▼行間 ▼メニューバー
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

飛んだエビフライ

作者:黒井雛(空飛ぶひよこ別PN)

※グロ・ホラーです。注意

「わあい、きょうのごはんはエビフライだ」



 たろうくんは、ママが持ってきてくれたエビフライに、おおよろこびします。

 エビフライは、たろうくんの大こうぶつです。

 サクサクのきつね色にあがったエビフライには、ママのおてせいのタルタルソースがたっぷりかかっています。


「あついから、気をつけるのよ」


「うん!!いただきまーす」


 ママによいこの返事をして、たろうくんは、エビフライにかぶりつきます。


「うわぁ、おいしい」


 たろうくんは、にこにこ笑いながら、エビフライをたべすすめます。


 しかし、半分ほどたべすすめたところで、たろうくんのフォークがとまりました。



「きもち、わるい」



 たろうくんは、たべていたエビフライを、はきだしてしまいました。

 せっかく、いっしょうけんめいママが作ってくれたエビフライなのに。

 たろうくんは、泣きながら、じぶんがはき出したエビフライをみて、そしてかたまりました。



「……なに、これ」



 胃酸(いさん)とともにはきだしたエビフライの中で、むすうにうごめくなにかがみえました。

 こめつぶたいの、ちいさなちいさな白いかたまりが、はいずりまわるようにうごきまわっています。


「あ、あああああああ!!」


 たろうくんは、ひめいをあげてそのばに倒れました。

 かけつけたママが、ひっしにたろうくんの名前をよびますが、たろうくんには聞こえません。

 たろうくんは、顔をむらさきいろにかえて、そのばにのたうちまわりながら、叫びます。



「ママ!!ママ!!ママ!!」


「むしが、むしが、むしが」


「むしが、ぼくのおなかを食いやぶっている!!」



 どうじこく。

 たろうくんがすんでいるまちでは、どうようのひめいが、あちこちから聞こえてきました。

 天丼や、エビグラタン、エビカツ、そしてエビフライ。

 食べたものは、それぞれでしたが、皆おなじところでとれたエビを使った食べ物ばかりでした。



 だれも、知りませんでした。

 そのエビには、いくらねつをとおしても、かみくだいても、胃酸(いさん)にとかされても、けして死なない、みちのこわい寄生虫(きせいちゅう)がいることを。

 それは人間のからだをたべて、またたくまに成長することを。




「たろう!!たろう!!」


 へやのなかに、ママのひっしなさけびがひびきます。

 だけど、たろうくんは、もうとっくに死んでしまっていました。

 たろうくんのおなかを食いやぶったむしは、たろうくんのからだを食いつくしていきます。

 たろうくんのみひらいためから、目玉がころん、ところがって、なかからソーセージくらいの大きさに成長したむしが現れます。

 むしはやがて、ぼうぜんとたちつくすママにむかって、むらがっていきました。



 ママもたろうくんもいなくなった、さみしい家の中。

 へやじゅうにつくられていた、むしのサナギがどうじにわれていきました。

 成虫になったむしは、しっぽがあかく、からだは黄色くほそながい、とても、きみょうなすかだをしていました。


 たろうくんが食べた、エビフライそっくりです。



 むしは、ガラスで出来た窓を破ると、そのまま大空をとびたっていきました。


 エサ場をかえて、もっともっと、なかまをふやすために。




「あ、エビフライが飛んでる!」




 自分のまちにむかってくるむしをみたとなりまちのこどもは、空を指さしながら、楽しげにさけびました。




  • ブックマークに追加
ブックマーク登録する場合はログインしてください。
ポイントを入れて作者を応援しましょう!
評価をするにはログインしてください。

感想を書く場合はログインしてください。
イチオシレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。