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私が妹だ! 作者:結城 慎

電波編

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プロローグ

この章には

電波系な表現

猟奇的な表現が含まれます。


そのような表現が苦手な方は、この章は飛ばしてください

「千太郎君知ってる?こんな時期に転校生が来るらしいよ」


 朝、HR前に隣の席に座る山村さんが話しかけてきた。

 山村 咲。渾名は『ムラサキ』

 小学校から常に同じクラスになっている、俺の数少ない友人の一人だ。

 スポーティーな短い髪型に明朗快活な性格、やや胸が控えめで、スレンダーな体型というボーイッシュを絵に描いたようなキャラ。実は一部の男女から結構な人気を獲得している。

 そんな彼女が話しかけてきた内容を裏付けるかのように、確かに朝から教室はいつもよりもザワザワしていた。特に男子が。

 しかし男子共、年明けのこんな時期の転校生なんて厄介事のフラグ以外に考えられん。お前達の考えている様な甘い展開の可能性は限りなく低いと思うぞ。

 最近は(自称)百合香のせいで毎日の様に厄介事に巻き込まれてるから、俺は厄介事はもうお腹イッパイなんだよ。

 厄介事を運んで来られるくらいなら――――――


「転校生なんて別にいらないんだよ」

「へぇー、千太郎君はドライだねぇ。

 ほら、他の男子はみんなソワソワしてるのに」

「男子だけがソワソワしてるってのは、転校生は女子確定なのか?」

「うん、そうみたい。

 まあ、男子だったとしても私は別に興味はないんだけどね」

「ふ〜ん」


 山村さんは、俺の受け応えがどうも気に入らなかったみたいで、若干ムッとしていたが、俺は気にせずHRを待つ。

 やがて担任が、一人の女子生徒を連れて入ってきた。



 我が校指定のベージュの制服に身を包み、まるでマントを羽織るように(すね)まで伸びた黒髪にはいくつものリボンで飾られ、腕と腰にはなぜかぬいぐるみが抱きついている。少し控えめな身長と綺麗に整った顔のパーツ。その容貌、服装、装飾から可愛い系の美少女なのだろうが、クラスの男子は誰一人として歓声を上げるものはいなかった。

 なぜなら、彼女のまとう雰囲気が……

 担任に促されるまま自己紹介を始める彼女。

 その瞬間、クラスの男子は自らの妄想がいかに甘いものだったか思い知った。


「ふふふふふ、初めまして。私、古賀 由亜(こが ゆあ)です。

 お姉さまを捜してはるか遠くからココへやってきました。

 お姉さまはこの学校にいるのは調べがついています。是非みなさん捜すのに協、りょ、く――――!!」


 怪しげな笑みでもじもじしながら、自己紹介とも『お姉さま』捜索の協力依頼ともつかないものをしていた転入生が、視線をこれからなるクラスメイトに泳がせた瞬間、その動きを止めた。


 否!


 むしろプルプル震えだした。


「お、お、お、お、おぉぉぉぉぉぉ!」  


 さらに奇声を上げだす。


「捜しました捜しました捜しました捜しました捜しました捜しました捜しました捜しました捜しました捜しました捜しました捜しました捜しました捜しました捜しました捜しました

 お姉さま!!

 会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった愛たかった会いたかった会いたかった会いたかった逢いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった遭いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかった会いたかったあぁぁぁあはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」


 なんとも奇遇な。『お姉さま』とやらがこのクラスにいたのだろう。

 プルプル震えた後にくねくねと体を悶えさせながら想いを連呼し、大笑いをする転校生。

 正直言って気持ち悪い。本来注意すべき担任も、彼女の隣でドン引きで表情を引き攣らせながら固まってるし。

 ホント、誰か止めろよ。というか、誰だか知らんがその『お姉さま』とやら、止めてくれ。


「はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは。

 お姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉、さ――――ま――――――!?」


 おそらくクラス全員の総意だろう俺の願いが天に通じたのか、急に転校生はそのクネクネ運動をピタリと止める。その顔面に張り付いていた満面のというより怪奇な笑顔も固まり、いや凍りつき、そして徐々に表情が青くなっていく。同時にガタガタと震えだした彼女は、自分の体を抱きしめ、今度は泣きそうな顔で懇願し始めた。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい、お姉さま。

 許してください許してください許してください許してください許してください許してください許してください許してください許してください許してください許してください許してください許してください。

 調子に乗っていました。私が調子に乗っていました。お姉さまの平穏を壊そうなんて思っていません。

 だから、だからだからだからだからだから、私を見捨てないでください!

 お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします!!

 え?

 本当ですか!?

 ありがとうございます、お姉さま!

 あはははははははははははははははははははははははは。

 ということで

 皆さん、よろしくお願いします。

 今日からクラスの一員となります古賀 由亜です」


 唖然――――――


 突然豹変しボロボロ大粒の涙を流しながら謝り懇願していた彼女は、急に再び態度を変え、今度は爽やかに笑った後、クラス全体に向かいフレンドリーに再び挨拶をした。

 って言うか、聞こえなかったが誰か何か言ったのか?

 いや、むしろ情緒不安定な上に電波系の子なのか?



 そして、今日、このクラスに一人のクラスメイトが加わった。

 たった一人でクラスメイト全員をドン引きさせるくらい強力な転入生が。

結局、連載となる運びとなりました。


みなさまよろしくお願いします。

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