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緊急事態宣言下の東京。小池百合子知事は「今が正念場」と警戒を緩めない(写真:つのだよしお/アフロ)

(「公正・平等とは言えない時短協力金、エビデンス重視に改革できる)」も併せてお読みください。

 緊急事態宣言が発動されたものの、新型コロナウイルスの新規感染者数や死亡者数が劇的に改善することはなく、暗い気持ちになる日々が続いている。

 関連する報道に接していると、新型コロナウイルス禍による死亡者数とは何なのか、疑問がわいてくる。他の病気で死に直面していた人が亡くなったとき、たまたまコロナウイルスに感染していたケースが含まれる。その一方で、コロナ禍に起因する生活の困窮や精神の落ち込みのため自殺した人の数はカウントしていない。

 加えて、「死因を問わず、死亡者数全体はどうなっているのか」にも興味が向く。新型コロナ禍で亡くなる人が増大する一方で、マスクの着用や手洗いの励行、外出自粛が進み、インフルエンザや交通事故など他の要因による死亡者数は減少していると聞く。

 死亡者数全体の動向を把握することは、国の公衆衛生政策や経済政策を遂行するうえで極めて重要だ。このため世界各国は、死亡者数のトレンド(大規模な災害や感染症が発生していないときに生じると想定される趨勢的な死亡者数)と比べて、現実の死亡者数全体が増えているのか減っているのかを推計して公表している。トレンドを超える分を「超過死亡」と呼ぶ。

 超過死亡の動向を追うことで、新型コロナの感染拡大が人の命に与えた正の影響と負の影響を差し引きした、真のインパクトを推測することができる。