総合スーパー最大手のイオンが手がける葬儀会社紹介事業をめぐって、全国の仏教団体でつくる全日本仏教会(全仏)が反発していた問題で、イオンはついに全仏の主張を一部受け入れ、ホームページからお布施の目安を削除した。

 イオンは今年5月から、「お坊さん紹介サービス」をスタート。お布施の金額に関する顧客の悩みが多かったことから、お布施の目安を「読経一式+普通戒名=25万円」「直葬+普通戒名=10万円」などとホームページに表示した。

拡大画像表示イオンが提携葬儀会社向けに作成した「寺院(司式者)依頼書」。お布施の金額を僧侶に事前連絡するための欄があり、僧侶よりも葬儀会社のほうが力を持ち始めている実態がうかがえる

 これに対し全仏は、主に二つの点で猛反発。まず、サービス開始に当たりイオンは「(仏教)8宗派の総本山から許可を得ている」としていたが、実際は8宗派で修行をして僧籍を持っている僧侶を紹介するだけのことだった。

 そのため多くの宗派が、「許可など与えていない」と抗議し、イオンはすぐさま「不適切な表現」だったと詫びた。

 もう一つが「お布施の目安」の問題。全仏は、戒名を授ける意味や作法は各宗派独自の伝統があるうえ、お布施はあくまでも寄付であり、金額を表示するのは適切でないとしていた。

 イオンもさすがに仏教界との全面戦争は避けたいとの思いがあった模様で、9月10日までにホームページから目安を削除。現在は、多数の寺院で取りまとめられた目安を、コールセンターのみで知らせるサービスに変更したという。

 また、サービスの名称も「お坊さん紹介」から「寺院の紹介」へと変更。寺に所属しているしっかりした僧侶を紹介することを前面に打ち出した。

 とりあえず両者の対立は、イオンが矛を収めたかたちだが、課題は依然として残ったままだ。

 ある仏教関係者は、イオンが「寺院からもお客様からも紹介手数料をいただいていない」と表明していることについて疑問視する。

「いくらイオンがもらっていなくても、イオンが紹介した葬儀会社が、僧侶から紹介手数料をもらっているケースが少なからずあるはず」とし、その手数料は「お布施から回されており、顧客はお布施が本来の目的以外に使われていることに納得しないのでは」と指摘する。

 一方で、全仏にとっても一件落着とは言いがたい。今回、イオンは全仏に対し、「今後もお布施の目安を明示する葬儀会社が出てくる可能性があるが、全仏はどう対処するのか」との疑問を投げかけた。

 そもそも根底に、仏教団体が葬儀、お布施の意義や意味を伝えるのを怠ったことで仏教離れが進み、イオンのような事業会社が進出する土壌をつくってきたという背景もある。

「今回は全仏の要求が通った。しかしイオンと同様にお布施の目安を表示する動きは止まらないだろう」と仏教関係者は語る。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)

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