子どもの頃、テレビの特撮番組を見て、気になって仕方がなかったのは「あんなに大きな怪獣やヒーローが都会で格闘したら、ビルにいる人や道を歩いている人はどうなるんだ!?」という素朴な疑問である。
筆者は鹿児島県の種子島で生まれ育った。わが町に怪獣がやってくる心配はなさそうだったが、テレビのなかでは毎週のように東京や大阪などの大都市に怪獣が現れ、ヒーローと格闘していたからだ。
PlayStation®4で発売されるSFサバイバル・アクションアドベンチャーゲーム『巨影都市』は、筆者のそんな心配をリアルに描いてくれたゲームだ。巨大な怪獣たちが出現すると、ビルは崩れ、火の手は上がる。人々は逃げ惑うが、巨大な存在たちは人間のことなど意にも介さない。
ああ、オソロシイ! 子どもの頃に想像したとおり、いや、それ以上の恐怖感に満ち満ちているじゃないか、このゲーム!
なかでも怖いのが、超音波怪鳥ギャオスだ。この怪獣は人間に関心を示さないのではなく、こっちに気づいたら、まっすぐ一直線に向かってくる! うえーっ、メチャクチャ怖い! オレになんか関心を持たず、とっとと怪獣同士、戦ってくれ!
しかし映画のなかでも、確かにギャオスはそういう怪獣であった。
うーむ、仕方がない。現実にギャオスが現れちゃったらどうすればいいのか、怖いけど具体的に考えてみよう。
ギャオスに狙われたら、逃げられるのだろうか? それを考えるために、そもそもギャオスがどんな怪獣だったかを振り返ってみよう。
映画『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年)に登場したギャオスは、全長85m、体重75t。両翼を広げると185mだという。デカい。世界最大の旅客機・エアバスA380の翼幅が79.8mだから、ギャオスの翼開長はその2倍以上ある!
何よりの脅威はそのスピードで、飛行速度は実にマッハ4.2。
これは速い!あまりにも速すぎる。ライフル弾の初速でさえ、秒速1000m=マッハ3なのに。つまりギャオスの襲撃とは、超巨大なライフル弾で狙われるようなものなのだ。むえ~っ。
怖がっていても、問題は解決しない。そこで必死にプラス要素を探せば、ギャオスの巨大さが希望にならないだろうか。あれだけ大きいと、遠くにいるうちから姿が見えるはず。
だったら、飛んでくるあいだに手の打ちようがあるのでは……!?
翼開長185mのギャオスが、100m離れたハシブトガラス(都会でよく見られるカラス。翼開長1m)と同じ大きさに見えるのは、この巨大怪鳥が18.5㎞離れているとき。マッハ4.2という高速とはいえ、この距離を飛んでくるには13秒かかる。
よし、時間は充分にある。遠くにギャオスの姿が見えたら、すぐに行動を起こそう。その巨体では入ってこられないビルなどに逃げ込むとか!
……と、ここまで書いて気がついた。
『巨影都市』の舞台はいつも夜だ! それだと、18.5㎞先なんてとても見えないから、この作戦は根底からムリ。わーっ、どうしましょーっ。
視点を変えて、ギャオスの側から見たらどうなるだろう? つまり、ギャオスにとって、人間を捕獲することは簡単なのか。
たとえば実在するハヤブサは、時速400㎞近いスピードで急降下し、飛んでいるスズメやハトに襲いかかる。ギャオスが人間を襲う方法も、これによく似ているから、狩りの成功確率も同じくらいではないだろうか。
そこで調べてみると、ハヤブサの狩りも一撃必中ではなく、10回チャレンジして、うまく行くのは2、3回だという! おお、ハヤブサをもってしても、動く獲物を捕らえるのは簡単ではないのだ。
するとギャオスが迫ったら、とにかく動いたほうがいいことになる。
ゲームの人々は、身を伏せたり、突っ立ってギャオスが迫るのを見ていたりしているが、これはいちばんマズいと思う。ゲーム内の皆さん! ギャオスがやってきたら、すぐにダッシュしたほうがいいですぞ!
逃げるべき方向は、飛んで来るギャオスに対して垂直に。その先にビルでもあったら、一目散に飛び込もう!
だが、ギャオスの速度はマッハ4.2。この作戦はどれほどの効果があるのだろう。
希望が持てるのは、ギャオスも、ある程度の距離からでないと、人間を発見できない可能性があることだ。
たとえば、視力1.0の人なら、1m離れたクロヤマアリ(日本でよく見られるアリ。体長4~6㎜)がギリギリで見えるだろう。これに対して、ハヤブサの視力は3.0ほどといわれる。ギャオスの視力がハヤブサと同じだとすれば、身長170㎝の人間を発見できるのは、1000m以内の距離からということになる。
その場合、われわれ人間は逃げ切れるのか?
空を悠然と飛ぶギャオスが、1000m先に人間を発見したとしよう。
ギャオスはマッハ4.2で、1000m先の人間に急降下!
人間は猛ダッシュで逃げようとするが、ギャオスがやってくるまでの時間は、0.71秒!
えっ、0.71秒!? いくらなんでも、そんなにすぐ!?
そんなにすぐなのである。0.71秒とは、全盛期のウサイン・ボルトでさえ7.5mしか逃げられない時間。そのくらいの距離を移動したところで、体長85mのギャオスは足をヒョイと伸ばして捕まえてしまうだろう。はい、食われました~。
結論。屋外にいるときにギャオスに狙われたら、打つ手はない。
ギャオスが飛び交う日は、外出は控えましょう。本当にギャオスが現れたら、たぶんネットやテレビでも「今日のギャオス予報」という情報が流されると思うので、それを細かくチェック。間違っても「少し様子を見にいこう」などと思わないこと。要するに、対処の方法は台風と同じです。【了】