50代に糖尿病で亡くなった男が残す痛切な筆録

「落下星の部屋」が20年以上も続いている理由

自分の自堕落ぶりや甘さも含めて包み隠さず伝えることで糖尿病の怖さを伝えたい。そのワンテーマに絞って淡々と更新していたから、その後も病気関連以外のコンテンツを大幅に増やした痕跡はない。

当時、掲示板等で落下星さんと交流していたある男性はこう述懐する。

「落下星さんと知り合ったのは状態が悪くなったあとです。亡くなることも覚悟していたので、自分の悪かったことも躊躇なく語っていたと記憶しています。自分の半生をほかの患者に知らせることで、自分のようにならないようにと言っているようでした。しかし、卑屈になっているのではなく、強い方だなと思っていました」

さらし者になっても誰かの状態の悪化を食い止めたいという自己犠牲的な精神。それでも文章全体からどこかのんきな雰囲気が伝わるのが落下星さんのユニークなところだと思う。

その時々で楽しめることを見つけられる性分

サイト立ち上げの3カ月後、左目から眼底出血した際の日記も“らしさ”がよく出ている。

うーん。いくら脳天気な私でも、そろそろ最悪のシナリオに対して策を考えておかないといけないな。
とはいっても、昔買っておいた「ドキュメント・トーカー」という音声読み上げソフトをインストールして悦にいってるんじゃ、あんまり深刻になっているとはいえないな。(^_^;)
性格異常なのかもしれないけど、そのときどきで楽しめることを見つけられるから落ち込まないですむのかもしれない。(^_^)
しかし、悔いが残るのは買ったばかりのデジカメ。1枚も撮影しないうちに使えなくなってしまった。
いや、やっばり目をなおさなくちゃ。一瞬、ここまで来たらアルコール解禁にしようと思ったがデジカメを使えるようにしなければ……
(落下星の部屋 「左目も眼底出血」)

最終的に左目の失明は免れたが、書いているときは結果を知る由もない。それでも終始この調子を貫いている。

それが表現上だけの強がりではないことは、この数カ月後に仲間と連れだって沖縄旅行に出かけたことからもわかる。旅行先で透析外来を受け付けてくれる病院に予約を入れ、ガラスボートに乗ってきれいな海を眺めたり、琉球ガラスのジョッキに注いだビールで乾杯したりした。オフ会もたびたび企画し、頻繁に遠方に出かけて親交を温めたりもしている。現状を受け入れて「その時々で楽しめることを見つけられる」性分なのは間違いなさそうだ。

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