2019年4月に在留資格「特定技能」が創設されました。特定技能には、1号と2号があります。
今回は、「特定技能1号」と「特定技能2号」の違いについて、取得方法なども含めて詳しく解説します。
目次
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- 特定技能は1号と2号の2種類
- そもそも特定技能とは?
- 特定技能はほとんどの場合「1号」を指す
- 特定技能1号の職種はサービス系からブルーカラーまで幅広い
- 特定技能1号と2号の取得方法
- 特定技能1号の取得方法
- 特定技能2号の取得方法:特定技能1号からの移行のみ
- 特定技能1号と2号の違いは6つ
- 1.在留期間の上限の違い
- 2.求められる技能水準の違い
- 3.外国人支援の必要性の有無
- 4.家族帯同の可否
- 5.日本語能力の確認試験があるかどうか
- 6.試験の実施状況の違い
- まとめ
特定技能は1号と2号の2種類
特定技能1号と2号の違いについてご説明する前に、まずは特定技能についておさらいしてみましょう。
そもそも特定技能とは?
特定技能は、深刻化する人手不足をうけて、労働力が特に不足している14の分野において人材を確保することを目的に、2019年4月に創設された在留資格です。
他の就労可能な在留資格との違いは、就労可能な範囲が広いことです。例えば、「技術・人文・国際業務」の在留資格でホテル勤務をしたい場合、大学卒業等さまざまな条件がある上に、単純労働にあたる部分(ベッドメイキングなど)ができず、従事できる業務が限られていました。一方、新しい在留資格「特定技能」では、単純労働をメインに就労することはできないものの、単純労働を含む業務が可能な点が大きな特徴と言えます。
企業にとっては、幅広く仕事を任せることができるため、採用しやすい在留資格といえるでしょう。
特定技能の基本的な情報については、過去の記事でわかりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:新在留資格『特定技能』についてわかりやすく解説。最新動向もチェック!
特定技能はほとんどの場合「1号」を指す
特定技能1号には14種類の職種がありますが、2号は2種類しかありません(2020年12月現在)。更に、2020年9月時点で特定技能2号の外国人はまだ在留していないことからも、「特定技能」とは基本的に「1号」のことを指すと考えてよいでしょう。
特定技能2号を取得するには、2020年12月現在、1号から移行するしか方法がなく、職種も「建設業」と「造船・舶用工業」の2職種に限定されています。
特定技能1号については、すでに試験が国内外問わず実施されていますが、特定技能2号の試験は2021年度から開始される予定です。
特定技能1号の職種はサービス系からブルーカラーまで幅広い
特定技能1号の職種には14種類あり、サービス系の職種からブルーカラーまで幅広く設定されています。
特定技能の14職種について、詳しい情報や各職種の最新情報を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:新在留資格「特定技能」についてわかりやすく解説。最新動向もチェック!
特定技能1号と2号の取得方法
特定技能1号と2号の在留資格の取得方法について、どのような試験を受ければいいのかなど、わかりやすく解説します。
特定技能1号の取得方法
特定技能1号の場合は、特定技能測定試験に合格する方法と、技能実習から移行する方法の2パターンがあります。
特定技能測定試験は、14職種の分野ごとに用意されている技能試験と、日本語能力試験の2つの試験に合格する必要があります。技能実習から移行する場合は試験が免除され、「技能実習2号」を良好に修了していることが条件となります。
試験内容や移行方法については過去の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
関連記事:特定技能の技能試験・日本語試験の合格者ができることとは?試験内容から能力・実態を解説
特定技能2号の取得方法:特定技能1号からの移行のみ
2020年12月現在、特定技能2号の取得は、事実上「1号からの移行」のみに限定されています。まずは特定技能1号を取得してから、技能試験を受けて2号に移行する形となります。
制度的には、特定技能2号評価試験に合格したうえで実務経験要件を満たせば取得できますが、試験は2021年度からのスタートですので、資格取得者が出てくるのはそれ以降になると考えられます。
必要になる実務経験としては、例えば、建設の場合は複数の建設技能者を指導し、班長として実務に従事した経験が必要になります。
特定技能1号と2号の違いは6つ
特定技能1号と2号の違いを表にして比較してみました。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
在留期間 | 1年・6か月・4か月ごとの更新 (通算5年まで) | 3年・1年・6か月ごとの更新 (更新の制限なし) |
技能水準 | 相当程度の知識又は経験を必要とする技能 | 熟練した技能 (各分野の技能試験で確認) |
外国人支援 | 必須。支援計画の策定実施は義務 | 支援計画の策定実施は不要 |
家族の帯同 | 不可 | 条件を満たせば可能 |
日本語能力水準試験の有無 | ある | ない |
試験の実施状況 | 国内外で実施中(2020年12月現在) | 2021年に新設予定 |
内容について、以下詳しく解説していきます。
1.在留期間の上限の違い
特定技能1号の場合は通算5年まで、特定技能2号の場合は更新する限り上限なく在留できます。要件を満たすことで、永住権を取得できるルートも存在します。
2.求められる技能水準の違い
特定技能1号よりも2号の方が高いレベルの技能水準が求められます。例えば建設分野では、以下のような違いがあります。
- 1号……「配管(指導者の指示・監督を受けながら配管加工・組立て等の作業に従事)」
- 2号……「配管(複数の建設技能者を指導しながら、配管加工・組立て等の作業に従事し、工程を管理)」
同じ「配管」の分野であっても、特定技能2号では、他の建設技能者を指導したり、工程を管理するなどの指導的な経験が求められます。
3.外国人支援の必要性の有無
特定技能1号では、外国人支援が必須です。過去2年間外国人社員が在籍していない場合は「登録支援機関」への委託が必須です。また、過去2年間に外国人社員が在籍していたとしても、多くの中小企業では人材面、費用面などの理由で自社による支援が難しいことから、「登録支援機関」への委託が必要になります。一方、特定技能2号では、支援計画の策定および実施は不要です。
登録支援機関についての概要や、どのような場合に委託する必要があるのかについて、詳しくは過去の記事をご覧ください。
―登録支援機関の記事のリンク挿入
4.家族帯同の可否
特定技能1号については、基本的に家族帯同が認められていません。一方、特定技能2号については、配偶者と子であれば要件を満たすことで本国から呼び寄せることが可能です。その場合、配偶者と子については在留資格が付与され、日本で生活することができます。
5.日本語能力の確認試験があるかどうか
特定技能1号では、技能試験と併せて日本語能力を確認するための試験が設けられていますが、特定技能2号は技能試験のみであり、日本語試験はありません。
6.試験の実施状況の違い
特定技能1号の試験は、職種によっても実施頻度が異なりますが、2020年12月現在、国内外で定期的に実施されています。一方、特定技能2号の試験は、上述したように2021年度から実施される予定なのでまだ情報が少なく、現時点で試験内容や申し込み方法などの細かい情報は公表されていません。
現在実施中の特定技能1号の試験について、詳しい情報は過去の記事をご覧ください。
関連記事:【2020年度】特定技能評価試験 実施状況・スケジュール・申し込み先紹介(日本国内・海外)
まとめ
今回は、特定技能1号と2号の違いについて解説しました。
特定技能1号は職種が多く、国内外で定期的に試験が実施されている分野もあり、受け入れも少しずつ進んでいます。一方、特定技能2号は2020年12月現在、試験は未実施で事実上1号からの移行しか取得ルートがありません。加えて、職種も建設と造船・舶用工業のみです。
このように2号についてはまだまだ限定的ですが、そもそも特定技能自体が2019年からスタートした在留資格です。これから受け入れが進んでいくはずですので、ぜひ動向を確認していていただければと思います。
また、特定技能1号の在留期間上限である「5年」よりも長く働いてもらいたい場合は、特定技能1号から特定技能2号へ移行することを見据えた採用・人材育成を行うということも検討してみてください。