特別プログラム 血管
シンポジウム 血管 2 ERで活かす血管エコー
(S462)
当院での救急エコーにおける血管エコーの現状
A role of vascular ultrasonography for emergency
林 愛子, 住ノ江 功夫, 河谷 浩, 玉置 万智子, 綿貫 裕
Aiko HAYASHI, Isao SUMINOE, Hiroshi KOUDANI, Machiko TAMAOKI, Yutaka WATANUKI
姫路赤十字病院検査技術部
Department of Clinical Laboratory, Japanese Red Cross Society Himeji Hospital
キーワード :
【はじめに】
血管エコーだけでなくERにおいてエコー検査は必要不可欠な検査ツールとなっている.しかし,それが活用される状況は施設間で大きな差があるのが現状である.今回は地方都市の基幹病院である当院の現状を示し,今後の課題についてご提示したい.
【結果・考察】
当院は,兵庫県西部に位置する姫路市内に総ベット数525床を有する基幹病院である.救急部は24時間365日の体制で主に2次救急の役割を果たしており,加えて2年前より循環器内科,心臓血管外科,脳神経外科からなる脳・心臓血管センターを開設し24時間365日体制で診療を行っている.そのような中で超音波部門は臨床検査技師8名で構成されており,多岐にわたる領域の超音波検査を外来,入院問わず受けている.
さて本題であるERにおける血管エコーの当院での現状であるが,まず検査はERでは行っていない.ほぼ検査室で行っている.患者はもちろんストレッチャー等での移動であるが,その状態で検査可能なスペースは確保している.血管領域での検査の依頼内容は,ほとんどが下肢静脈エコーで残りが下肢動脈エコー,頚部血管エコーである.下肢静脈エコーは深部静脈血栓症について,下肢動脈エコーは急性閉塞についての検索依頼である.ERでの検査は本来ならポイントを絞ってエコー検査が必要とされるが,二次救急であることや検査室での検査になるために比較的詳細観察も可能である.しかしながら急性の大血管疾患においては,現状のエコー室ではERへのエコー技師の派遣や常駐は困難であり,臨床側もそのような疾患についてはCT検査を優先させているのが現状である.加えて時間外では血管エコーだけでなくその他の領域のエコー検査についても対応が困難である.
さて,先に述べたように当院のER依頼の血管エコーは圧倒的に下肢静脈エコーが占めているため,当院の新人エコー担当技師の教育は仮に腹部,心臓などをまず領域を割り当てられたとしてもそれと並行して下肢静脈エコーのトレーニングを行っている.まずは外来の患者さんから担当し,ダブルチェックをしながら技術の向上を図っている.そして一人である一定程度検査可能と判断されたら,当院の整形外科病棟で行っている術後のリハビリ前に深部静脈血栓症除外のためのベットサイドでのエコー検査に進む.ベット上で臥床し体動が難しい患者さんのエコー検査を行うことで,描出困難例に対しても臨機応変に検査できるようにするためのトレーニングともなっている.
では医師によるERでの血管エコーの現状であるが,ほとんど行われていないのが当院の現状である.専門医がいないことに加えて,研修医などに血管エコー検査の指導育成が確立されていないこと,他の画像検査に特に就業時間外はまず頼っていることなどがある.背景にはエコー室側が他の領域も含めて全面的にエコー検査の依頼を就業時間内はほぼ無条件で受けている為,自身で検査をして診断するという風潮にないこともひとつと考えられる.
最後にERにおいて血管エコーを常態化させるためには医師側,エコー技師側それぞれにおいて課題が存在する.ただ,当院の救急の現状からすれば医師側の方にエコー検査について指導教育する体制を整えることが最優先と思われる.