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007スペクター ネタバレ

 いやー、今日まで松の内かー。
 私は今日から仕事はじめでしたよ。
 数年ぶりに正月三日休みで、年末からの短期間で映画四本立て続けに観たなあ。
 クリードを始め、スヌーピー観て、スター・ウォーズ観て、スペクター観て。
 スペクター観た!
 という訳で、映画を観たら始まるこのコーナー。太平天国系師父が陰陽思想の視点でネタバレ全開の映画感想文を書いてく「シネマ・ハッスル」!!
 はい、スペクター、御存じ、ダニエル・クレイグ版の007の第四作。
 ダニエル・クレイグはこれまでのボンドとは全く違うタイプの役者さんで、それに合わせて初主演の「カジノ・ロワイヤル」はリヴート作品で、オープニングでテストにパスして007を襲名するところからシリーズが始まる。
 それに合わせて映画そのものもまったく違う物となり、秘密兵器も悪の秘密結社も登場しない、かつてない真面目でハードなボンド映画となった。
 この路線は「慰めの報酬」「スカイ・フォール」と続いた。
 しかも、物語は前作続いていて、途中乗車が非常に難しいという強烈に強気な姿勢だった。
 カジノ・ロワイヤルでは、ボンドは本気で生涯の恋人と出会い、それを失うことで冷酷な殺人マシーンに生まれ変わる。
 慰めの報酬では、カジノ・ロワイヤルの最後のシーンの直後から映画が始まり、愛した女性の死の原因となった犯罪者MRホワイトを護送している。
 しかし、MI6まで届けた直後、内部に潜伏していた裏切り者の手によってMRホワイトは逃走。
 長年にわたって務めていた職員の中にも裏切り者がいたことや、それらが正体を晒してまで逃がしたMRホワイトの存在の大きさに慄然とするMI6。
「クァンタム」と呼ばれる巨大な敵の影を追いかけていったうちに、ボリビアで行われていた陰謀にも、その組織が資金投資をしていたことが判明。いきがけの駄賃でボンドはそこの陰謀を砕くのだった。
 と、いう訳で、二作目では宿敵のMRホワイトは逃がしっぱなし。
 三作目「スカイ・フォール」では、どうも路線変更があったのか、それともスパンの視点を変えただけなのか、MRホワイトとクアンタムとは関係ない通常業務をしているボンドが描かれる。
 クァンタムとは関係なく、単純に裏切った元MIのエージェントとの内輪もめが描かれる。
 そして今回の「スペクター」では、実はその裏切って復讐に出てきたエージェントも、クアンタムの資金協力があったことがわかる。
 その組織を追って、ボンドは因縁のMRホワイトを再度追撃。
 しかし、とうとう捉えた彼はすでに組織によって失敗の責任を取らされて毒を盛られ、死を待つだけの状態になっていた。
 もはや組織の内部には居ないホワイトとボンドは取引をし、彼の娘を保護する代わりに娘が組織の場所を案内するという展開に……って、ちっとも守ってないじゃんオヤジ! 完全に巻き込んでるよね?
 もちろん巻き込みで、二人してその謎の組織「スペクター」の核心に迫ってゆくのだけど、このスペクターがものすごくて、ホントにあのスペクターなのね。
 これまでにやってきたリアル、ハード、地味、難解路線はまったくダダ崩しにして、コントみたいな古典的な悪の組織を真面目にやってる。
 要するに、オースティン・パワーズのDRイーヴルですよ。顔は陰になっててちゃんと猫も飼ってる。そのボスの前で部下たちが「アフリカでのエイズへの偽薬の売買によって被害総額は○○億ドルに上ります」とかやってるんだよ。もうアホカーと思ったさ。
 このアホどもが、MIに二重スパイを送り込み、ボンドの彼女を殺して、世界各地でクーデターを画策したりしてたんだよ。
 台無しだよ。
 もうこっから先はやりたい放題。ボンドとホワイトの娘が電車に乗ってスペクターのアジトに向かっていると(いや、マジでなんだ。ヘリとかジープじゃなくて電車で行くんだよ)、ご飯を食べてる時にスペクターの刺客の大男が後ろから格闘戦を仕掛けてくる。
 ちなみにこいつ、スペクターの幹部。失敗した前の幹部を格闘戦で倒して新しい幹部になった。なにお前ら、喧嘩強い順で偉いの?
 タイマン、ステゴロで殴り合いを挑んできた刺客を、苦戦の果てにボンドは倒すのだけど、当然この段階で行動はバレバレな訳で、何の工夫も無く列車を降りたところでスペクターに確保されてしまう。
 ここで、唐突にスペクターのボスが実は過去に二か月くらいボンドの義理の兄だったことがわかる。父親がボンドばかり可愛がるからぐれてしまったのだそうだ。もういろいろと中学のヤンキーみたいな話だ。
 歯医者さんのような拷問マシーンにかけられてしまうボンドだけど、これまでなるべく封印していた秘密兵器の小型爆弾を足元にぶつけられてスペクターのボスを吹っ飛ばして拷問マシーンから脱出。
 まったく戦力にならない娘を守りながら、巨大な敵のアジトの中で武器を現地調達しながら、どれだけ離れたところにいる敵も一発で射殺しつつ逃走。
 その直後、巨大な秘密基地がなぜかなぞの大爆発。これがこれまで映画で見たこともないくらいのものすごい火薬量のものすごい大爆発なんだけど、なんでなのかはわからない。
 イギリスにもどったボンドは、MI6にもぐりこんでいる裏切り者の抹殺に出るが、どうも先まわって連絡があったらしく逆に待ち伏せ攻撃にあう。
 それでもそいつらを倒しながら、乗っ取られたMI6の本部に向かうのはいいんだけど、ロンドンの真ん中で堂々銃撃戦とかどうなってんだよ。それでも法治国家のつもりかよ。
 さらに、敵地の中では死んだはずのボンドの兄がなぜか生きて普通に出てくる。その顔の右半分にはあの爆発で出来た恐ろしい生傷が……って、足元爆破されたのに顔の傷以外は元気いっぱいピンピンして出てきます。
 こういうね、敵も味方も行動の意図が分からない上に登場人物が理由なく不死身な映画ってのは例外なくクズ(EX:るろうに剣心、SP)ってのは前から何度も言ってるけど、さらに本格的にクズ映画の証のアレをやってくれてしまう。
 それは「ホールドアップされたヤツがなんの工夫も無く力技で抵抗してその状況を逃れてしまう」で、ボンドの上司のMが敵の幹部に銃口を突きつけて逮捕しようとするんだけど、それに対して敵が何の工夫も無く正面から両手で銃に掴みかかってくるのね。それでそのまま銃をお互い両手で握りあってもみ合いになっちゃうの。
 引鉄引けよ! 
 お前ら素人以下かよ!
 で、その二十秒後くらいに銃が天井に向かって暴発して、その拍子に敵は足を滑らせて窓からおっこって死んじゃうのね。
 なにそれ? なんのファイナル・ディスティネーション? いまのもみあい必要だった?
 この、クズ映画のテンプレートのパターンを見事になぞってるのは、なんか決まりがあるの? クズはこれやらないといけないっていうルールなの? それとも映画界にもぐりこんでるスペクターの陰謀でなの?
 このクズシークエンスのあとが、もう約束の地みたいなダメ展開に華麗に繋がっていって、ボンドは爆弾を仕掛けられたMI6の本部ビルから、閉じ込められていた彼女を助け出すんだけど、どう考えても上の階からおりるまでの間に時限爆弾は爆発する。
 じゃあどうするかって言うと、ボンドは彼女を抱きかかえて飛び降りるんだ。高層ビルから。
 そしたら、たまたま下に変なネットがあって無事でした。
 えぇーーーーーーー?
 川に着水したとか、走ってきたトラックのほろに飛び移ったとかじゃないんだよ。
 完全にフォースの覚醒が起きてるんだよ。
 これ、この映画で二回やってて、一回目は冒頭のシーンでビルが大爆発して(理由はボンドが爆弾テロを阻止しようとして犯人を撃ったら持ってた爆弾入りアタッシュケースに命中したため)、ビルが倒壊するってシーンなんだけど、その時はおっこったボンドの下にたまたま二人掛けのソファーがあって、ぼい~ん、って着地して無傷。チャップリンかよ!!
 もうね、こんなん映画でもなんでもないんじゃ! 単なる間延びしたコントだろ!!
 こういう最悪の自作自演のピンチからなんの理由もなく助かった主人公はさらに犯人を追いかけようとする。
 罠が失敗したボス(彼にはなんの落ち度もなかった)はヘリコプターで逃げる。
 いや、この、ヘリで逃げるってのがもうどうしようもないよね。
 怪人20面相の時代じゃないんだからさ。ロンドン上空であんだけの大規模な爆破テロかましてその場からヘリで逃げるって「着地地点で逮捕してください」って言ってるのと同じだろ。
 それでも律儀なボンドはヘリをボートで追いかけるんだよ。
 で、また例の必殺の射撃テクニックを駆使して、飛んでるヘリを拳銃で撃墜に成功するのね。
 なんだよそれ。こんな何やっても神が味方して偶然上手くいくヤツなんて、敵に回して勝てる訳ねえだろ。
 撃墜されてロンドン橋かなんかに墜落したヘリから脱出したボスの周りは、警察に取り囲まれてました、ってそりゃそうだよな。
 もうこういう、アホとアホとが行き当たりばったりに好き勝手して神様に愛されてるほうが理不尽に勝つみたいな話、どこがおもしろいのかまったくわからない。 
 そりゃこんな子供だましの映画やってたら「00機関は時代遅れでもう必要ない」ってなるわ。
 降板が決まってる役者とスタッフのスポンサーへの最後のいやがらせみたいなクズ映画だった。
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プロフィール

萬芸廊 降利夫

Author:萬芸廊 降利夫
 ストリート・ギャング、私服保安員、ボディ・ガードと壮絶な人生を経て、ライフスタイルとしての若隠居を始めたアラフォー男児。
 素晴らしい仲間達、文学、気功学などを通して現代社会から一歩退く生き方を選択。
 現在、武術家、ダンサーとしてささやかながらも静かで滋味のあるビューティフル・ライフを目指して日々暮らしている様を書いております。
 今のキーワードは「すべてが、愛だ」。

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