新型コロナウイルスを巡り、無料通信アプリ「LINE(ライン)」を活用して濃厚接触の可能性のある人に通知する県のシステムについて、約9カ月間で通知実績が1件もないことが4日、分かった。飲食店などで感染者の近くにいた人に対し、注意喚起ができるシステムだったが、保健所の業務逼迫(ひっぱく)で手が回らなかったという。
「LINEコロナお知らせシステム」は、飲食店やイベント会場などに提示された専用のQRコードを利用者がスマートフォンで読み込み、訪問日時などを登録。店内や会場内で感染者が出た場合、保健所からの連絡を受けて県が濃厚接触の可能性がある利用者に通知する仕組みで、昨年5月20日から運用を始めた。
これまで県内の飲食店など約9万軒がQRコードを掲示し、今月3日までに約51万7500件の登録があったが、県から通知を出したケースはなかった。保健所から県の担当部署への連絡もなかったという。システムの不具合は確認されていない。
県は「保健所の調査で濃厚接触者は特定できていた」とするほか、昨秋以降の感染拡大期には「保健所の手が回っていなかった」と説明。2021年度も運用は続ける方針で、感染力が強いとされる変異株に対応するためにも、保健所に積極的な活用を案内するという。システムは県が国の交付金を活用し、約230万円かけて開発した。
4日の県議会厚生常任委員会で県が明らかにした。(川口 肇)
2021年 3月 5日 (金)