LANDMARK 3 L12: Light Pollution (1)

光害


もし人間が月や星の明かりの下で本当にくつろげるとしたら、
真っ暗闇の中で幸せに暮らすことでしょうに。
真夜中の世界は、地球に暮らす、
ものすごい数の夜行性の種に見えるのと同じくらい、
私たち人間にも見えることでしょうに。
(しかし)その代わりに、私たちの目は
太陽の光の中で生活するように適応していて、
人間は昼行性の生き物なのです。
たとえ、私たちが自分たちを哺乳動物だとは考えていないのと同じように、
私たちのほとんどが自分のことを昼行性の存在だとは決して見なしていないとしても、
私たち人間が昼行性の生き物なのは
基本的な進化上の事実です。
しかし、夜に対して私たちが行ってきていることを
説明してくれるたった1つの方法が、
昼行性だという事実です。
夜でも活動的でいられるように、
人間は夜を光で満たすことによって夜を操ってきているのです。


こうした操作(=夜を明るくすること)は、
川をせきとめてダムを造るのと似ています。
この恩恵は「光害」と呼ばれる報いを伴っています。
科学者たちは光害の影響について、
今、研究を始めたばかりです。
光害は、ほとんどが下手な照明の設計の結果です。
設計がまずいと、人工の光を下向きに集めるのではなく、
屋外や上空まで照らしてしまいます。
下手に設計された照明のせいで、夜の暗さはなくなり、
光の強さは大きく変わり、
私たち人間を含むたくさんの生き物が適応してきている
光周期も大きく変わってしまいます。
人間が作り出す光が自然界を照らすところではどこでも、
渡りであれ、生殖や摂食であれ
生活のある面が影響を受けるのです。


人類の歴史のうちのほとんどの期間、「光害」という語句は
意味をまったく持ってはいなかったことでしょう。
1800年頃、当時、世界で最大の都市だったロンドンに向かって
月明かりの夜を歩いている場面を想像してみましょう。
ロンドンには100万人近くが暮らしていましたが、
ロウソクやたいまつやちょうちんしかありませんでした。
ガスで灯された家は、ほんの少ししかありませんでした。
あと7年間は、通りや広場には
公共のガス灯は一本もなかったことでしょう。
ロンドンから数マイル離れた場所に来ると、
ロンドンの町全体が発する、
かすかなうっすらとした明かりを見る可能性が高かったのと同じように、
ロンドンの悪臭が漂ってくる可能性が高かったことでしょう。


今では人類のほとんどは
反射された光のドームの中で生活しています。
照明が多すぎる都市や郊外がまき散らしている光のドームであり、
光があふれる高速道路や工場がまき散らしている光のドームです。
夜間のヨーロッパのほぼ全域は光の星雲です。
米国のほとんどの地域と、日本の全域が光の星雲なのと同じです。
南大西洋では、イカ釣り漁師たちが
とても明るいランプで獲物を集めていますが、
こうしたイカ釣り漁船のたった一つのグループからの輝きだけでも、
宇宙からみると、実際に
ブエノスアイレスやリオデジャネイロより明るく輝いて見えます。


夜は様々なたくさんの種によって共有されていることを忘れて、
私たちは夜を明るくしてきています。
夜行性の哺乳動物の種(の数)は驚くほど(多いの)です。
光は生物にとても強い影響を与えます。
多くの種では光は磁石として作用します。
光の影響はとても強く、科学者たちは次のように語ります
――鳴く鳥や海鳥は、陸上のサーチライトや
  海底油田掘削装置のガスの炎から出る光に引きつけられ、
  数千羽もの鳥が光のまわりを飛びまわって、落っこちてしまいます。
  夜に渡りをしてて、明るく照らし出されている
  背の高い建物に激突する鳥も結構います。
  初めての旅の若い鳥は一番ひどい影響を受けます。