1.未練
2.怪人二十面相
3.二二六
ex-ジュリィーの慎一郎、杏太が在籍していたホタルの1stシングル。
初期の彼らは、昭和歌謡六区をコンセプトに、懐かしいメロディと痛々しい歌詞を武器にしており、本作は、まさにその初期衝動が詰まった作品と言えるでしょう。
B級レトロ感のあるジャケットに、レコード盤を意識したCDの盤面。
ヴィジュアル面でのインパクトも十分で、2000年初頭のお洒落系ブームの中で、昭和歌謡系・郷愁系というひとつのムーブメントを確立していました。
クマドリメイクは、ゴールデンボンバーの専売特許ではないのだと、声を大にして言いたい。
「未練」は、女性の視点から、別れた相手へ想いを綴った歌謡曲色が強いナンバー。
現代であればストーカーだけれど、昭和の当時では、こういう恋愛もあったのだろうな、というリアリティ。
重く、痛く、だけど感情移入ができないこともないという歌詞が、胸に刺さります。
アコースティックなアレンジではなく、しっかりバンド演奏でのアレンジ。
そのうえで、しっかりと昭和歌謡に聴こえるのだから、2002年当時としては新鮮でした。
ライブでの熱演に比べれば、感情が抑え気味になっているのが残念ですけれど、この曲の良さは伝わるパッケージになっているかと。
明智小五郎の好敵手をテーマにしたのかと思いきや、人の心の闇を歌った内容なのは「怪人二十面相」。
アップテンポで、どこかコミカルな側面もあるのですが、実は深みもあったりする。
犬の遠吠えなどのSEも効果的で、昭和のB級感を高めています。
ハネたリズムでノリが良い。
サビのインパクトが薄いので他2曲のインパクトに埋もれ気味ではありますが、バランスを保つ意味でも重要な役割を担っていると言えるのかも。
ラストに収録された「二二六」は、激しさのあるロックチューン。
タイトル通り二二六事件の陸軍将校の視点から書かれた歌詞は、とても重苦しい痛みがあり、考えさせられる。
右翼的な歌詞は、インディーズならではといったところですな。
SEをはじめ、ベースソロや、キメなど、ドラマティックな演出となるよう、構成もしっかり作られています。
サビはやや単調ですが、それがかえってメッセージ性を強めているとも言え、畳み掛けるような展開において、テーマがぼやけない工夫と捉えても面白いかな。
「歌謡サスペンス激情」という作品名だけあって、収録された3曲が、それぞれ、"歌謡"、"サスペンス"、"激情"を象徴する位置づけになっているというのは、深読みしすぎかしら。
ギターが一本という制約もあってか、アレンジについてはシンプルすぎる部分もあり、音質も良くはないですね。
その辺りがもったいないとは思うのですが、彼らのコンセプトを明確に示したうえ、Vo.慎一郎さんの表現力等の強みが惜しげもなく注ぎ込まれているので、ホタルとしての一番の力作と推す人も多い一枚。
個人的にも、大好きな作品です。
<過去のホタルに関するレビュー>
サラバ余の闇されど世は病み
落陽ピカレスク
サクラチル