飛んだエビフライ
※グロ・ホラーです。注意
「わあい、きょうのごはんはエビフライだ」
たろうくんは、ママが持ってきてくれたエビフライに、おおよろこびします。
エビフライは、たろうくんの大こうぶつです。
サクサクのきつね色にあがったエビフライには、ママのおてせいのタルタルソースがたっぷりかかっています。
「あついから、気をつけるのよ」
「うん!!いただきまーす」
ママによいこの返事をして、たろうくんは、エビフライにかぶりつきます。
「うわぁ、おいしい」
たろうくんは、にこにこ笑いながら、エビフライをたべすすめます。
しかし、半分ほどたべすすめたところで、たろうくんのフォークがとまりました。
「きもち、わるい」
たろうくんは、たべていたエビフライを、はきだしてしまいました。
せっかく、いっしょうけんめいママが作ってくれたエビフライなのに。
たろうくんは、泣きながら、じぶんがはき出したエビフライをみて、そしてかたまりました。
「……なに、これ」
こめつぶたいの、ちいさなちいさな白いかたまりが、はいずりまわるようにうごきまわっています。
「あ、あああああああ!!」
たろうくんは、ひめいをあげてそのばに倒れました。
かけつけたママが、ひっしにたろうくんの名前をよびますが、たろうくんには聞こえません。
たろうくんは、顔をむらさきいろにかえて、そのばにのたうちまわりながら、叫びます。
「ママ!!ママ!!ママ!!」
「むしが、むしが、むしが」
「むしが、ぼくのおなかを食いやぶっている!!」
どうじこく。
たろうくんがすんでいるまちでは、どうようのひめいが、あちこちから聞こえてきました。
天丼や、エビグラタン、エビカツ、そしてエビフライ。
食べたものは、それぞれでしたが、皆おなじところでとれたエビを使った食べ物ばかりでした。
だれも、知りませんでした。
そのエビには、いくらねつをとおしても、かみくだいても、
それは人間のからだをたべて、またたくまに成長することを。
「たろう!!たろう!!」
へやのなかに、ママのひっしなさけびがひびきます。
だけど、たろうくんは、もうとっくに死んでしまっていました。
たろうくんのおなかを食いやぶったむしは、たろうくんのからだを食いつくしていきます。
たろうくんのみひらいためから、目玉がころん、ところがって、なかからソーセージくらいの大きさに成長したむしが現れます。
むしはやがて、ぼうぜんとたちつくすママにむかって、むらがっていきました。
ママもたろうくんもいなくなった、さみしい家の中。
へやじゅうにつくられていた、むしのサナギがどうじにわれていきました。
成虫になったむしは、しっぽがあかく、からだは黄色くほそながい、とても、きみょうなすかだをしていました。
たろうくんが食べた、エビフライそっくりです。
むしは、ガラスで出来た窓を破ると、そのまま大空をとびたっていきました。
エサ場をかえて、もっともっと、なかまをふやすために。
「あ、エビフライが飛んでる!」
自分のまちにむかってくるむしをみたとなりまちのこどもは、空を指さしながら、楽しげにさけびました。