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親戚の小学生の年度末テストがおかしすぎる 作者:唯乃なない
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8、総合テスト エンディング

 イスカンダルの地平線に朝日が上る。

 朝日を受けたイスカンダルの戦艦たちが、星旗をはためかせながら優雅に上空を滑っていく。

 俺はそれを見上げていた。


 全長数キロメートルもある戦艦が編隊を組んで移動していくさまは、まさに圧巻だ。

 さわやかな風が吹き、俺の頬を撫でていく。


「風が気持ちいい……」


 辺りを見回すと、草原だ。


 あ、これは大問1で二人が遠足していた草原か!?


 横を見ると、たかし君とゆうき君が立っていた。


「うおう!?」


 あわてて少し距離を取る。

 幸い、俺は登場人物扱いされていないので、二人は俺に気がついていないらしい。


「お前と追いかけっこしてた数ヶ月前が嘘みたいだな。まさか、こんなとこまで来ちまうとは」


「そうだな」


 二人は俺の目の前でそんな言葉を交わし、凱旋する戦艦の編隊を見上げている。


「本当にやりきったな、たかし。全くお前はすごいやつだよ」


 ゆうき君が、たかし君に顔を向けた。


「いや、みんなのおかげだよ」


 対するたかし君は自慢するでも謙遜するでもなく、自然体で答える。


 また、しばしの間、無言だった。


「帰ろう、地球へ」


「そうだな」


 草原に一陣の風が吹き、たかし君とゆうき君が空を見上げる構図のまま、目の前の景色が暗くなっていく。


「あ、あれ? どうなって……?」


 ついには目の前が真っ暗になった。

 なにも見えない。


 その瞬間、ピアノの音と共にハスキーな女性ボーカルの歌声が流れだす。


「エ、エンディング曲!?」


 そして、真っ黒な背景の上に白い文字が流れてくる。


『キャラクター原案:武井先生』


 これは……最後にあったスタッフリスト!?


「え!? あれがエンディングのスタッフロールになるわけ!?」


 どうやら俺は8枚目の一番最後を見ているようだ。

 その後も次々と名前が画面に現れる。


『シナリオ原案:武井先生・森田先生』


『本文:清水先生』


『セリフ修正:南先生』


『設定考証:茂木先生』


『問題作成:森田先生・山田先生・川村先生・武井先生・茂木先生・清水先生・佐藤先生』


『スペシャルサンクス:岩泉教頭先生・3組高崎くんのお父さん・全ての先生』


 そして、しばらく間があって


『製作:東第三小学校 年度末テスト製作委員会』


 という文字が流れてくる。


 そしてすべての文字が画面の外に消えていく。


「おお、なるほど……」


 しかし、文字が消えてもピアノの曲は全然終わらない。

 むしろ、どんどん盛り上がっていくような調子だ。


「お、おい、曲の尺が余ってるじゃん……。俺の中二病もまだまだ……あれ?」


 そう思った瞬間、黒い背景色が消えて、縮退相転移砲に立ち向かう魔法少女の止め絵が表示される。


「あ、フラッシュバック形式のエンディングか……なるほどね」


 そして、師匠のたかし君のやりとりの場面、炎の男との修行シーン、魔法少女の日常風景など、テストに描写されていた様々なシーンが次々と表示されていく。


「ほほお……」


 そして最後に、先ほどの草原に咲く一輪の花の風景が映し出され、それとともにピアノが綺麗な余韻を残して曲が終わる。


 綺麗が終わり方だ。


「おお……」


 そして、画面は本当に真っ暗になる。


 ………


「あ、あれ? 終わったんだよ……な?」


 目の前は真っ暗なままだ。

 音もなにも聞こえない。


「あ、あれ、お、おい、どうなって……」


 自分の体がどうなっているかもわからない。

 一体、なにがどうなっている。


「お、おい……!!」


 と焦って叫んだ瞬間、


『この物語は戦争を肯定する目的で作成・監修されたものではありません』


 というアナウンスが流れ、俺は意識を取り戻した。

 

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