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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

「ゼロコロナ」の達成は絵空事か 流行地との往来を制限

人の往来を制限 セグメンテーションが必要

 ゼロコロナを達成するために、もう一つ大事なのは「人の往来」です。日本でもゼロコロナがすぐできる地域もあります。例えば島根県は感染報告数も少なく、適切な感染対策で「ゼロ」を比較的容易に達成できるでしょう。

 が、島根と流行地の往復を自由にしていれば、すぐにウイルスが持ち込まれ、話は「振り出しに戻り」ます。よって、流行地と非流行地の往来を制限する「セグメンテーション(分断化)」が必要になります。

 必要な物資の搬入など一部の例外を除き、往来を原則禁止にするか、PCR検査と隔離期間を設けます。沖縄県は渡航時のPCR検査を制度化するそうですが、PCR検査だけではウイルスはすり抜けてしまいます。いわゆる「水際作戦」が必ず失敗しているのはそのためです。イギリスの変異株もPCR検査「だけ」の水際作戦ですり抜けられ、国内に持ち込まれまました。

 ちなみに、広島県が一時、地域内大規模PCR検査を計画していました。この計画の是非をここでは論じませんが、仮にこの作戦がうまくいったとしても、他の地域からウイルス持ち込みが可能であれば、すぐに話は「振り出しに戻って」しまいます。

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/2019-ncov/pcr-202102.html#a3

 往来制限は不便かもしれませんが、ゼロコロナの非流行地が増えれば、その地域内、地域間の往来は可能になります。旅行も自由にでき「経済も回せる」というわけです。

ゼロコロナ 小さな単位からコツコツと

 ゼロコロナを達成した地域では、ソーシャルディスタンスもマスクも不要になります。夜昼問わず外食も宴会もできます。なにより、この対策ではインセンティブが高まります。隣の地域で外食も宴会も自由だったら、自分たちだってまねしたくなるはずです。今みたいに、自粛を強要されて、緊急事態宣言が解除されたあとも不要不急の外出は控えろ、マスクはつけろ、また第四波も来るかもしれん、そうしたらまた緊急事態宣言か?みたいな繰り返しでは、我々はやる気を失ってしまいます。「ハンマー」が振りかざすたびに、どんどん威力を失っているのもそのためです。

 セグメンテーションは、ぼくがシエラレオネでエボラ対策をしていたときにも採用されていた作戦です。シエラレオネには電車は走っていませんで、移動は車なんですけど、地域間の移動は検問で阻止され、ぼくらみたいな専門家だけが往来を許されていました。そうやって一つ一つの地域を「ゼロエボラ」化していったのです。いきなり大きくなくすのは無理なので、小さくコツコツと結果を出していくのですね。

 繰り返します。新型コロナウイルス感染症はインフルエンザとは全く異なる感染症です。インフルのように「自然に減る」ことはなく、そのインパクトもインフルよりはるかに大きなものです。現在の行動制限的コロナ対策で、日本からも世界からもインフルエンザは激減しました。それにもかかわらずコロナは増え続けたのであり、コロナははるかに厄介なのです。

 それでも、新型コロナを媒介するのは基本的に「人」だけです。マスクもテレワークもソーシャルディスタンスも、人から人への感染経路の遮断を目的にしています。ちゃんと遮断すれば感染は減るのであり、原稿執筆日現在(2月24日)で、感染が減っているのもそのためです。

 新型コロナウイルスは土から生えてきたり、渡り鳥が運んできたりはしないので、現在知られている感染対策を地道に丁寧にやっていれば、一地域でのゼロコロナは可能です。そして、前述のように実践もされています。セグメンテーションをすれば、その維持も拡大も可能です。あとは、正しいビジョンと戦略性を持って、「やるか、やらないか」の覚悟の問題なのです。(岩田健太郎 感染症内科医)

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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