新型コロナウイルス感染症には動物もかかる。なかでもゴリラ、チンパンジー、オランウータンなどの類人猿は人間と近縁であり、コロナウイルスに感染しやすいことは驚きではない。
今、心配されているのは、これらの動物が野生で新型コロナウイルスにさらされる可能性だ。2月15日付けで科学誌「People and Nature」に発表された研究は、それが本当にリスクであることを示している。
研究チームは今回、国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種(Endangered)に分類するマウンテンゴリラ(Gorilla beringei beringei)がすむウガンダ、ルワンダ、コンゴ民主共和国の3カ国で、観光客が野生のゴリラにどれだけ近づいているかを知るため、新型コロナウイルス感染症が流行する前に撮影された観光客のゴリラとの自撮り写真を分析した。その結果、ほとんどの人が許可されている以上にゴリラに近づいており、多くの場合でコロナウイルスをはじめとする病原体を感染させられるほど近かった。(参考記事:「動物大図鑑:マウンテンゴリラ」)
「今回わかったのは、規制は常に守られているわけではないということ、そして観光客とゴリラの間の平均距離が過去7年間でどんどん近くなっているということです」と、英オックスフォード・ブルックス大学の講師で、今回の研究の共著者の一人であるマグダレナ・スベンソン氏は言う。
野生生物種の状況をモニタリングしているIUCNは、類人猿観光のためのガイドラインを発表している。その中では、類人猿との距離を7メートル以上保つことや、マスクの着用が推奨されている。ウガンダ、ルワンダ、コンゴ民主共和国の3カ国はいずれも、新型コロナウイルス感染症流行前から7メートルルールを採用していた。コンゴ民主共和国のみ、マスクの着用を義務付けてもいた。
ゴリラ観光は現在、限られた人数で、新型コロナ流行前よりも厳しい安全措置をとりながら再開されている。しかし、今後ルールが強化され、実際に守られるのでなければ、ゴリラが新型コロナウイルスに感染する危険性は高くなると、スベンソン氏は警告する。
「私たちはゴリラ観光を止めたいわけでも、この素晴らしい動物を見に行くのを止めたいわけでもありません。誰にとっても可能な限り安全にしたいと思っているのです」
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