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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

「ゼロコロナ」の達成は絵空事か 流行地との往来を制限

ハンマー・アンド・ダンス作戦は破綻

 しかし、現実世界は違っていました。第一波を緊急事態宣言などで乗り切って、去年の5月くらいから新型コロナの報告数は激減しました。しかし、7月頃からの「第二波」ではハンマーは振るわれず、あろうことかそれに逆行するような「Go To」までやってしまい、その後の第三波に突入してしまいました。

 しかも、第一波よりも第二波、第二波よりも第三波のほうが大きな波になってしまいました。第一波では1000人くらいの方が亡くなりましたが、その後の流行ではその何倍もの方がお亡くなりになり、本稿執筆時点では総死亡者は7000人を超えてしまいました。感染から死亡までのタイムラグを考えると、おそらく死者は8000人を超えることでしょう。

 第二波対策が「ぬるく」なってしまったのは、病床を作ったり、PCR検査能力を拡充したりしたので「医療は逼迫(ひっぱく)してない」と政治家たちが楽観したためでした。しかし、新型コロナは感染者が増えれば、確実に死者を増やします。増やした病床も、感染者を増やしたままにしていれば足りなくなります。洗面器を金盥(かなだらい)に変えても、雨漏りそのものを止めなければ、いずれ金盥はいっぱいになり、あふれます。金盥を風呂おけにしても話は同じです。

 ハンマーを振るったり、ダンスをしたりするのは、ハンマーを繰り返すうちに感染がだんだん小さくなる、というインフルエンザ型のイメージによります。残念ながら新型コロナはインフルのように暖かくなれば自然に減ったりはせず、夏でも感染対策をしなければ流行します。

 集団免疫がつくには何年もかかります。ワクチンはどのくらい長期に効果を維持させるかは不明です。新たにできる変異株が、ワクチンや過去の感染でできた免疫を無効にする可能性もあります。「ハンマー・アンド・ダンス作戦は破綻している」。これがぼくらの見解です。

感染を抑え込んだ国々も

 去年の第二波のとき、病床を増やす、PCRを拡充させる「だけ」ではなく、感染を抑え込むことに注力していれば、もっと簡単に感染者を減らせたことでしょう。事実、そのようにして中国、台湾、オーストラリア、ニュージーランドなどは「ゼロコロナ」を達成したのです。

 ときどき外国からウイルスが持ち込まれますが、厳しい感染対策でその小流行は数週間程度で抑え込まれます。輸入ウイルスで延期された全豪オープンテニスが無事に開催できたのも、ゼロコロナ政策と、輸入例への強力な対策(ロックダウン)のおかげでした(大坂なおみ選手、優勝おめでとうございます!)。

https://www.bbc.com/news/world-australia-56035668

 ロックダウンは強烈な感染対策であり、「そんなのしんどくて、やってられないよ」という意見もあります。が、感染者数が少ないときにロックダウンをすればコロナはすぐにいなくなり、ロックダウンは短期的に解除できます。

 ダラダラと何か月も「緊急事態宣言」状態にいるほうがしんどくないですか?

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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