品実装用基板。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の光部品実装用
    基板において、前記サブ基板の上面に光半導体素子及び
    該光半導体素子に光結合させる光学素子を配設するとと
    もに、前記ベース基板に前記光半導体素子を駆動するた
    めの電子部品を前記導体パターンに接続させた状態で配
    設したことを特徴とする光モジュール。
  4. 【請求項4】 請求項2に記載の光部品実装用基板の製
    造方法であって、誘電率の異なる2枚の基板を接合させ
    た状態で、誘電率の大きい基板の一部を異方性エッチン
    グにより除去して、誘電率の小さいベース基板上に、外
    周部に導体パターン配設用の斜面が形成され且つ上面に
    光学素子配設用の溝が形成されたサブ基板を配置する工
    程と、前記ベース基板から前記サブ基板の斜面を経て前
    記サブ基板の所定箇所に至る領域に、前記光半導体素子
    に通電するための導体パターンを形成する工程と、を含
    むことを特徴とする光部品実装用基板の製造方法。