高橋 実際、理財局時代に私は『長期信用銀行はいずれなくなります』と理財局の幹部に言いました。幹部は目を白黒させていましたがね。
でも、いま歴史を振り返れば長銀も日債銀も潰れたし、興銀も合併してみずほフィナンシャルグループになって、長期信用銀行をやめた。やはり無理だったんですよ。大蔵省は興銀にだけは政府保証債の主幹事で圧倒的な独占的地位を与えていたから、少し長く生き延びられたけれど、長銀と日債銀はあっという間に潰れました。
小野 僕は1989年に社会に出ましたが、その時は興銀や長銀はトップクラスの人気でした。普通の銀行やメーカーに就職する連中とは違うというプライドを持っていましたね。
高橋 長信銀に関わる話で私が大蔵省の中で、褒められた話があるんです。大蔵省は財政投融資の資金でずっと長信銀が出している金融債を買っていたんです。ただ、私が理財局にいる時、この金融債を投資先から外したんです。
あのまま金融債に投資していたら長銀と日債銀が破綻した時に、政府は大きな損失を抱えることになりました。そうなっていたら、大蔵省は相当格好悪かったと思いますよ。
小野 考えてみると社債のようなものを銀行が出して企業に融資をするならば、企業が直接社債を出して資金調達すれば良いという話になりますよね。
高橋 その通りです。金融機関というのは、企業と市場や預金者の間に入って儲けるのが基本です。でも、これは市場化が進むと基本的には儲からなくなりますよ。ビジネスとして成立しなくなる。
小野 インターネットで情報が公開されて、情報の非対称性がなくなり、市場の高度化が進めばどんどんビジネスが細っていきますね。
高橋 そうです。だから、間に入って鞘を抜いて儲ける仲介ビジネスは、いずれできなくなりますよ。これは金融に限ったことではありません、これは、今日のキーワードですね。