ララミディア大陸南部では、ユタ州からも新しいティラノ軍メンバーが誕生しています。9670万~9700万年前の地層から歯と後ろあしの化石が発見されたモロスは、全長2メートル程度、体重80キロとわりと小さな恐竜です。
命名の由来はギリシャ神話のモロス(死や運命を司る神)で、ティラノ軍団の中では二軍に属します。すらっとした後ろあしから、ダチョウ型恐竜のように速く走ることができたのではないかと推測されています。
この恐竜のおもしろい点は、体の小ささと同じ時代に棲んでいた恐竜との力関係にあります。モロスとほぼ同じ時期に、ユタ州にはシアッツというアロサウルス類の恐竜が棲んでいました。これは2013年に発表された恐竜で、全長9メートル、体重が4トン弱(3917キロ)あったと思われます。
ちなみに、他のティラノ軍団の体重は以下の通り。
・ジュラティラント 648キロ
・テラトフォネウス 974キロ
・ダスプレトサウルス 2388キロ
・ゴルゴサウルス 2709キロ
・アルバートサウルス 2934キロ
・ティラノサウルス 6168キロ
また、参考までにティラノ軍団以外の大型の肉食恐竜は次の通り。
・ケラトサウルス 982キロ
・アロサウルス 2396キロ
・サウロファガナクス 3591キロ
・アクロカントサウルス 5250キロ
こうして体重を見比べてみると、モロスがいかに小さかったか、そして同時代に生きていたシアッツがどれほど巨大であったかがおわかりいただけるでしょう。
シアッツが生きていた白亜紀の中頃のララミディア大陸には、さらに大きなアクロカントサウルスも棲んでいました。つまり白亜紀中頃の北米大陸はティラノ軍団の世界ではなく、アロサウルス類の世界だったことは明らかです。
ティラノ軍団はおそらく、アロサウルス類が絶滅に追いやられるまで、陰で息を潜めるように生きていたに違いありません。そしてその後の地球温暖化で海面が上昇し、平地が少なくなったことでアロサウルス類が絶滅。ようやく、自分たちの出番を得たというわけです。
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