「ジョングガは僕のヒーローになってくれる?」
パク・ジミンがそういった瞬間から、俺の余生が始まる。
これが自分の人生における最上の瞬間なのだと、幼いながらに確信していた。だから俺は、ずっとジミンのヒーローでいようと決めた。勿論、俺はそんな器じゃない。それでも、彼がそう言ってくれたなら、俺は最後まで彼の味方でいようと決めていた。その気持ちは、ジミンが中学生になり、高校生になり、百五十人以上の人間を殺しても変わらなかった。
咳き込む度に全身が痛む。片目が見えないのがこんなに不安だなんて思わなかった。骨だって何本か折れているに違いない。今の俺じゃ、もうジミンを守ってあげることは出来ない。けれど、それでも俺はジミンを守らなければ。腹の傷から血がすっかり流れ出てしまうまで、俺はそうあらねばならなかった。
俺は目の前の男に向かってどうにか微笑み掛ける。最後の虚勢だ。そうして精一杯取り繕うと、目の前の彼が不快そうに眉を顰めた。当てつけのように俺は続ける。
「そうです。ジミンは百五十人以上の人間を殺しました。それも、自分では手を下さずに。彼は疫病のように人を殺し、罪悪感なんて欠片も覚えなかった、化物です。俺はそんな彼を殺しました」
俺がそう告白すると、目の前の男は大きく顔を歪めた。きっと本音では俺が憎くてたまらないのだろう。とどめを刺そうとしないのは、まだ俺に聞きたいことがあるからだ。とはいえ、俺の意識は半分落ちかけていて、ご期待には沿えそうにない。震える唇で、男が「どうして」と尋ねる。
「俺は、ジミナのヒーローだから」
その答えが気に入らなかったのか、男が俺のことを殴りつけた。俺の意識がまだ一段冷たい暗闇へと落ちていく。
その先にジミンがいるのかは、まだ分からない。
これは俺がいかにして化物を愛するようになったかの物語だ。