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福島の甲状腺検査の倫理的問題を問う(第一部)「0~18歳まで全員検査」が引き起こしたこと

細野豪志 衆議院議員

予防や検診の意味が乏しい甲状腺がん

細野  そこでご説明をいただきたいのが、甲状腺がんとは一体どういうものなのかということです。それを最初にハッキリさせることが、検査のメリットやデメリットを大勢の人に向けて広く客観的に示していくための前提となりますよね。現場に参加された専門家としての立場からお話しいただきたいのですが。

緑川  2011年の検査開始時点ではあまり見られなかったものの、2014年くらいからは甲状腺がんというのは「健常者に検診をすることで、かえってデメリットを引き起こす過剰診断が起こる」との指摘が多く見られるようになってきています。

 そもそも甲状腺がんとは、非常に予後が良いがんなんです。それはつまり、がんだからといって命や健康にほぼ関わらないというものなので、「早期発見・早期治療」という一般的ながんの原則が適用されないということが、がんを専門とする先生方の中でも共通理解となっているようながんなのです。甲状腺がんというのは、通常は症状が出てから病院で治療しても、それで治る。特に若い人では予後がさらに良いというのが分かってきています。若い人の甲状腺がんは進行も早いのだけど、他のがんとは違って逆に治りやすいという側面も持っています。予防や検診の意味が非常に乏しいがんだというのが、一般的な理解だと思います。

細野  お隣の韓国では20年近く前の一時期、甲状腺のがん検査が公的なサポート対象になったことで検査対象が増えたということがありました。韓国は検査数を増やしたことで、数字上では甲状腺がん発生率が世界一の国へと一気に跳ね上がった。その一方で、甲状腺がんを原因とした死亡率は検査を強化する前から全く変化がなく、低いままだった。さらに甲状腺検査の倫理的な問題も指摘されて結局、検査の補助そのものがなくなったんですよね。そういった海外での事例は議論になりましたか。

緑川  韓国での甲状腺検査の前例に関する報告は2014年に『New England Journal of Medicine』という権威ある論文誌に出ましたので、福島の甲状腺検査でも同様に過剰診断が起こっている可能性は当然、話としては出てきます。検討委員会でも議論になっているはずです。

細野  その他にも、過剰診断の可能性を示すエビデンスとしてよく用いられる例としては、遺体解剖をして検査をした時に、実は無症状の甲状腺がんを抱えたまま、気がつかずに亡くなっていた人というのが相当数いると伺っています。

緑川  そうですね。そうした剖検のデータは日本だけではなく、1960年代から世界中で繰り返し多くの病理学者によって研究されてきたものですが、昔の論文からずっと一貫して遺体から10%以上の発見率が報告されています。フィンランドでは、全体の30%以上の人が無症状の甲状腺がんを持っていたとの論文もあります。解剖時に甲状腺を薄く切れば異変の発見率が上がり、そういう結果にもなります。

細野  つまり、事実として甲状腺がんであったにもかかわらず、症状も出ず健康にも全く悪影響を及ぼさないまま、他の死因で亡くなる方が非常に多いということですね。もちろん、仮に何らかの症状や異変が出た場合については手術をしてもいいけれど、少なくとも無症状の時に甲状腺がんを発見するメリットはほとんどない可能性が高いと。そうした様々な研究成果から、検査そのものが過剰診断だとの指摘があるわけですね。

緑川  そうですね。無症状の方に検査を行えば過剰診断につながる場合が多いことが分かってきました。

拡大右より開沼博氏、緑川早苗氏、細野豪志氏

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筆者

細野豪志

細野豪志(ほその・ごうし) 衆議院議員

1971年(昭和46年)生まれ。2000年衆議院議員初当選(現在7期)静岡5区。総理補佐官、環境大臣、原発事故担当大臣を歴任。専門はエネルギー、環境、安保、宇宙、海洋。外国人労働者、子どもの貧困、児童虐待、障がい児、LGBTなどに取り組む。趣味は囲碁、落語。滋賀県出身

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