発表日:2021年03月04日
ゲルのやわらかさの秘密:「負のエネルギー弾性」を発見
1.発表者:
吉川 祐紀(東京大学 大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻 博士課程 2年)
作道 直幸(東京大学 大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻 特任助教)
酒井 崇匡(東京大学 大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻 教授)
2.発表のポイント:
◆ゲルのやわらかさを決める物理法則は何か?という非常に基本的な問題について、その鍵となる「負のエネルギー弾性」を世界で初めて発見しました。
◆「ゲルのやわらかさは、熱力学第二法則(エントロピー増大の法則)に基づくエントロピー弾性でおおむね説明できる」という100年近く信じられてきた定説を覆しました。
◆食品や医療としてゲルを活用する際に重要な「やわらかさの温度変化」は、従来の想定よりも数倍大きくなることを実証し、やわらかさを決定する物理法則を明らかにしました。
3.発表概要:
東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻の吉川祐紀大学院生、作道直幸特任助教、酒井崇匡教授らは、ゲルのやわらかさに潜む「負のエネルギー弾性」を発見しました。
ゲルは、ゼリー・豆腐などの食品や、ソフトコンタクトレンズ・止血剤など医療に活用される、ウェットでやわらかい物質です。ゲルから水を蒸発させたものがゴムです。ゲルとゴムのやわらかさは熱力学第二法則(エントロピー増大の法則)に基づくエントロピー弾性でおおむね説明できるというのが、100年近く信じられてきた定説でした。
今回、本研究グループは、この長年の定説がゲルについては間違いであることを発見しました。ゲルは、保持する水に由来する「負のエネルギー弾性」により大幅にやわらかくなっており、やわらかさの温度変化もこれまでの想定より数倍大きいことがわかりました。ゲルのやわらかさを決定する物理法則が解明されたことで、食用や医療用などの新規ゲル材料の開発や、ゲルが利用される産業全般に広い波及効果が期待されます。
本研究成果は、米国物理学会発行の学術雑誌 Physical Review Xに3月5日に掲載されます。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/606057/01_202103041506.pdf