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YouTube チャンネル「コバショー【CASTDICE塾長】」は 20 日、
と題した9分8秒間の動画を公開しました(〔※伏字〕はカナガクによります。以下同じ)。
動画の2分 36 秒付近で「教育百貨店」の平野夏紀さん( @hirano_natsuki)が、1999 年6月 30 日に発表された「お詫び」(謝罪広告)を紹介しています。
ここではその「お詫び」を文字起こしした上で、当時の週刊誌報道と「お詫び」とを照らし合わせます。
「お詫び」文字起こし
※引用文中の強調はカナガクによります。また、〔きっこう括弧〕内はカナガクによる注です。
お詫び
過去に作成したチラシの内容・表現等に、下記の様な誤り〔※誤記?〕がございましたので、ここに訂正してお詫び申し上げます。
(1) 当〔※伏字〕の公立高校合格実績において平成9年度時点〔※ 1997 年度時点〕では、「トップ校」として公立高校の学区トップ校、外語短大付属高校〔※現・横浜国際高校〕、神奈川総合高校を合わせて 311 名として掲載しました。しかし実際には公立トップ校が 264 名、上位国私立高校が 34 名でした〔※ 264+34=298〕。従って、「公立トップ校 311 名」という記載は誤り〔※誤記?〕です。訂正してお詫び致します。この上位国私立高校は東京学芸大附属、開成、慶應女子、慶應義塾、慶應義塾湘南藤沢、早稲田大学高等学院、海城、青山学院高等部、日本女子大附属、東洋英和女学院、桐蔭学園理数科です。
また、一部チラシに「合格実績には掲載拒否生、テスト生、講習生は含まない」との記載がありますが、本人・保護者の許可を得た時に限り、講習生をカウントしました。誤り〔※誤記? 過誤?〕を認め、今後改めます。
(2) 当〔※伏字〕の公立高校合格実績において平成8年度時点〔※ 1996 年度時点〕では、「トップ校」として公立高校の学区トップ校、外語短大付属高校、神奈川総合高校を合わせて 240 名と掲載しました。しかし実際には公立トップ校が 179 名、上位国私立高校が 57 名でした〔※ 179+57=236〕。従って「公立トップ校 240 名」という記載は誤り〔※誤記?〕です。訂正してお詫び致します。この上位国私立高校は慶應義塾、日本女子大附属、浅野、桐蔭学園、法政大学第二、明治学院、国学院、明大中野八王子、創価、法政大学女子、調布、同志社国際です。
(3) 一部校舎の独自に作成したチラシにおいて、「97 年度高校合格実績」として「湘南(への合格実績)学区2位」「柏陽(への合格実績)学区2位」との記載がありましたが、弊社の調査、認識が不十分であり誤り〔※誤認・誤記?〕でした。大変申し訳ございませんでした。
(4) 過去のチラシにおいて、社員の学歴の記載に一部誤り〔※誤記?〕がありました。今後学歴等をチラシ等に記載する場合は、事実に則って行います。
(5) 「準トップ校」として、平成 10 年度は学区2番手校としました。本年度〔※ 1999(平成 11)年度〕は学区2番手校、3番手校および大船高校としました。本年度の合格実績は裏面をご覧ください。
(6) 過去、大学受験科において、特待生の勧誘および合格者表示について、行きすぎた行為があった点について反省、謝罪致します。同様の行為は今後行いません。
(7) 過去、一部校舎が独自に作成したチラシ等で、他塾を批判攻撃した事実について反省、謝罪致します。今後はこのような行為は眩に慎みます。
地域のみなさま、及び同業各社様には、ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。
平成 11 年6月 30 日〔代表名による署名部分は省略〕
注釈
公立高校の学区トップ校、外語短大付属高校、神奈川総合高校
公立高校の学区トップ校、外語短大付属高校、神奈川総合高校への合格者数の水増しが起こった原因について、当該学習塾は
公立トップ校の合格実績は、誤って私立トップ校の合格者数を足したものを載せてしまいました
としています(『週刊朝日』1999,153 ページ)。
しかし、上記「お詫び」中の「公立トップ校」への合格者数と「上位国私立高校」への合格者数との和が依然として当初発表に届いていません(1996 年、1997 年ともに)。『週刊朝日』の取材に対して用いられた「私立トップ校」と、「お詫び」中での「上位国私立高校」とが異なるものを指しているのだと考えられます。
「お詫び」と『週刊朝日』との両方の記載を成立させるパターンは、
「公立トップ校」+「上位国私立高校」<「公立トップ校」+「私立トップ校」
という関係から、「上位国私立高校」への合格者数が「私立トップ校」への合格者数よりも少ないパターンです。
当該学習塾においては「上位」の方が「トップ」よりも狭き門であることがわかります(国立が抜ける分なおさら「上位私立」が限られます(内訳は「お詫び」中に掲載))。
「上位国私立高校」の内訳が 1996 年と 1997 年とで異なっていることにも注意が必要でしょう(後述)。
講習生は含まない
合格実績に講習生を含まないと「一部チラシ」に記載していたにもかかわらず、実際の合格実績にその人数を含めていたということは、当該学習塾の合格実績カウントルールの信頼性を傷つけました。
このくだりでの「誤りを認め」というのは、「一部チラシ」の誤った記載(誤記)を認め、ということでしょうか。しかしそうすると「今後改めます」とやや齟齬をきたすようにも思われます。「誤り」が「誤記」(事実でないことを事実だとした表記)の意味で使われているのか、「過誤」(「お詫び」し改めるべき悪い行い)の意味で使われているのかが分かりづらい部分です。
社員の学歴
過去のチラシにおいて、社員の学歴の記載に一部誤りがありました。今後学歴等をチラシ等に記載する場合は、事実に則って行います
という「お詫び」に関し、この1文目は「社員の学歴の記載に一部誤り」があったというものです。誤り(誤記)の有無は正確性の問題であり、事後対応として望まれるものは誤り(誤記)の再発防止です。
一方、その2文目は「今後学歴等をチラシ等に記載する場合は、事実に則って行います」というものです。「事実に則って行います」という事後対応の宣言は、まるで過誤(「お詫び」し改めるべき悪い行い)を問題としているようで、1文目と噛み合わないように感じられます。
準トップ校
1998 年から 1999 年にかけて「準トップ校」というカテゴリーの範囲が変えられていました。この部分には特に「お詫び」の言葉はありません。同様のことは 1996 年から 1997 年にかけての「上位国私立高校」についても行われていました。
全国学習塾協会の「自主基準実施細則」が「第2条2の六②ウ」で「学校群或いはグループ分けによる累計或いは積算表示」を避けるべきだとしているのは、このようにその年々によって学校群・グループの中身が変えられることを危惧してのことでしょう。
※当該学習塾は協会の正会員ではありません。
全国学習塾協会「自主基準実施細則」
ウ 合格実籍の人数表示は、学校別に表示するものとする
また、消費者である保護者には具体的な情報が必要であるということから、学校群或いはグループ分けで表示したり〔中略〕の表示も認められないものとする
特に、小学校・中学校・高等学校の学校群或いはグループ分けによる累計或いは積算表示は、学習塾の独断で行われる場合、消費者に錯誤を招く恐れが多く、避けるべきものとする
行き過ぎた行為
「大学受験科において、特待生の勧誘および合格者表示について、行きすぎた行為があった」という部分について、「お詫び」では詳細が書かれていません。
『週刊朝日』1999,153 ページが伝えた顛末は、当該学習塾は 1997 年度大学入試の際、受験シーズン直前に有名進学校の3年生にダイレクトメールを送付。東大、京大などの難関大学に合格したら 10 万円の「奨学金」を支給するという「特待生の勧誘」を実施。この結果、東大合格3人・京大合格1人といった合格実績が出て、合格者の顔写真と作文とが載ったチラシが配布されたものの、東大・京大合格4人のうち3人が「特待生の勧誘」に応じた生徒だった――というものでした。
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参考文献
- コバショー【CASTDICE塾長】,「【塾の〔※伏字〕】20年前にも「あの塾」が〔※伏字〕?」,https://www.youtube.com/watch?v=BkLn8ESKr2s,2021 年2月 20 日.
- 稲垣えみ子,「神奈川 生徒獲得競争で勇み足“合格水増し”塾のお詫び」『週刊朝日』1999 年7月 16 日号 153 ページ.