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2021年2月25日木曜日

あの塔を登りたい No.2955.

■あの塔を登りたい■

おはようございます。紫隠ねこです。
1980年代の国産ゲームブックにおいて完成度の高い作品である鈴木直人氏の『ドルアーガの塔』三部作。
これは王国の騎士ギルガメス(ギル)が、悪魔ドルアーガに奪われたブルークリスタルロッドを取り戻し、囚われの恋人カイを救うために、地上60階の塔を登っていくという挑戦的なゲームブックです。
当時のコンピュータRPGを意識した構成で、上階へと進むために各階の構造をマッピングしていくだけでなく、怪物を倒して戦闘経験を積み、より良い装備を入手してパワーアップしていく必要があります。

数年振りに『ドルアーガの塔』の冒険を始めた私は、かつての旅の思い出を振り返りながら順調に塔を登っていきますが、割と良い所まで進んだ所でギルが敵に敗北。残念ながらゲームオーバーを迎えてしまいました。
「それならば上手くいくまでリトライするのみ!」といきたい所ですが、ここで急に何かが面倒に思ってしまいます。それは一体何でしょうか? その理由を一つずつ考えていく事にしましょう。


◆なにが面倒なのか?
再プレイするにあたって私は何を面倒に感じてしまったのでしょうか。双方向型ゲームブックの場合、パラグラフ間の移動をする事はもちろんですが、迷う事なく冒険を進めるためにマッピングも行う必要があります。『ドルアーガの塔』はコンピュータRPGを意識したゲームブックであるため、これに加えてギルの状態&入手したフラグの管理、戦闘の処理などを全てを自分で管理する事になります。

冒険の中でギルが力尽きてしまった場合、キャラクターアドベンチャーシートに記入した全ての情報を消す事になりますが、マッピングによって完成した塔内の地図だけは手元に残ります。これは再プレイにあたって非常に役立ちます。敵や宝物の位置などの情報を詳細に記しておけば、自分だけの攻略ガイドとして扱う事もできるでしょう。マッピングを行う事は効率良く塔を登っていくためには必須となるので、それ以外の要素について考えてみる事にしましょう。


◆戦闘について
『ドルアーガの塔』の戦闘は、各戦闘ラウンドで攻撃側の「命中値」、そして防御側の「回避値」をサイコロで求め、二つの値を比較した結果「命中値」の方が多ければ防御側にダメージを与える事ができます。1回の戦闘ラウンドでは、ギルと敵の攻撃がそれぞれ1回ずつ行われる事になり、この手順をどちらかが力尽きるまで繰り返します。攻撃も防御も上手くこなす必要があるため、戦闘のリアリティは増しますが、私が遊んだ感じではギルの攻撃が若干当たりづらく、戦闘が長引く状況が多い印象を受けました。

また本作はコンピュータRPGのようにレベルアップの要素を含んでいて、敵を倒す事で経験ポイントが増えていき、それが一定数たまるとギルの戦闘力が上昇します。レベルアップ要素のない「ファイティング・ファンタジー」シリーズでは、戦闘は体力ポイントの消耗につながるため極力避ける事になりますが、本作では後に控える強敵に立ち向かうために積極的に敵と戦ってギルを成長させる必要があるのです。そうなると私は「ギルの命中率が低いために戦闘が長引きやすい」事が少し引っ掛かっているのかも知れません。


◆所持品やフラグの入手
『ドルアーガの塔』はキャンペーン形式の冒険であるのは先ほど述べましたが、長い冒険という事もあって、ギルが冒険を進めるほど持っているアイテムも次第に増えていきます。何かを入手するたびに、アイテム名をアドベンチャーシートに記入していく事になりますが、冒険の中でギルが力尽きてしまったら再プレイするために全部消さなければなりません。アイテムを入手するたびにアドベンチャーシートに記入する事は、イベント単位で見れば大変な作業ではありませんが、ずらりと並んだアイテム名を消していく時に、心のどこかで「またこれだけ書かなければならないのか……」と思ってしまう事もあります。つまり私は「大量のアイテムを再びアドベンチャーシートに記入する」事を少し面倒に感じているのです。


◆再挑戦するのに気力が必要になる理由は……?
戦闘を繰り返し、アイテムを集め、塔を登っていく。遊んでいる間は先へと進む事が楽しいのに、一度ゲームオーバーを迎えると妙に疲れた気分に陥ってしまうのは何故か。私が再プレイにあたって引っ掛かった部分を総合して考えてみると、経験値によるレベルアップや装備のパワーアップといったコンピュータRPG的な要素が多く含まれているため、それが全て失われた時のショックが他のゲームブックよりも大きく感じるのでしょう。コンピューターRPGの基準で考えると、データロード時にセーブデータが失われる「中断セーブ」のみの進行というのは、かなりの高難易度です。

ストレスなく物語を進めるのであれば、戦闘は自動的に勝利した事にして、塔内に仕掛けられた謎を解くための情報だけをメモして進行するのも良い方法です。これは純粋に物語だけを楽しみたい人向けのプレイスタイルですが、その一方でゲームとしての要素も楽しみたい方はどうすれば良いのでしょうか。ルールに従わなくてもゲームブックを楽しめる方法があるなら、その逆にルールに新しい要素を加える事で楽しめる方法があっても良いのではないかと思います。一番の問題は「ゲームオーバーを迎える直前の状態に到達する」までの手間を減らす事ですから、そこから解決していく事にしましょう。


◆戦闘力の基準値を考える
ここで述べる戦闘力の基準値とは「作者が想定しているであろう戦闘の難易度」の事を指しています。基準値よりも高い能力値を持っていれば、戦闘においてギルの命中率と回避率は大きく上昇します。逆に能力値が基準点よりも低ければ苦戦を強いられる事になるでしょう。これは私が『ドルアーガの塔』シリーズの1巻『悪魔に魅せられし者』を何度か遊んだうえでの判断ですが、冒険を始めた時のギルの戦闘能力の基準値は、おそらく戦力ポイントが5点、防御力ポイントが3点の状態ではないかと考えられます。(※これは6階のミラーナイトに勝利した時の「両者の実力はほぼ互角」という描写から判断しています)

この状態で塔を登っていく場合、順当にギルを成長させていけば、遭遇する敵の技量ポイントが現在のギルの防御力より1点低い状態をキープしながら探索を進める事になります。『悪魔に魅せられし者』ではギルの体力ポイントを回復できる機会が少ないため、この基準値で冒険をすると、意外とゲームバランスが取れている事に気付くかも知れません。

冒険を始めた時のギルの戦力ポイントと防御力ポイントの初期値は、それぞれサイコロ1個を振った出目によって決定されます。防御力ポイントはギルの打たれ強さに関わるので高くても困る事はないのですが、問題は戦力ポイントの方で、平均的な出目であっても基準値に足りません。ギルの攻撃が当たらないと戦闘が長引く事は避けられないので、ここは少し見直した方が良いかも知れません。
快適に遊ぶために、ここでは思い切って戦力ポイントを求める計算式を変更してしまいましょう。新しいルールでは「サイコロを1個を振った出目の半分の値(端数切上げ)に3を加えた合計」をギルの原戦力ポイントの初期値とします。これなら戦力ポイントの初期値は4〜6点。たとえ出目が悪かったとしても、ギルの攻撃が敵にまったく当たらないという状況は減るのではないでしょうか。


◆アイテムの管理方法を変える
これは何度かゲームプレイを行ったうえでないと導入はできませんが、冒険の中で入手するアイテムを、アドベンチャーシートの「その他のアイテム」欄に全て記入してしまいます。(※各フロアのカギは「メモ欄」に書き込むと、現在の状態が分かりやすくなります)
冒険の中でアイテムを入手した場合、所持している事を示すために記入したアイテム名の横に印をつけ、逆にそのアイテムを失ったり、あるいはゲームオーバーになってしまった場合は印だけを消去します。つまりチェックボックス形式でアイテムを管理するという訳です。冒険の中で覚えた呪文も、同じ方法を使う事で記入の手間を簡略化する事ができます。この方法は『ドルアーガの塔』シリーズだけではなく、入手するアイテムやフラグが多いゲームブックでも役立ちます。

ただし、この方法はアイテムや魔法を一覧化する事によって遊ぶ前からネタバレにつながってしまう欠点も持ち合わせています。コンピュータRPGで例えるなら、本来なら画面に表示されないフラグのチェックがいつでも参照できるようなものです。例えばゲームブック『ソーサリー』では触媒となるアイテムを用いる事で魔法が使えますが、各魔法を使うためにどのアイテムが必要になるのかはプレイヤーが判断しなければなりません。プレイヤーの記憶力が必要となるゲームシステムの場合だと答えを書き記すのも同然になってしまうでお薦めの方法とは言えないでしょう。

(※下記のリンクは、アイテム&フラグ管理についての図解です)
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/itembox.png


◆戦闘システムの変更
一対複数の戦いはプレイヤー側にとって不利な状況ですが、高い攻撃力さえ出せばあらゆる攻撃を回避できるファイティング・ファンタジーとは異なり、『ドルアーガの塔』ではギルが攻撃した後に、敵の人数だけ回避も行わなければなりません。戦闘における体力ポイントの消耗を考えれば、高い実力を持つ二人の敵を相手にするよりも、それなりの強さを持った四人の敵と戦う方がよっぽど危険だったりします。また1回の戦闘ラウンドを処理するのに、サイコロを振る回数が多くなってしまう欠点も持ち合わせています。

そこでギルが一度に3体以上の敵と戦う場合、敵がどんなに多くてもギルと戦えるのは3体までというように戦闘ルールを変更します。この場合、戦闘に加われない敵は攻防の経過を見守っている事になりますが、誰か一人がギルに倒されたなら新たな一人がすぐに戦闘に参加します。三人でも十分危険な事には変わりませんが、この変更によって命中判定を行う回数が減り、1ラウンドにおける体力の消耗もある程度はおさえられるようになります。

新たなルールを導入するたびに、本来の難易度から少しずつ簡単になっていくので敵にも少し有利な条件を与えましょう。創土社版『ドルアーガの塔』では「サイコロが6のゾロ目だった場合、敵の攻撃は必ず命中する」とありますが、これを「敵が攻撃側でサイコロの出目が11以上(戦っている敵が三人以上なら10以上)だった場合、その攻撃は必ず命中する」に変更します。敵1体と戦うだけなら稀に起こる出来事ですが、複数の敵と戦う場合は少し油断のならない要素となるかも知れません。


◆数値データの調整
これはゲームに慣れてきた人向けのオプションですが、ギルと同様に敵の技量ポイントを攻撃力と防御力の二つに分ける事で、敵の個性を表現する事ができます。たとえば創土社版で若干強くなりすぎたサラマンダー(技量ポイント:11点)の能力値を【攻撃力:11、防御力:9】に変更すると、攻撃は得意だけど防御に関しては少し苦手(東京創元社版と変わらない戦闘力)という強さになり、比較的戦いやすい相手になります。逆に簡単に倒せてしまう敵を強化してみるのも良いでしょう。全ての敵にこのハウスルールを適用する必要はありませんが、自分好みの難易度で冒険を楽しみたい方は、いろいろと試してみてください。

サイコロを用いるタイプのゲームブックの中には、数値的なゲームバランスが割と大雑把な作品も存在します。計算に慣れている方は、ゲーム的に厳しいと思われる場面のバランスを独自に調整してみるのも良いかも知れません。例えば『ゴールデン・ドラゴン・ファンタジー』シリーズは、PSIポイントと敏捷ポイントの初期値を「サイコロ1個を振った出目の半分(端数切り上げ)に6を加えた合計」に変更すると、行動判定の成功率が約60〜80%の範囲内となり、それなりに探索が進行しやすくなります。


◆セーブポイントを設定する
『ドルアーガの塔』は必要なフラグさえ立てていれば、ゲームオーバーになっても冒険の途中から復帰する事ができますが、コンピュータRPGを意識したゲームブックの全てに「キャラクターの復活」の要素が組み込まれているとは限りません。そこでコンピュータRPGでは基本的なシステムである「最新のセーブデータから冒険を再開する」要素を取り入れてみましょう。ある程度物語を進める事で、キャラクターが力尽きても物語の途中からコンティニューできるとなれば、一番最初のパラグラフから再出発するより時間の節約ができますし、何よりも確実に冒険の結末へと進んでいく事ができます。予備のアドベンチャーシートを1枚用意しましょう。それがセーブデータの代わりとなります。
セーブのタイミングに関しては、数パラグラフ進むたびに復帰用のアドベンチャーシートを更新していると手間がかかってしまうので、冒険に一区切りついたと思える場面をセーブポイントとして設定するのが良いかも知れません。再開するためのパラグラフもしっかりとメモしておきましょう。

またゲームブック『展覧会の絵』はコンピュータRPG寄りのルールを使用しない作品ですが、各章が始まった時の「開始パラグラフ」「所持しているアイテムと宝石」「旋律の残り使用回数」の状態をメモしておくと、冒険につまずいた章からの復帰が容易になるため、遊びやすくなるのではないかと思います。


◆アドベンチャーシートを自作してみよう
たとえば体力ポイントは記入する機会が多いので、アドベンチャーシートに印刷されている体力の欄はもっと大きい方がいい。所持している消耗品の管理をチェックボックス式にしたい。そう思った時は、自分のプレイスタイルに合ったアドベンチャーシートを自作してみるのも一つの手です。
また状態を記録するための欄だけでなく、自分のキャラクターのイラストを書き加えると冒険への感情移入度が増すかも知れません。いろいろと試してみましょう。

(※下記のリンクは、自作したアドベンチャーシートの参考例です)
https://ftbooks.xyz/ftnews/article/sheet_custom.jpg


◆最後に
コンピューターRPGを意識したゲームブックでゲームオーバーを迎えてしまった時、その直前の状態に復帰するまでの手間に関しては、意外にも話題にのぼらないものです。今回はアナログな方法で、アドベンチャーシートへの記入の手間を減らすアイデア、復帰ポイントを作成するというアイデアになどを紹介しました。
今回の記事を参考にして、冒険の進行が少しでも快適に感じられるようになったのであれば幸いです。


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