結婚式を爆破しよう! 2
爆発。それは芸術の一種。
一瞬一瞬で移り変わる赤と黒の協奏曲。熱と爆音と人々の悲鳴がよく似合う。
「えっと~じゃあc4爆弾用意しないとな~。あ、パイプ爆弾もいいかも」
「……おい」
「え? 核? も~さすがにあれは冗談だよ。いくらなんでも中国やアメリカまで行くのはめんどくさいし」
「違う! 何故に爆破!? 普通に浮気現場を録画すればいいだけだろ!」
「それじゃつまんない!」
もうダメだ。一度火が突いた琴音は止められない。
「ば、爆破!? ダメです! あのクズはともかく先輩に危害が及ぶなんて……」
「大丈夫! 関係ない人は巻き込まないから! ちょっとマイクやウエディングケーキに小型爆弾仕込む位だから」
「あ、ならいいです」
「よくねえよ!」
山下にも常識が無いようだ。
「ガチで言ってるのか! 普通に警察に捕まるぞ!」
「ばれなきゃ犯罪じゃないんだよ」
「バレるだろうがああああああああ!」
止める。絶対にこいつを止める。さもなくば最悪死人が出る。
「山下君。結婚式っていつか聞いてる?」
「おい! 聞いてるのか!」
「三日後です! えっと、爆破しましょう!」
「山下ァアアア!」
「よし! じゃあ作戦会議! 付いて来て!」
「はい! 師匠!」
呆然とする竜也を他所に、ピューと走っていく二人。
「ってちょっと待てぇぇ!」
慌てて二人を追いかけるのだった。
「結婚式と言っても形だけ。井上先輩の大学の一室で行い、誰でも参加できるパーティーみたいなものなんです」
「そっか~。じゃあ爆弾仕掛け放題だね!」
「はい! 大学のパティシエ同好会の方々がケーキを作るらしいですけど、中に爆弾を仕込むには……」
山下も乗り気だった。
もう放置したい気持ちを抑え、琴音のマンションの前に到着する。
琴音の両親はすでに他界しており、今は兄の
驚くべき事に、宗一氏は25という若さでマンションを所有しているのだ。
「篠崎先輩ってお金持ちなんですね」
「お兄ちゃん、株とFXで稼いでるからね。ニートだけど」
「俺あの人苦手なんだよな……」
どうやら自宅で作戦会議をやるらしく、竜也もなんやかんやで付いて来てしまった。
綺麗なエントランスホームを潜り、何度も足を運んだ部屋に向かう。
「ただいま~。友達連れてきたよ~」
小声でおじゃましますと言い、靴を揃えておじゃまする。
「帰ったか我が妹よ!」
すると奥の部屋からよれよれのシャツを着、髪がボサボサの長身の男が現れた。
「ただいまお兄ちゃん! 彼は山下君! 一緒に結婚式を爆破するの!」
「あ、山下です。こんにちは」
「な、な、爆破……? 結婚式を、リア充の巣窟を爆破するのか!?」
「あ、お久しぶりですお兄さん。ちょっと訳がありまして、もちろん冗談――」
「なにそれおもしろそう! 俺も入れろ!」
「もっちろん! 兄さんにも手伝ってもらうつもりだよ!」
「いよっしゃああああ! リア充共を駆逐してやるぜえええええええ!」
篠崎宗一。25歳。有名な国立大学を主席で卒業するほどの頭を持ちながら、何故か株とFXに目覚め財を築いた変態だ。
「話は分かった」
場所は変わってリビング。琴音が入れた紅茶を飲みながら、作戦会議中だ。
琴音と宗一。この二人が組んだらもうアウト。竜也にできることは、せめて死人が出ないようにブレーキになるだけだ。
「少年。つらかったな。俺には分かる。中学一年のときに真紀先輩、二年に同級生の京子。三年に後輩の安奈。ことごとくキモイと言われた俺には分かる」
「グス……。僕はどうなってもいいんです。けど、先輩の涙だけは見たくない!」
カッコイイこと言ってるが、女性にとって一大イベントの結婚式を爆破したら、それこそガチ泣きするだろとは突っ込まない。
「任せとけ。俺が最高で至高の爆破プランを考えてやる!」
「お兄ちゃんカッコイイ! マジ決まってるぅ!」
「はっはっは! もっと褒めろ妹よ!」
「……一ついいすか」
「おや、竜也君じゃないか。いつから居たんだ?」
「この変態が……本当に爆破するつもりですか? 捕まらないと思ってるんですか!? 誰かに迷惑かけないと本気に思ってるんですか!?」
「落ち着きたまえ。まず警察だが、知り合いに頼めば問題あるまい」
「警察に知り合いいるんすか?」
「役者の知り合いに警察に扮してもらう。通報される前にな。そうすれば誰も呼ばないだろ。もう来てるんだから」
「おもいっきり詐欺じゃないですか!」
「ばれなきゃ犯罪じゃないんだよ」
「この兄妹は……」
ダメだ。無駄に洗礼され、無駄に広い知識と人脈を持つ宗一は昔からこうだ。
「まあ竜也君。少年の話が本当なら、黒木という男は普通に結婚詐欺だ。それを止めるためならば爆破くらいいいだろう」
「よくないですよ!」
と、ここで天啓。じゃあ俺が黒木の浮気現場を押さえれば、結婚式流れるんじゃね?
状況を打破する決定打を得た竜也はすぐに行動に移した。
「山下。君が知っている黒木と井上先輩の事を教えてくれ」
「わ、分かりました」
黒木と井上先輩の住所をメモし――何故山下が知っているのかは触れないでおく――用事があるので失礼しますと家を出る。
――俺が何とかするんだ。さもないとあの変態共が……警察に捕まる!
いい子の竜也は、変態であろうと幼馴染が犯罪者になることを容認しなかった。
黒木は簡単に見つかった。というのも、働いている場所を山下に聞いたからだ。
工事現場に着いた竜也は、適当な作業員にすみませんと声を掛ける。
「すみません。黒木さんって方いらっしゃいますか?」
男は少し待てといい、一人の男を連れてきた。
180センチを超える長身、無駄なく筋肉が付いた肉体。髪を金に染め耳にピアス。第一印象は怖い不良だ。
「ンだテメエ」
ドスの聞いた声で威嚇してくるが、狂人二人を日常的に相手にしている竜也に効果は無い。
「これ、貴方のではないのですか?」
そう言い、ポケットから財布を出す。
山下が昨日嫌がらせで盗んだ財布は、黒木に会う口実にピッタリだった。
「……なんでテメェが持ってんだ?」
「実は、友達が貴方の財布を落とした所を目撃したのですが、怖くて渡せなかったんです。ですので、今日僕が変わりに」
「落ちてたァ?」
「はい、そこの自動販売機の近くらしいです。なのでここで働いているのでは、と。あ、申し訳ありませんが、名前確認のため、中の保険証を見ました」
黒木は訝しげな顔をしたが、中身を確認し、礼も言わずに立ち去ってしまった。
(典型的な不良だな)
とりあえず黒木を正面から見れたことに安堵する。
携帯を取り出すと、GPSの場所を示すマーカーが輝いていた。
浮気現場を押さえるため、財布に宗一が所持している小型GPSを取り付けたのだ。
「追跡して、浮気の現場を録画。それを井上先輩に見せればクリアだ。……ホントに爆破ってなんなんだよ」
とりあえず、黒木の仕事が終わるまでかなり時間があるため、近くのネットカフェに向かった。
「浮気相手と会うなら夜中か? ……しばらくは徹夜かな」
「これは好都合。知り合いにその大学の教授がいてな。事情を話したら協力してくれるようだ」
「さっすがお兄ちゃん! たよりになるぅ!」
琴音と宗一、そして山下は「ドキ! TNTだらけの結婚式作戦!」を練っていた。
「さて、まずは少年。結婚式のプログラムを見せるのだ」
「はい!」
実は黒木が暴力を振った後、結婚式のプログラムを山下に投げ捨てたのだ。ご丁重に「逃げるなよ」とマーカーで書かれている。
「ふうむ。結婚式と披露宴をごちゃまぜにしたような感じか。挨拶、近いのキス。その後はお菓子を食べながら二人のVTR……クソが死ねよリア充が粉々に砕け散れ指輪に小型爆弾仕込んで薬指吹っ飛ばしてやろうかいやブーケにTNT仕込むのも……」
「お兄ちゃ~ん。トリップしないで戻ってきて」
「おっとすまない。まずウエディングケーキにTNTだろ? VTRも二人の醜態を撮ったものにするか……。お菓子も消費機嫌が一年過ぎた物に替えたほうがいいか」
「え、えっと、爆弾ってどう仕掛けるんですか?」
「ふむ。テロリストの知り合いが居てね。そいつに聞いてみよう。爆弾もそいつから買える」
「す、すごいんですね」
「ふふん。人脈には自信があるのだよ」
「そうだ! テロリスト乱入なんてのもおもしろそうじゃない!?」
「一考の余地はあるな。しかし武器はどうするか……」
「さ、さすがにそれはまずいんじゃ」
「大丈夫だよ! お兄ちゃんお金持ちだし!」
「そ、そういう問題では……」
「おお、浮気相手を乱入させてはどうだろう」
「え~。それじゃあすぐに終っちゃうよぉ」
「心配するな。最後の締めにだ。それと先ほど話した大学教授だが、当日は大学に関係ない人々がこないように計らってくれるそうだ。遠慮せずに爆破しよう!」
「え、えっと。テロの目的はどうしましょう?」
「井上という者はお嬢様なんだろう? 金目当てということでいいさ。問題は浮気相手乱入だ。テロからどう結びつけるか……」
「う~ん。やっぱりテロは難しいと思うな。それよりも黒木ってやつにパパ~! って言いながら抱きつく幼女とかは?」
「それより新郎はクズだから飲みのもに下剤を入れるか……。とりあえずその辺は私と少年と、教授で考えよう。琴音はVTR作成時に流す浮気現場を撮ってこい。カメラは自由に持ってけ」
「りょっか~い! じゃあ行って来ます!」
この会話が警察に知れたら、三人とも逮捕は確実だろう。
神様に同姓同名の誰かと間違われ、若くして天寿を全うさせられてしまった主人公。お詫びにとチートし放題の転生を持ちかけられ、嬉々として承諾する主人公だったが、その条//
ありえない嫌疑をかけられ、処刑されようとする炎の神子を務める少女、エルフリーデ。 危機的状況から助けられるように、召喚される。 驚くべきことにそこは若き王子が治//
婚約破棄を突きつけられたエリザベス。 そこに証人として現れたのは・・・? 悪役令嬢を押し付けられたエリザベスを救う為侍女が頑張るコメディーです。 1話目で完//
貴族の令嬢メアリ・アルバートは始業式の最中、この世界が前世でプレイした乙女ゲームであり自分はそのゲームに出てくるキャラクターであることを思い出す。ゲームでのメア//
高校入学の朝起きた時急に自分の今生きている世界が、前世の乙女ゲームと酷似している事に気づいた少年。だが、彼自身はゲームでは名前どころか姿すら描かれていないモブ//
アース・スターノベルにて書籍化されたドラゴンさん。「!」マークをつけて全5巻発売中! ぼっち女子大生の”わたし”はぼっちを克服すべく新歓コンパに行く途中、バナナ//
難攻不落の魔王城――の、正面にぽつんと建つ小さな教会。 そこは魔王討伐の拠点となる最後のセーブポイントだった。 魔物ひしめく過酷な勤務地に赴任してきたのは、最年//
◇◇最新6巻 1月14日発売!◇◇ 勇者パーティは強力な魔神の大群におそわれた。このままでは全滅必至。 パーティーの一人、最強魔導士ラックは、敵を足止めす//
アニエス・レーヴェルジュは美しく、気位の高い伯爵令嬢である。 社交界の麗しの薔薇と呼ばれた彼女は、高嶺の花であった。 一方で、騎士である貧乏貴族のベルナールは//
乙女ゲームの悪役令嬢の妹として生まれ変わったわけだけど、とりあえず流れに身を任せ自由に生きようとする話。
ルティーナ大国の王族に仕えるイグニス・パルウァエはどこにでもいる普通の騎士で、休日は家庭菜園、部屋の掃除、馬の手入れなどと隠居した爺(じじい)のような生活を送っ//
親戚の小学生が年度末テストを持ってきた。これは酷い、酷すぎる……先生たちは何を考えてこんなものを作ってしまったのか……
「モテたかったら、乙女ゲーでもすれば?」と前世の親友に助言してもらったけど、そのアドバイスをもとに借りてプレイしたゲームの隠れキャラに転生するとか思わなかった。//
ようやく結婚だなぁ、と思ったら、婚約者からの婚約破棄宣言。は?浮気相手との間に子供が出来た?舐めてんの? 異世界トリップ女の結婚出来ない話。 ※短編『婚約破//
ルシィ・ブランシェットは思い出した。自分の仕組みを、いかに奇怪な存在であるかを、そして自分が魔法学院に入学しようとしていたことを……。これは、色々と忘れがちな主//
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、だから何でしょう? 簡単に回避しちゃったし、好きに生きますよ私は。 戦闘狂ご令嬢と、ちょい肉食なイケメンの一途な恋。甘々です//
※主婦と生活社PASH!ブックス様より書籍化!6巻目8/25発売です! キアラは伯爵家の養女。王妃の女官にされる予定で引き取られたが、そのために二回り年上の人と//
前世でプレイしていたゲームのキャラに生まれ変わった主人公。そのキャラとは悪役令嬢とともに没落し、晩年を夫婦として一緒に暮らすクルリ・ヘランという男だった。 ゲー//
好きだった乙女ゲームの悪役令嬢……の侍女になった少女は、自分が仕える公爵家の破滅(=倒産)により路頭に迷うのを回避するため、侍従と一緒にお嬢様を教育(?)し直す//
【書籍2巻、8月6日発売】 冒険者に憧れていた少年・ジオ。しかし15歳になった彼が神々から与えられたのは【家庭菜園】という、冒険には役立たない謎の加護だった。仕//
高校生の主人公、八雲楓(やくもかえで)は、獣人やモンスターのいる知らない土地で目を覚ました。 目を覚ます直前の記憶が無く、一緒に持ってきたリュックサックの中に入//
【富士見ファンタジア文庫から書籍版9巻が12月19日に発売予定です!】 【コミカライズ版第3巻が1月27日より発売中です!「月刊コミック電撃大王」誌上、「Com//
地位も名誉も、そして家族さえも失ったエリザ。 残されているのは、まだ幼いリアだけ。 全ては、私のせい。 エリザが、王太子たちを魅了する女生徒を学園から追い出そ//
小学校でいじめにあった。多分。 相手は自分こそがいじめられたと、まわりを味方につけて私を孤立させた。 やたら大人びた私は相手にせず戦線離脱。バカに構う暇があるな//
生まれ変わった家は、縫物をする家系。前世では手芸部だった主人公には天職?かと思いきや、特殊能力にだけ価値観を持つ、最低最悪な生家で飼い殺しの日々だった(過去形)//
この国には刑期がなかった。あるのは罪によって下される一度の罰だけ。 等級制の執行者は通称で拷問士と呼ばれ、その最高位であるリョナ子さんは国家特級拷問士。リョ//
僕はとある闇ギルドでマスターをしている。 ギルドの構成員は僕含めても10人と少ないが、皆僕の娘のような存在で仲は良い……と思う。 闇ギルドということであまり目立//
勇者召喚の魔法陣に自ら巻き込まれに行った少女は、自由気ままな旅に出る。地球でプレイしていた不思議なゲームの『システム』を武器に、自由と女性を愛する少女は欲望の//
公爵令嬢であるユシュニス・キッドソンは夜会で婚約破棄を言い渡される。しかし、彼らの糾弾に言い返して去り際に「婚約破棄、しませんから」と言った。 特に婚約者に執着//
公爵家の令嬢として生まれたクリスティーナは、ある日屋敷に引き取られ養子になった妹と対面することで前世の知識を得る。その知識により、この世界が妹のミシュリーをヒ//
ファンタジーな世界に転生し、チートも貰った。しかし、魔王の部下という中途半端な位置に転生した瀬川陽樹。ある日、勇者パーティーが魔王城に攻めて来たのだが……。 //
「もう、逃がさない。俺のマリー」 12歳の時に、冴え渡る美貌を持つ騎士に(無理やり)引き取られた私、マリーツィア。 やたらと執着&束縛して来るあの人には、もう耐//
男女の仲を破滅させ浮名を流し、兄と妹の結婚話の障害物として立ちはだかる悪女、シャナリーゼ・ミラ・ジロンド伯爵令嬢。すっかり気に入った悪女の役を、本当の自分をさ//
悪役令嬢だと気付いたので、全力で回避することにしました。お気になさらずヒロイン様。婚約者は熨し付けて差し上げます。だからどうか私に関係のないところで幸せになって//
騎士団付属のカフェテリアでくいっぱぐれた騎士団長と、彼女を迎える料理長の物語。 ※双葉社Mノベルスから発売です。
家族を魔物に喰い殺された。 それなのに私はその魔物に三食せっせと世話を焼かれて快適に過ごしている。モコモコに包まれ幸せに眠る私は考えた。このままではいけない、と//