国民の税金で救済された反省から、りそなは「銀行の常識は世間の非常識」を合言葉にさまざまな改革を断行。窓口で顧客が「待たない」「(伝票を)書かない」「(印鑑を)押さない」を実現するための改革や、平日の午後5時まで営業、休日営業などを実現してきた。

 しかし、りそなの良さが特に若年層に伝わっていないという問題意識があった。そこで、公的資金完済後を見据えた攻めへのマインドチェンジと、「改革の継続を意味する『りそなイズム』の承継と深化を社内外に発信する」(東)必要があった。

 東の意向を受けて、ワーキンググループ(WG)が発足。個人顧客との接点が深い部門の20~30代の若手を中心に、部長クラスを加えた約30人のチームが結成された。

 ところが、方向性が定まってきたと言われてWG事務局の説明を聞いた東は、目が点になった。「戦略の話ではなく、突然りそにゃが出てきた(苦笑)」からだ。面食らった東はそのデザインを見てさらに戸惑う。「誰でも思うはずだが、なぜかわいくないのか」。

 ただ、理由を聞いて腹に落ちた。りそにゃはりそなのマスコットでも社員でもなく、客観的に世の中を見つめて顧客目線で「銀行の常識」に物申す。それに呼応してりそなが改革に取り組んでいくというコンセプトだったからだ。

 目つきが悪いとも言われるが、一緒に定めたスローガン「銀行の常識を変えよう。」を、その目つきは「体現していた」(東)。

 ところが、りそにゃはグループ首脳陣が重要案件を話し合う経営会議の場に持ち込まれ、重鎮たちから猛反発を食らう。事務局がWGに会議の結果を報告した際には白旗を揚げたほどだった。

 それでも、「若手の意見を通さないなんて、りそならしくない。怯むな」というメンバーからの叱咤激励もあってWG全体が再奮起。経営会議で足りないと指摘があった、社員と顧客の声を聞くためのアンケートをすぐさま実施した。

 反応は真っ二つに割れた。社員は「昭和入社組の反応がまったく駄目」(WG事務局)で、「かわいくない」「ふさわしくない」という批判が多かった。一方、若手や女性には社内外で好評だった。

 議論は紛糾。最終的には「全員納得することはあり得ない」と、東が社長預かり案件とし、GOサインを出した。