王都でゲヘナが無くなったので
薔薇が散る事もなくなりましたので
お笑い系になってもらいます。
だって何処を切ってもキャラ立ってますもんね。
あ、それと今回は短いです。
でわ、ごゆっくりお楽しみください。
王都最高級宿屋の一階酒場。
アダマンタイト級冒険者、蒼の薔薇の常宿であり溜まり場でもある。
「無事に即位式も済んで何よりだな。」
イビルアイはホットミルクを啜りながら話しかけた。
「そうね。ラナーもとても喜んでたわ。」
ラキュースはお気に入りのカモミールを楽しんでいる。
「おう!そのお姫さんは孤児院の近くに家を借りたって?」
ガガーランはグイッとジョッキを呷る。
「愛の園」「蜜月の館」
ティナとティアの双子はクッキーをポリポリ食べている。
「ククッ!それよ。こないだ市場でクライムを見かけてな。
両手の籠に卵をいっぱいにしてよ。声かけたら顔真っ赤にして逃げてった。」
「卵?ラナーが孤児院で使うからじゃない?」
「だから鬼ボスはいつまで経ってもその鎧を脱げない」
「だから鬼リーダーはいつまで経っても闇の力がどうとか言ってる」
「う、五月蝿いわね!私の事は今はいいの!それより例の2人よ。」
「漆黒の疾風と赤い彗星か?」
「古いぞ?今は黒い方は漆黒の稲妻だ。」
「「稲妻?」」
「ああ。俺が聞いた話じゃ、前の国王陛下や貴族連中にスゲー雷落としたって。だから稲妻だ。」
「ライトニングを使ったの!?」
「いーや。オヤジが落とすカミナリの方だ。」
「「?」」
「なんかな、揉めて貴族連中がごちゃごちゃ言い出したんだと。そしたら一喝"騒々しい!静かにせよ!"」
「何か信じられないわね。噂じゃ帝国と話をつけたのもその稲妻だって言うし。」
「私が聞いたのではカルネ村に居るらしい。」
「鬼ボス、調べる?」「鬼リーダー、調査ならお任せ」
「それがね。私もラナーに同じ事言ったのよ。そしたら見た事もない真面目な顔して言ったの。時期が来たら紹介するから絶対に探っちゃ駄目だって。カルネ村にも近づくなって。」
「ほう。あのお姫さんがねぇ〜。まー別に悪い事した訳じゃねーし。てか寧ろ良い事ばっかだからな、保留だな。」
「そうね。あの2人が八本指も戦争も無くしてくれたんですものね。ラナーの言う通り、暫く様子を見ましょう。」
「「了解」」
ーーーーー
ラキュースたちがお茶を楽しんでいる同じ頃
スレイン法国中央神殿最奥部会議室。
「経緯はさておき我らの思惑通り王国は帝国に併呑された。」
「その経緯ですが今回の騒ぎに乗じて脱走して来たニグンの話によると、カルネ村の例の2人組が今回も一枚噛んでいるそうだ。」
「黒とか赤とかの連中か?何処の冒険者組合にも属せず出生も不明。実に胡散臭い。」
「ニグンの話では"ぷれいやー"ではないか、と」
「馬鹿な!ありえん!もう数百年も現れておらんのだぞ?それが何故辺境の開拓村などに?」
「全く。目立った力を使った節もない。"ぷれいやー"ならば超人的な力を見せる筈。」
「何にせよ。接触者がニグンしか居らんし情報不足だ。どうする?」
「それならば竜王国がいつも通り救援を請うておる。それを利用すると言うのは?」
「なるほど。奴らは平和の使者などと言うておるそうじゃ。竜王国の困窮を噂として流せば動きがあるやも知れん。上手く行けばその力量も計れよう。」
「では早速に王国周辺に噂を広めよう。罪の無い人々が獣人に食われ幼い女王は成す術もない、とな。」
「こちらからは誰を送る?」
「漆黒の第5席次クアイエッセ・ハゼイア・クインティアをやる。1人師団の奴なら十分に働いてくれよう。」
「そう言えばアレの片割れはどうした?脱走後消息不明と聞いておるが?」
「出来損ないの妹か?放って置け。あの様な"欠陥品"に構っておる暇は無いわ。」
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「ぶぇっくしょっん!」
「なんだ?風邪でも引いたのか?そんな格好をしてるからだぞ、クレマンティーヌ。ちゃんとした服を着ろ!」
「いえ、なんか、悪口言われてる気がして。」
「まーお前も色々やって来たからなー。悪口の一つや二つは言われるさ。」
「いくらサトル様でも酷い言い様です。アタシ、ここんとこホント真面目にやってるんですよ?」
「うん、それは聞いてる。お姉様とか呼ばれるしな?」
「それは言わないで。」
「はは!良いじゃないか。慕われるって事は人徳だぞ?」
「はぁ。」
「で?ニグンが牢屋から逃げたって?」
「はい、それでなんですが、法国は必ず動きます。」
「そうなの?」
「間違いありません。何らかの接触を企ててきます。どうかお気をつけてください。奴等は手段を選びませんから。」
「分かった。ありがとう。心配してくれんだ。」
「サトル様にもしもはありませんが、あのコたちの事もありますので。」
「そうだな。ガゼフ1人の為に村人を皆殺しにする様な奴等だ。用心しよう。」
「ハッ!」
ーーーーー
薬草採取組を除いた面々は3時のおやつを楽しんでいた。
今日はツアレが焼いたアップルパイだ。
鈴木もパイの甘い香りと珈琲を楽しんでいた。
すると入り口付近から
「サトル様。"重箱"と言う人が来ています。」と声がする。
「重箱?正月にはまだ早いぞ?」
首を傾げながら見るとレイナースが居た。
「なんだ、重箱じゃないよ。この人は"重爆"。」
そう言いながら手招きする。
「レイナース、久しぶり。旅行?」
「いえ。お耳に入れたい事が御座いまして罷り越しました。」
「なに?ここでは話しづらい内容?」
「それは別に。サトル様、竜王国はご存知で?」
「ああ、クレマンティーヌからね。なんでも竜族の血を引く幼い女王が居る国だろ?」
「左様です。その竜王国より助けて欲しいと言って来まして、その件で参りました。」
「分かった。部屋で聞くよ。アクター、ガゼフとクレマンティーヌ。一緒に来て。ツアレ、悪いけど部屋に珈琲4つ頼むよ。」
ーーーーー
「そのビーストマンとやらが今年は大挙して襲って来てて竜王国の人達を襲って食ってる。普段は助けてくれる法国も今年はエルフの国との戦争が激化してて無理との返答。このままでは文字通り国が食われてしまう。誰か助けて。って事だな?それで何故、帝国のレイナースがウチへ?」
「そこなんですが、この話、どうやら王国にも届いてまして、それを聞いた陛下がどうも怪しいと。」
「ん?何故?手当たり次第にヘルプ出してんじゃないの?」
「先の合併は正式書簡として各国に送っております。なのに帝国と王国、両方へ頼むのは外交上有り得ません。」
「どちらにも失礼と言うわけか。」
「はい。これでは両国共助けないのは明白ですから。」
「お前たち、どう思う?」
クレマンティーヌが手を挙げる。
「確かに法国はエルフたちと交戦中ですが、竜王国への援助は無償では有りません。毎年馬鹿にならない額を受け取っています。それに例年の事ですから割く人員も予定に組まれています。今年だけと言うのは何とも変な話です。」
「父上、罠ですな。」「俺もそう思う。」
「陛下もお三人と同じ事を仰せで、まず間違いなく罠だろうと。」
「何の罠だ?」
「サトル様、貴方です。貴方を誘き出す罠です。竜王国はその餌です。」
「俺を誘き出す罠?何のために?」
「そこまでは分かっておりません。ただ先日、王国に捕らえられていたニグンなる者が脱走いたしました。これと関係あるのではないか?と陛下は仰せでした。」
「クレマンティーヌ、分かるか?」
「筋書きは見えて来ました。ニグンは本国へ帰り上層部へ報告を上げた、上層部はサトル様の力量を計るつもりでしょう。」
「直接乗り出さずにか?」
「その辺がアイツらのやり方です。アタシはそこに居たから良くわかります。」
「で?レイナース。お前がわざわざ来たのはそれを伝える為だけではないだろう?他に何をジルに言われた?」
「さすがです。陛下は、罠を承知でサトルは助けに行く、そんな男だ。お前はサトルたちの留守中、村を守ってやれ、と」
「フッ。随分買い被られたな。俺は正義の味方じゃないんだがな。」
「「でも、困っている人は?」」
「助けるのが当たり前。」
ーーーーー
「法国絡みだ、クレマンティーヌは付いて来てくれ。よってガゼフはレイナースと村を頼む。」
「あ!忘れてました。陛下の命でフールーダ様の魔法部隊が援軍で来ます。法国が相手なら魔法が必要だろうと。」
「おお!あの部隊なら頼りになる!随分と痛い目に遭ったからな!」
「おいガゼフ。実感が篭ってるぞ。じゃあ俺からはコレだ。」
鈴木は小さな木彫りの人形を取り出してガゼフに渡した。
「御守りか?」
「そうだ、御守りだ。ただ便利な御守りでな。もうどうしようもなくなった時"チェンジ"と人形に唱えろ。瞬時に俺とお前は入れ替わる。」
「サトルにはもう驚かんと決めたが、そんな物まであるのか?」
「はは。俺のポケットは底なしだからな、まだまだ驚かしてやるさ。」
「アクター。その時は非常時だ。お前は俺に化けて転移門を開け皆を連れて即時撤退だ。」
「畏まりました。」
「クレマンティーヌは絶対に無理はするな。今回連れて行くのは法国が来た時の交渉役だ。ビーストマンとの戦闘要員ではない。お前に何かあれば娘たちに何を言われるかわからん。」
「今それを言う?でも、畏まりました。」
「それでだ。レイナース。お前も無理はするな。来た理由はもう1つあるんだろ。忘れてない。帰ったら必ず叶えてやる。」
「サトル様っ!」
「あの時の珈琲は美味かったからな。」
ーーーーー
「そうですか。やはりあの方は行かれましたか。」
「ハイ。ラナー様の言った通りになりました。」
「クライム。そのラナー様はもう止めてって言ったでしょ?今の私は貴方の妻。ただのラナーなのです。」
「そ、そ、そうだったな。ら、ラナー」
「はぁい、ア・ナ・タ♡」
「ちょ、ちょっと待って!毎晩じゃ持たない!あ!そんなとこ舐めちゃ!た、タマゴ!タマゴを!」
お疲れ様でした。
強壮剤にしようかなと思いましたが
生卵にしました。
籠いっぱいの卵をもった彼が可愛かったからね。
次は竜王国へ行きます。
妾を早う出さんか!と今朝も怒られました。
じゃあまた。よろしくお願いします。
ありがとうございました。