ジェンダーバイアスを理解できない出演者たち
『グッとラック!』では森喜朗氏の女性蔑視発言問題を何度も取り上げていた。森氏の発言の問題点は属性による決めつけをしていた点なのだが、志らく氏は「女性は女性らしく」「女性はおしとやかに」などと言及しており、自身の発言の矛盾点には気づかないのだろうか。
前日、25日の放送でも差別に関するテーマを取り扱っており、コメンテーターの伊沢拓司氏が「“差別とは何か”の定義が大事」と言及し、<個人の特性によるのではなく、ある社会的カテゴリーに属しているという理由で、合理的に考えて状況に無関係な事柄に基づいて、異なった不利益な取扱いをすること>と差別の定義について解説していたのだが……。
水道橋博士の「美人なら読書しなくてもいい」が誉めているつもりでも女性蔑視になる理由
お笑いコンビ・浅草キッドの水道橋博士氏が、女性アイドルグループ「Juice=Juice」の金澤朋子氏に関し<美人であり、あんな歌声を持っていれば読書な…
なお、フワちゃんは「都道府県民ごとの区別はOKで、男女の区別は否定されること」に疑問を抱いていたが、出身地や血液型などの属性による決めつけも差別になる恐れはある。
また、志らく氏はスカートめくりで笑えることに疑問を抱いていないようだったが、スカートめくりがトラウマになっている人は決して少なくない。昨年4月にKAT-TUNの亀梨和也氏がテレビ番組で幼少期のスカートめくりをネタとし話した際も、多数の批判が集まった。「スカートめくり」が笑えるネタであるとは、性暴力被害を軽視しているとも言えるだろう。
番組では「カンチョー」についても取り上げていたが、「スカートめくり」も「カンチョー」も「ズボンおろし」も、プライベートゾーン(水着で隠れる部分)を侵害する行為は、相手を傷つける恐れがあるというのが性教育の前提である。
なお、特集終盤には「私は保育士で、パートナーはトラック運転手で家事・育児を分担すると決めたものの、自分ばかり担っていることに悩んでいる」という文章が紹介され、志らく氏と市川海老蔵氏に意見が求められた。実はこれは都立高校の入試問題なのだが、回答内容ではなく、「保育士=女性」「トラック運転手=男性」という固定観念がないかを見られている設問だ。
国山ハセンアナが「ジェンダーを考えるきっかけとなるもの」と説明した後も、コメンテーターの上地雄輔氏は<でも割合からしたら保育士は女性の方が多くて、トラック運転手は男性の方が多いから一概には言えない>、志らく氏は<勝手に思ったことが差別主義者になってるってこと?>と問題の趣旨が理解できなかったようだが、市川海老蔵氏は、はっとした様子で<アカンじゃん>とコメントしていた。
『これからの男の子たちへ』は、今まで当たり前とされてきたことが「有害な男らしさ」に繋がるのではないか、と気づきを促す本だと筆者は感じているが、出演者たちには届かなかったようで残念だ。
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