Zeuxine strateumatica f. rupicola.

in Habitat. Okinawa island, Japan.

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チクシキヌラン、沖縄本島にて。

唇弁の先が丸くて2裂するものをキヌラン、尖るものをチクシキヌランとして分類するそうだが、両者が混生していたり中間タイプがあったりするのでよく判らない。

生活史は腐生蘭に近い。種子あるいは根茎の状態で何年も地下で過ごし、菌類から吸収した養分を蓄積すると地上に芽を出して開花結実するようだ。開花すると養分を使い果たして枯れるか、根茎だけになって地下生活に戻るらしい。「らしい」ばかりで確定情報が無いのは、地下で根茎だけになっている時に存在を確認する手段が無いため。

地上に出現している時期は生育旺盛で、移植したり根茎を切断したりしても普通に育って開花結実する。(ただしその場合は体力を使い果たしてほぼ確実に枯死消滅する。)

種子は人為的な影響を強く受ける場所、たとえば道路脇の草地とか市街地の芝生、あるいは温室内の鉢植えなどにも発芽してくる。時には公園などに大量発生している事もあるが、目立つ植物ではないので一般的には雑草扱いで気にとめる人は少ない。発生しても環境が不安定な(というか地下の菌類相が遷移していく)場所が多いため個体群が長期存続しにくく、消長が激しい。

地上部が1年未満しか存続しないので、一年草とされている記述がしばしばあるが実際には数年以上のサイクルで生長しているのではないかと思う。温室内に数年以上植え替えていない鉢が多数ある知人のところでは温室雑草になっているが、毎年必ず植え替えをする管理人のところではせっせと種子を播いても一本も生えてこない。かと思うと放置してあった枯れ鉢の中には3年ぐらいしてからひょっこり生えてきたりする。証明する材料は何も無いが、地下生活のほうが長い、セミのような生活史の植物だと推測している。

Habenaria hybrid

Habenaria (medusa X dentata) X rhodocheila.

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ハベナリアの三元交雑種。ハベナリアは別種との交配親和性が低いので、交雑種は不稔になることが多い。少しは稔性があって次世代以降ができたとしても、画像のような遺伝子異常と思われる変な花になったりする。

というか、秋に出芽してきて今の時期に咲くとか、そこからして変。

Amitostigma pinguiculum

from China.

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通称、中国大花チドリ。以前から何回もブログに登場しているが、酷暑が続くと落葉休眠してしまう半夏眠性の地生蘭。沖縄だとさすがに気温が高すぎて、普通に栽培するのは難しい。秋から冷蔵庫に入れて低温処理し、冬のうちに外に出して開花させ、暑くなる前に夏眠しても問題ない状態まで生長させておく。

関東以北であれば自然気温でも秋まで葉が残るそうで、生育サイクルを調整しなくても普通に栽培できるようだ。本土だと今頃はまだ芽が動きはじめたばかりだと思う。

画像個体は肥培しすぎて通常は一枚しか出ない葉が二枚になった。温度管理が下手で急激に温度を上げたため花茎が素直に伸びていない。花数も多すぎて山野草的な風情が無い。あまり肥培すると植物体が軟弱になって腐りやすくなり、栽培管理上よろしくない。ツッコミ所が満載である。

 

Satyrium pumilum

seedling.

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サティリウム・プミルム。

南アフリカ南端、ケープ地方の乾燥地域が原産の冬緑性地生蘭。ユニークな草姿だが、この植物の標準的な姿で、ダルマとかチャボとか呼ばれる矮小個体ではない。最近流行している呼び方で言えばビザールプランツ(笑)。花には腐臭があり、ハエ類が花粉媒介する。

ほとんど分球せず、開花すると8割ぐらいの割合で枯れてしまう。実生更新しないと系統維持できないが、近交弱勢がおこりやすく、まとまった数を栽培していないと世代更新を続けるのは難しい。現実的には栽培不能種として扱うのが妥当だろう。

Amitostigma lepidum 'unnamed'

selected seedling.

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オキナワチドリ実生選別個体(未命名)。

画像の株は花蕾が5個ついている成熟株だが、全体に肉厚で肥培しても大型化しない。4倍体ではないかと疑っているが、余裕がなくて検定交配していない。沖縄本島産のオキナワチドリの花は地色が白っぽいので、パッと見た印象では純白紫点花に見える。

分球して殖えた分は他所に進呈しているが、その後に作りこんで殖やしたという話は誰からも聞いていない。

 

Seeds of Habenaria.

Hab. dentata 'Hakuho-Jishi' X self.

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ダイサギソウ「白鳳獅子」系、自家受粉種子。有胚率は比較的良好。

ハベナリア類は一般的に個体寿命が短かく、分球率も低いので系統維持には実生更新が必須。ところが大部分のハベナリアは近交弱勢が激しく、自家受粉だと充実した種子が採れにくい。

しかしダイサギソウ類は例外で、交配しなくても単為生殖で結実する。きちんと温度管理さえしておけば、何もしなくても大量の種子が得られる。こぼれた種子が勝手にそのへんの鉢から発芽してくるので、無菌培養技術などは必要ない。

・・が、本土で育てている人はまともな温度管理をしていないため種子が採れず、親株が事故や病気で倒れてアウト、という場合がほとんどのようだ。

早期開花型の本土系ダイサギソウなら本土でも問題ないらしいが、「問題ない」という事がどれほど凄いか、育て比べた経験が無いと判らないかもしれない。

 

(Hab.medioflexa X Hab. dentata) X self.

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種間交配種だと稔性が著しく下がるため、自家受粉ではほぼ無胚種子になる。果実がしっかり膨らんでいれば交配成功、とか思っておられる方も少なくないようだが、ハベナリアの場合は果実が肥大して大量の種子ができていても全部シイナ(無胚種子)という事も珍しくない。原種ダイサギソウでも栽培管理が駄目だと種子が成熟せず全部シイナになっている。肉眼では種子の良否の識別が難しいので高倍率ルーペで確認する。